それぞれの想い
「ユウカ、仕事終わった? じゃあ帰ろうか」
この社会の現実に触れるにはまだ少々早かったユウカは、特に深いことを気にするでもなく迎えに来たアーシェスに伴われてアパートへの帰路につく。
するとアパートの前で、マニとばったり出くわした。
「あら、ユウカちゃん、お帰り。もしかしてお仕事に行ってたの?」
作業服に包まれた、まるで肉の壁のごときムッキムキの筋肉質なその姿とは全く結びつかない女性らしい声と口調と仕草でそう聞かれて、ユウカは、
「は、はい…!」
と戸惑いながら返事をするしかできない。
「お疲れ様~♡」
マニに手を振りながら見送られつつ階段をのぼり、二階の自分の部屋へと戻ったユウカは、
「ふう…」
と、つい溜息をもらしていた。
「お疲れ様。よく頑張ったね」
アーシェスにそう声を掛けられて、ユウカは思わず背筋を伸ばした。そんな彼女を見て、アーシェスは、
「もう自分の部屋なんだから、そんな緊張しなくていいのよ」
とクスクスと笑った。ユウカもつられて、
「エヘヘ」
と苦笑いした。
それからテーブルを挟んで座って、お給金の入った封筒をその上に置いてユウカは言う。
「お金は少しずつ返しますから」
アーシェスに買ってもらった日用品の数々の代金のことだった。だがそんな彼女に対してアーシェスはきっぱりと言った。
「ダメよ。これはここのルールなの。初めて来た人に対しては自分にできることをするっていうのがね。
私はお金に余裕があるからそうしただけ。それ以外に今こうしてあなたと一緒にいるのは、それは私がエルダーだから。これは私の仕事なの。これで私はお給金をもらってるの。なにも遠慮することはないんだよ」
「……あ…」
自分が余計なことを言ってしまったと思って、ユウカは、
「ごめんなさい」
としょげかえってしまった。それを見たアーシェスはまたふわっと包み込むような笑顔を見せた。
「いいよ。ゆっくりとここに慣れていったらいいから。誰もそれを強要しないし、急がせもしない。もしそんな人がいても気にしなくていいわ。それはその人がせっかちな性分っていうだけだから。私たちには時間があるの。何も急ぐ必要はないんだよ」
『そうか……時間はあるんだもんね……』
そう、今のユウカには、無限にも等しい時間がある。地球に暮らしていた頃には多くても精々百年程度だった彼女の時間は、もうまったく使いきれないものになってしまっているのだ。とは言え、それを思い知らされるのは、もっとずっと後になるだろう。千年か万年か、彼女が生きることに飽きるまでいくらでも使えばいい。
アーシェスは二百万年生きた。それを目指したって誰もケチをつけたりはしないのだから。
『初めて仕事して、初めてお給料もらった……当たり前のことかもしれないけど、なんかすごいことしたみたいな気持ち……』
生まれて初めて仕事をして、生まれて初めてのお給金をもらって、ユウカはほんの少しだけ自分が大きくなったような感覚を覚えていた。
「これはユウカが自分の力で稼いだお金だよ。自分のために使ったらいい」
「はい……!」
アーシェスに言われて、ユウカはお金が入った封筒を再び手に取った。
『何に使えばいいのかな……こういう時はお礼とかするのかなって思ったけど、アーシェスさんは要らないって言うし……』
と、少し戸惑ってしまう。
世間ではこういう時の美談として両親にお礼の品とか考えるのだろうが、今の彼女にその両親はいない。アーシェスにお返ししようとしたらそれは必要ないと言われた。他の住人達へのお返しも必要ないということだった。彼女らは彼女らで、ここに来た当時に誰かから同じようにしてもらったのだ。彼女らの方こそ、ユウカをもてなすことでその恩を返した形になるのだから。だからユウカも、次に新しい誰かが来た時にそれを返せばいいのである。
