あり得るかも知れない物語の一幕 その2

「ルーさんルーさん、メリーがお香をくれました」

「お香ですか?」

「良く眠れるように調整して作ったらしいのですが町の人は快眠過ぎてわからなかったそうです。なので試しに使ってみて欲しいと」

「なるほど。では聖女様が使ってください。一つしか無いようですし」

「そ、それが一つで体の大きさなどで効果の違いを調べたいそうで同じ部屋で寝て欲しいと……」

真っ赤になるマリーに気づかないルーさん。

「メリーさんにはお世話になっていますからね、男女が同じ部屋で寝るのは些か問題があるとは思いますが一日我慢してもらえますか?」

「私は毎日でもかまわないのにと言うか嬉しいのに……」

マリーの願望は小声であったのとルーさんがお香の使い方をまとめた紙を開くガサガサっという音に遮られてルーさんには届きませんでした。

「寝る前に火をつけて風通しの良い場所に置く。密閉されると過剰摂取になるからご注意を、だそうです。今日は風がほとんど無いですし窓際に置いてドアを少し開けておきましょうか」

「むぅ、ルーさんは恥ずかしかったりしないのですか?寝顔を見られたりするのかもしれないのに」

「聖女様の寝顔は起こすときによく見ますし寝顔を見られるのも別にですかね?聖女様が早起きをして起こしに来て頂けたら嬉しいのですがねぇ」

さらっと皮肉を言うルーさん。しかし……

「じゃあ頑張って早起きしてルーさんを起こしてみせます!」

マリーは気づかない。そしてルーさんも皮肉になってることに気づかない。誰かーツッコミ役を連れてきてー。

「期待して待ってますよ」


時間は飛んで就寝前。お風呂から上がりワンピースタイプの寝間着を着たマリーがルーさんに髪を乾かしてもらい歯をみがいた後。

「ではここに置きますね」

窓の前にお香を置き、マリーに触らないようにと注意する。少しだけ甘い匂いが窓から入る風にのり、部屋をまわって通り抜けて行く。

「布団を床に敷くのは違和感がありますね」

流石にベッドを運ぶわけにもいかず、ルーさんはマリーの部屋に布団だけ持ってきて床に敷きました。

「家の中でも土足の文化ですからね。ですが外用と家用に靴を分けていますしきちんと掃除もしてますからね。栞さんから聞いたことがあるのですが日ノ本、という国では布団は床に直に敷くものだそうです」

「たまに出てくる栞さんとはいったい何者なんですか?」

「図書館の主ですよ。ささ、もう寝ますよ」

「はーい。おやすみなさいルーさん」

「おやすみなさい聖女様」

灯りを消し、二人は布団に入る。

ルーさんは寝付きが良く直ぐに規則正しい寝息がマリーに聞こえてくる。

「少しは緊張してくれてもいいと思うんだけど」

好きな人が直ぐ近くで寝ていることに緊張し、むしろ寝れないとメリーに文句を言いたくなるマリー。しばらくルーさんの背中を睨んでいると、

「ぅん?なんか、体が熱いような……」

良く眠れるお香、と嘘をついた媚薬(お香バージョン)の効果が現れてきたのか全身が少しずつ熱くなってくる。

下腹部から、全身に熱が回り少し息が荒くなる。

「んっ、はぁ……」

マリーは特に熱い下腹部に手を当て、無意識にその手を自分の秘部へと持っていく。

「ぅあっ、ん!」

己の秘部に指先が当たった瞬間、背中から頭まで通り抜けるような感覚に襲われた。媚薬で体が過敏になり、マリーの知らない感覚を押し広げていく。

「なに、今の……」

さっきの感覚で頭がぼーっとしながら、ゆっくりと同じ場所に手を持っていく。

「んっ、くぅ……あっ!」

胸をなぞり、お腹を通って、おそるおそると秘部に触れた。その瞬間しびれるような、しかし甘い刺激にマリーの頭は支配されていく。

(もっと、もっと……)

一度快感を覚えてしまうとマリーはルーさんが居るのにも関わらず、自分の秘部を触ることに夢中になってしまう。上から下へ、下から上へと割れ目をなぞり、その度に背筋を通り抜ける甘い刺激に体を震わせ押し殺した声を少しずつ甘い、艶かしいものへと変化させる。

「っん!ひぅっ!」

秘部をなぞっていた指に力が入っていたのと、自分の中から出てくる大量の液に指を滑らせ指先が膣に入ってしまう。なぞっていただけの刺激よりも遥かに上の快楽を唐突に与えられ、体を仰け反らせる。

「あ、あぁぁ!」

仰け反らせた際に指が付け根まで入ってしまい媚薬の効果と慣れない快楽により下りてきていた子宮の入口に指先が当たる。その瞬間、今までで一番強い刺激がマリーの背中から頭まで駆け巡り目の前を、頭を真っ白に染め上げる。

「ふっ、はぁっ……」

頭を真っ白にするほどの快楽から回復し、まだ自分の指が中に入っていることに気づき、ゆっくりと指を中から出していく。

「んっ、ふぅ……」

出した瞬間、くちゅっという水音が聞こえた。中から出した指を目の前まで持ち上げ、自分の快楽の証が月明かりに照らされきらきらと光る。

「んっ、くちゅっ……」

訳もわからずその指を自分の口に含み舌で液を絡めとり、口から出す。

唇についた液と指に残る唾液と液が糸をつくり、口の端から顎へと垂れていく。

それでも、それでも媚薬と快楽により発情しきったマリーの体は満足せずにもっと、もっとと快楽を要求する。

そんな働かない頭で部屋を見渡し、快楽により忘れていたルーさんを見つける。

ベッドから降り、仰向けに姿勢良く寝ているルーさんの上にまたぐように座り、ルーさんの首筋を甘く噛む。

「うん?聖女様?」

体の上に重みがかかり、首筋を噛まれたことにより流石のルーさんも目をさます。

マリーは声が聞こえた瞬間ゆっくりと体を起こす。

ルーさんは寝ぼけ眼のまま上半身を起こしてマリーの顔を見てしまう。

度重なる快楽により涙を流していた眼は潤み涙目になり、口からは耐えきれなかった涎が垂れ、そして好きな相手にこれから求めることを無意識のうちに理解し、頬を赤く染めているマリーの顔を。

そんな、男を誘う女の顔をしている、自分の大切な女性から、


「ルーさん、私を……、助けてください」


ぷつん、とどこかで糸の切れる音をルーさんは聴いた。

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