第20話 【重要】サービス提供終了のお知らせ。

社内を走っている私達。

縛戸さん、本当に何者なんだろう・・・。

目を離すとはぐれそうな速さ。

それなりに体力をつけてあるのに、優位にたてない。

数分で3階まで帰還してしまった。


「逢乱!マルウェアどうなった?」

「まだ、削除はしてないから安心しろ。

 他所の会社のファイルを勝手に消すなんて、マルウェアと変わらん。」

「ですよねー。よかった。」


流石に少し疲れた様子だった。

私はまだ大丈夫だけど。


「で、消すの?」

「それを相談したいと思っていたところだ。

 今回の契約は、調査対応がメイン。」


マルウェアを消す話になり、寒江さんがこっちを向いた。


「調査結果は、こちらから提出はするが、

 ファイルの消去は、すべてそちらに任せたい。」


任せる・・・。


「えと、私達で削除するってことですか?」

「本当に削除していいか、俺達には判断できない。

 独自に作成されたプログラムも何個か混じっている。

 つまり、勝手に消してしまうと、業務に影響が出る可能性があるということ。

 削除するかどうかの最終判断は、墨名さん。

 あなたが判断してください。」


判断。私の苦手分野・・・。


いつも姉様たちにくっついて生きているから、

自分で判断するのは苦手。


あとで姉様に相談しよう。


「では、リストを見せてください。

 こちらで判断しますので・・・。」

「わかりました。少々お待ちを。」


寒江さんは、困った素振りも見せないで、作業を進める。


この人は、ほとんどの作業を機械に任せている。

きっと人間を信用していない。

こんな人に信頼されている縛戸さんは、一体・・・。


とても、気になる。


仕事以外のことに興味を持ったのは久しぶり。

自分の時間は、仕事と姉様たちに捧げてきた。

それだけで幸せだった。

個人的に時間を使いたいなんて・・・。


「こちらです。」


早い。

仕事慣れをしている。


このリストの中には、私達が仕込んだマルウェアもある。

なかったことにしないと・・・。


「・・・たくさんですね。」

「サーバーに接続している端末をすべて洗い出した結果です。」


そして、私達と同じく、マルウェアを仕込んだ人がたくさん。

この中から、代わりの生贄を選ぶ。

可愛そうだけど仕方がない。

すべては、姉様たちのために・・・。


「ねぇ。なんであんたが判断しようとしてるのよ。

 あんた普通の社員でしょ?」


・・・うるさいなぁ。いちいち。


こいつの名前もリストにある。


「それは、この調査に関して、すべての決定を、

 社長から任されているからだよぉ?

 処分すべきかどうか、墨名さんが決めるの。」

「えっ!?」

「・・・何か問題でもぉ?」


そう。私が決めていいんだ。


調度いい。

すべての罪を、この人に・・・。


「わかりました。

 あとは私が処理しておきます。」

「よろしく頼む。」


もう、この人は、いらない。

ネットワークの管理は、しばらくの間、私がやろう。


さよなら、万里先輩。





――夕方、社長が帰ってきた。


「やぁ、火恋。

 タスクはコンプリートしたかな?」

「はい。ここに・・・。」

「どれどれ・・・。」


報告書を確認する社長。

火恋姉様は、何処を気に入ったんだろうか。


火恋姉様がこの会社に入って、舞姉様もそれに従った。

私もついていった。


私達は三姉妹。

朝、昼、夜。交代で仕事をしている。


「うん。エクセレント。

 よく出来ている。」

「ありがとうございます。」

「君の名前がないこと以外は。」


・・・バレてる?


「よかったよ。

 君がいなくなったら、このカンパニーはクローズドだろう。」


そっちか。


「あの縛戸という春子のフレンド。

 本人は感情豊かだが、人へのエモーションがロストしている。

 ベストフレンドであってもキルできるタイプ。

 少しだけ心配だったが・・・。

 何もなかったようだね。」

「はい。」


いろいろあったけど。黙っておこう。


「しかし、世の中は進歩を続けている。オールウェイズに。

 僕自身もミスしているかもしれない。

 しかしながら、それは誰もが同じ。

 そんなシチュエーションで、人はどうするか。

 チューニング、オア、ギブアップ。」


私は、ついていく。


それしか選択肢がない。いつだって。


「できないからとギブアップするのは、褒められることではない。

 しかしながら、僕は、ギブアップした人をあえてエンプロイした。

 それはなぜか。

 いずれ、対立したときに、負けることがないからさ。」


こういうとこ、嫌い。


「ここで働く社員の大部分は、セキュリティを知らない。

 その結果がこれだ。

 知らないすなわち、クライム、アンド、ギルト。

 ゆえにジャッジメントできる。

 ベストエフォートの結果なら大目にみるが、

 これらはすべてコンプライアンス違反。

 ペナルティを与えよう。」


セキュリティが緩いのは、あえてそうしている。

緩ければ、悪用しようとするのは、人間の性。

社員の殆どは、違反し、罪を犯す。


自らを悪だと理解する人は、罰則を素直に受け入れる。

この会社では、何千人もの社員が、自ら犯した罪を償うため、

重い罰則を受け入れてきている。

財産を捧げ続けている。


そう、カモられている。


知識を持とうとしなかったために。

向上心がなかったために。


情報弱者は、虐げられる運命。

新しい規定、法律は、次々に生まれている。

私達を守るためではなく、虐げるために。


ついていかなければならない。

私はついていく。

これからもずっと。






ご愛読いただいた本シリーズですが、

誠に勝手ながら、更新を終了させていただくことになりました。


今後の展開を楽しみにしていた皆様には、

多大なご迷惑をおかけしますこと、深くお詫び申し上げます。


誠にありがとうございました。心より感謝を申し上げます。


更新終了後の作品につきましては、機会がありましたら、

その後のお話を発信していきたい所存でございます。


ご縁が在りましたら、またどこかでお会いしましょう。

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