「お腹減ったね。そうだ。もしよかったら、そのお金で何か食べに行こうか?」
「あ、そうですね!」
アーシェスの提案に、ユウカは目を輝かせた。
『自分が稼いだお金でご飯……! なんだかドキドキする……!』
実に格好の使い道が見付かった気がした。そう、お金とは本来、自らが生活する為に使うものだ。その当たり前のことを彼女はまだ教わってなかったのだった。
「あ、メジェレナ、おかえり」
二人でアパートを出ようとした時、仕事から帰ってきたメジェレナとばったり会って、アーシェスが声を掛けた。
「た、ただいま」
少しはにかんだ感じでメジェレナが応える。その様子に、ユウカも、
「こんばんは」
と自然に声が出た。
すると、ユウカの顔を見たメジェレナがますます照れくさそうに視線を泳がせた。
「あ…うん。こんばんは…」
褐色の肌とすでに日も暮れた暗さのせいで分かりにくいが、どうやら顔が赤くなっているようだ。
『あ…ふ~ん、なるほど……』
アーシェスはそんなメジェレナの様子に気付きながらも敢えて触れず、思い付いたように言った。
「これからユウカと夕食に行くんだけど、良かったらメジェレナも行かない? あなたの分は私が出すからさ」
その提案に、メジェレナは戸惑いながらも、
「う、うん、分かった」
と応じた。
そのやり取りを見てユウカは、
『可愛い
と思った。
見た目は、褐色の肌でピンクの髪を逆立てた、爬虫類を思わせる縦長の瞳孔を持つ金色の瞳がややきつい印象を与える外見だったが、その中身はすごくあどけない感じの大人しい<おんなのこ>だというのがよく分かった。だから思わず微笑んでしまってた。
「……!」
そんなユウカを見たメジェレナが、さらに顔を赤くするのにアーシェスは気付いて、クスっという感じで小さく笑った。
『か~わい…♡』
そして三人で、近所の食堂へと向かう。
アーシェスに案内されて辿り着いたそこは、いかにもドラマとかで出てきそうなちょっと懐かしい感じのする食堂だった。味はそこそこだが手頃な値段でそれこそ何でもありな、メニューなんてあってないようなものって感じの店だろうか。
「こんばんは~」
扉を開けながら気安い感じでアーシェスが声を掛ける。すると、割烹着っぽい服を着た、金髪を頭の両側でまとめた髪をさらに胸の前で結んだ少々肉感的な若い女性が振り返りながら、
「あ、いらっしゃい、アーシェス。今日はメジェレナも一緒?」
と明るいにこやかな感じで応じた。その直後、二人の後ろに立っているユウカに気付いて、
「あれ? ひょっとして新しい子?」
とも訊いてきた。
「うん、イシワキユウカちゃん。よろしくね」
アーシェスに紹介されて、ユウカがやや上目遣いな感じでお辞儀をした。
「そっか、じゃあ、サービスしなきゃね」
そう言いながら店員らしき女性は三人を席に案内してくれた。彼女がお冷を用意してる間に席に着き、アーシェスが言った。
「彼女はここの女将さんで、ニレアラフタス・アフラクラン。で、奥の厨房にいるのが旦那さんで店主のネルアーキ・ヒローディオ・アフラクラン。二人ももうここで三百年ほどお店をやってるんだよ」
言われて厨房の方を見ると、マニと似た感じのがっしりとした筋肉質な体が厨房用の白衣の上からでも分かる、いかにも『ガチムチ』な感じの男性が、こちらに愛想をふりまくでもなく作業に集中しているのが見えた。
「ごめんね~、うちのヤツ、愛想悪くて」
お冷を出しながらニレアラフタスが苦笑いを浮かべ、ネルアーキに向かって、
「ほら、新しいお客様なんだからちゃんとご挨拶して、いつも言ってるでしょ!」
と、子供に言い聞かせるように声を掛けた。それを受けてネルアーキも顔を上げたものの、
「よろしく…」
という感じでやはり愛想もへったくれもない呟きと共に小さく頭を下げただけだった。その様子にニレアラフタスが、
「あんた、ホントにいつになったらその脳筋ぶりが治るの!? うちは客商売なんだって自覚してよ、もう!」
などとへそを曲げるというのがこの店の定番のやり取りだった。だから他の客も慣れたもので、
「ラフタスちゃん、アーキにそんなの要求したってムダムダ。こいつはこういう奴なんだから」
「そうそう、ラフタスだってそんなアーキにメロメロなんだもんな。だから子供だって十三人もできたんだろ」
とヤジを飛ばし、それに対して、ニレアラフタスが、
「ちょっとそこウルサイよ、この酔っぱらい共が!!」
と返すのもまた、日常なのであった。
「あいよ、これがうち、アイアンブルーム亭の一番人気、回鍋肉だ!」
そう言ってニレアラフタスがユウカたちのテーブルに置いたのは、大皿に山と積まれた回鍋肉だった。
『え…!? マジ……!?』
見た瞬間、ユウカはあんぐりと口を開けてしまった。
多い。多すぎる…! 少女二人と女性一人で食べるには明らかに多すぎという量だ。マニ辺りなら食べ切りそうかなとも思えなくもないが。
「食べ切れなかったらお持ち帰りもOKだよ。タッパーは別料金だけどね」
『あ…なるほど。それはそうだよね…』
それならまあ合理的ではあると言えるだろうか。
「い、いただきます」
先に「いただきます」と食べ始めたアーシェスとメジェレナに続き、
『こんなの見たことないよ……!』
と呆気にとられながらも、白ご飯を片手に回鍋肉を小皿に取り、ユウカも食べ始めた。
「あ、美味しい」
一口頬張ると、いかにもご飯が進みそうな甘辛いしっかりした味付けが口の中に広がり、食欲がそそられた。
『おなかすいてたからメッチャご飯が進む~っ!』
実はけっこう空腹だったこともあり、彼女は夢中になってそれを食べた。
「お、お嬢ちゃん、いい食べっぷりだねえ! こりゃあ元気な赤ちゃんを産みそうだ!」
ニッカボッカを身に着けた、いかにも昔のドラマ辺りに出てきそうな仕事帰りの大工といった風情の酔客が、嬉しそうに大声で言った。
とは言えそれは明らかにセクハラ発言でもある。
『赤ちゃ……!?』
ユウカは顔を真っ赤にしてしまい、俯いて箸が止まってしまった。それを見たニレアラフタスが、
「くぉら! ゲンザー! 女の子からかうんじゃないっていつも言ってるだろ! しまいに叩き出すよ!!」
角でも生やしそうなニレアラフタスの剣幕に、ゲンザーと呼ばれた酔客の男は頭を掻きながら、
「いやあ、ラフタスに怒られちまったよ、失敬失敬」
とさほど悪びれた感じもしないながらもユウカに向かって頭を下げた。
『あはは……』
苦笑いで応じながら、ユウカは思った。
『本当…こんな、ドラマみたいな世界があるなんて知らなかった……私には縁の無いものだって思ってた……
なるべく他人と関わらないようにして社会の片隅でひっそりと息をひそめて生きていくんだろうなって思ってたし……』
それがこんな、やけに人間関係が濃密な世界に突然放り出されて、なのにそれが思ったほど苦痛じゃなかった。気恥ずかしくて自分からは積極的に話しかけるのは無理だけど、話しかけられるのはそんなに嫌じゃないと感じていた。もといた世界では決してなかったことだった。
それはここの人間達が、彼女を受け入れてくれているのが分かるからだろう。ここの人間達は、無闇に他者を排除し攻撃する必要がないのだ。ただそこにいるものとして、同じ世界に生きるものとして、素直に受け止めているだけなのだ。
山盛りの回鍋肉を、アーシェスやメジェレナと共に食べながら、
『私……なんかやっていけそうかな……』
ユウカは少しずつこの世界に馴染み始めている自分を感じずにはいられなかった。
ここでやっていけそうな気がしたおかげもあってか思った以上には食べられたが、それでも結局は残ってしまう。
「ふう~。もう無理~」
「いや~、食べた食べた」
と、アーシェスとメジェレナのお腹もすごいことになっている。
三人ともこれ以上は食べられそうにない。
『こんなに食べたのなんて、生まれて初めてかも……』
ユウカ自身、そんな風に思ってしまった。
というのも、あまり食べようとすると食費がかさむことを嫌った両親に「まだ食うのかよ!?」と怒られるので、とりあえず出された分で満足するクセがついていたのだ。が、今回は出された量が違ってた。
「じゃ、残りは持って帰って明日にでも食べればいいよ」
「はい」
アーシェスに言われて、ユウカは頷いた。
「よっしゃ、じゃあタッパーに入れてあげるよ。本来なら一個百ダール(=約百円)だけど、今日はうちのおごりだ。持ってきな」
ニレアラフタスが満面の笑みを浮かべて、残った回鍋肉をタッパーに詰めてくれていた。するとユウカが、
「え…と……」
と、何かを言いたげな顔でニレアラフタスを見る。それに気付いたアーシェスが告げた。
「ラフタス、今日はユウカが初めてのお給金で初めて自分でお金を出して食べるために来たの。そういうわけだからさ」
そのアーシェスの言葉に、ニレアラフタスが困ったような顔をして言った。
「え~? それじゃルール違反じゃん」
そう、ここでは来たばかりの人間には自分のできる範囲で歓待するというのが暗黙のルールとして存在する。それは他ならぬアーシェスが告げたものだ。
とは言え決して義務ではないしそうしなかったからと言って何か罰則がある訳でもないのだが、性分としてニレアラフタスにはいささか承服しがたい提案だった。
が、初めての給金で初めての食事というのも確かに特別感のあるものだというのも理解できなくはない。そこでニレアラフタスは、
「う~ん、そうだな。じゃあ回鍋肉のお代はいただくとして、タッパー代だけうちのおごりってことでどう?」
と、ユウカに持ち掛けた。ユウカも思わず、
「ありがとうございます…!」
と頭を下げた。
そして結局、回鍋肉の代金五百ダール(=約五百円)を払い、「ごちそうさま」と再び頭を下げて店を出た。
「次こそおごらせてほしいからさ、また来てよ」
店の前まで出て、ニレアラフタスが人懐っこい笑顔を浮かべながら手を振ってくれた。
ユウカはそれに対して何度も頭を下げながら、アーシェスの後について歩く。角を曲がったユウカたちの姿が見えなくなると、ニレアラフタスは相貌を崩して、
「また随分といい子がきたもんだね…」
と嬉しそうに呟いて、店に戻っていった。そしてユウカも、
『ラフタスさんとアーキさんか……なんだかいい感じの御夫婦だったな』
と、明るくて元気なニレアラフタスと、寡黙だが真面目で職人っぽいネルアーキというその組み合わせがいかにもながらやはり気持ちいい感じのその姿に、胸が温かくなるのを覚えた。
「ごちそうさま、アーシェス」
アイアンブルーム亭を出てしばらく歩いたところで、メジェレナがアーシェスにそう言った。回鍋肉の代金五百ダールをアーシェスに出してもらったからである。三人で計千五百ダールが、先程の回鍋肉の値段だった。ちなみにライスは回鍋肉についてくる。おかわり自由。実にリーズナブルと言えた。
食べ切れずにタッパーに入れてもらった残りを持ち、ユウカも、お腹だけでなくあの気持ちいい空間に胸までいっぱいになった気がした。
『私、ホントはああいうノリ、苦手だった筈なのにな。なんでだろ。不思議と平気だった…』
本来ならああいうのは苦手だったはずなのだが、ここではなぜか苦にならない。
『ここだからなのかな……』
そんなことを考えていたユウカにアーシェスが言う。
「ラフタスとアーキもすごく辛いことがあってここに来たんだけどさ。今じゃ見ての通り幸せいっぱいなの。
ここでは、自分の気持ちの持ちようで幸せになれるんだ。もちろん辛いことだってあるよ。だけどそれ以上に幸せになれるの。ユウカも幸せになったらいいよ」
今までにも、そういうことを言う人間はたくさん見てきた。テレビの向こうにはそれこそいくらでもいた。だけど、
『ドラマとかアニメの中でそんな風に言ってるのを見るの。苦手だったな……』
と思う。
そう、ユウカにとってそんな言葉は、いつだって薄っぺらで、たまたま上手くいっただけの人間の綺麗事だと思っていたのだ。
なにしろ、自分の周りには、両親を始めとして他人を傷付けるのが当たり前だと思ってるような人間が無数にいて、少しだけそうじゃないかも知れないと思える人間なんて部活の中にしかいなかったからだ。自分は一生、他人の害意に怯えて小さく身を縮めて生きるしかないんだと思っていた。
『なのに、ここは意地悪な人の方が少ない気がする。どうしてか分からないけど……』
そんな風に感じるほどに、ここでは逆だった。害意を持っていそうな人の方が少なく感じられた。そしてまた、ここでなら生きていけるかもっていう気になれてしまう。
そんな風に感じているユウカを、アーシェスは穏やかに微笑みながら見ていた。
『うん、順調みたいだね』
それこそが彼女の喜びであり、エルダーとしての役目だったからだ。彼女もまた、ユウカによって救われていたのである。
アーシェスだけではない。
『よかった…この子、ちゃんとここに馴染めそう…』
メジェレナもそんな風に思っていた。彼女にとっても、ユウカが穏やかな気持ちになれている様子が救いであった。
『この子、私とよく似てる。この子がこんな
と、自分と同じように臆病で内向的で他人が怖いユウカでさえこんな表情ができるのだから、自分がいかに恵まれた環境にいるのかが改めて実感できて安心させられた。
自分の気持ちだけでは不安だったのだ。ただの勘違いなのではないか、単に幸せだと思い込もうとしてるだけなのではないか。そんなことがいろいろと頭を巡ってしまうのだ。これは彼女の性分なので、他人がとやかく言ってもどうしようもないものだった。
そして、こうしてユウカとメジェレナを引き合わせることができたことを、アーシェスは安堵していたのだった。
アパートに戻ってきた三人は、ユウカの部屋に集まった。そして、年頃の女の子がよくするような他愛のないおしゃべりを楽しんだ。
「どんな服が好きなの?」
「寝癖がなかなか直らない時はどうしてる?」
「寝入りばなにビクってなるの、あれびっくりするよね」
等々。本当に他愛ないものだ。
それはユウカにとって、ほとんど初めてと言ってもいい経験だった。
『こんな風に話したことなかったのに、アーシェスさんやメジェレナさんとだったらスラスラ言葉が出てくる。すごいな……』
話しながらそんな風に思ってたユウカに、アーシェスが尋ねる。
「ところでユウカって、どんなものが好きなの? 地球出身ならやっぱりマンガやアニメとかって好き?」
「あ、はい。好き…です」
「そっか。地球のマンガやアニメって超有名だもんね。ここでも大人気なんだよ。私はあんまり知らないけど、きっとマンガやアニメが好きな人とも友達になれるよ」
「そうなんですか…? 地球の…って言うか日本のアニメ、ここでもやってるんですか?」
「うん。やってるよ。地球でやってるアニメはもちろん、マンガだって手に入るし。
あんまり人気過ぎて、今じゃ地球に正式にエージェントを派遣して、マンガやアニメやゲームも輸入してる」
「へえ…って。え? でも、地球の人はここのこと知らないですよね…?」
「うん。だから、地球じゃある書店に納品してることになってたり、ある配信会社が配信してることになってるそうだよ。で、そうやって納品されたものをコピーして売ったり配信したりしてるの。
もちろん、地球の法律で言ったらいろいろアウトなのかもしれないけど、ここは地球の法律は関係ないし、だいたい、今の地球でここのこと知られたら、大騒ぎになるでしょうね。経済的なことも連携しちゃったら、たぶん、大混乱になるだろうし」
「あ~…確かに…」
「ここの経済規模って、地球数千個分のレベルなんだって」
「す…っ、数千……!?」
「そうだよ。人口だって、地球型の人間に限定したって、現在ざっと百五十兆を軽く超えるし、それ以外の知的生命体まで含めるとさらにその数十倍の人口がいるからね。地球に比べると物価が安くて経済活動も比べ物にならないくらいに緩やかだけど、元の大きさが違うから」
「はえ~……」
そこまで聞いたところで、
『話が大きすぎてついてけないよ~…!』
とまで思ってしまった。まあ、無理もないだろう。でも、それ以上にユウカを驚かせたのが、
「地球人って、クトゥルー神話までエンターテイメントにしちゃってるんだってね? 他の惑星じゃ口にしただけで失神者が出るくらい、恐怖の対象だったりするのに」
という話だった。
「え!? 他の星にもあるんですか!?」
つい前のめりになってしまった彼女に、アーシェスは、
「当然よ。だって邪神であるクォ=ヨ=ムイがここにいるくらいだし。ちゃんとクトゥルー神話に出てくる他の邪神達も住んでるんだよ。他の地域だけど」
「…そ、そうなんですか…!」
だけど次の瞬間、クォ=ヨ=ムイの姿が頭をよぎったユウカが思ったのは、
『ニャル様があんな感じだったらどうしよう…』
大好きなクトゥルー神話のことで話ができたのは良かったし、しかも他の邪神達も
『クォ=ヨ=ムイさんはいい人?だと思うし悪く言いたくはないけど、ニャル様がもしあの感じだったらがっかりしてしまいそうでヤだなあ……
だからってマジでSAN値削られる感じだったりしても怖いけど……
でもでもニャル様にはやっぱりカッコよくいてほしい……!』
クォ=ヨ=ムイの姿を思い浮かべつつ、もし同じようにひどく身近で俗っぽい風体だったら幻滅してしまいそうだと思った。だから、それを知りたいような、知りたくないような、何とも言えないジレンマが。
「やっぱりニャル様もクォ=ヨ=ムイさんみたいな感じなんですかね~…」
思わずそう問い掛けたユウカに、アーシェスは苦笑いを浮かべながら答える。
「どうかな。私もニャルラトホテプには会ったことないから分かんない。ショゴスやビヤーキー、ナイトゴーント辺りだとたまにうろついてたりするんだけどね」
『え…!? ショゴスにビヤーキーにナイトゴーント!?』
アーシェスの言葉にユウカのテンションが一気に上がる。
「ええ!? み、見たいかも!」
ユウカが初めて見せる積極性に、アーシェスは、
『邪神の話でこんな風に楽しそうに話せるなんて、地球人ってホントに不思議な種族だね。でも、それでいいよ。そうやって楽しめればいい。それを責める人はここにはいないし、もしいたとしてもそんなことを気にする必要は、ここではないから。
どんな辛い過去があっても、負い目に感じる必要はない。辛い過去があるのは、逆に普通だよ』
そんな風に思いつつ相貌を崩しながら、さらに答えた。
「誰かに使役されてるわけでもないホントの野良だから、探そうと思っても難しいけど、運が良かったら会えると思うよ。何十年かに一回だけどね」
「何十年かに一回…!? やっぱりそんな感じなんですね~…」
などと、テンションのあまりの落差にメジェレナが、
『そこまでがっかりするほどのこと……!?』
が驚いてしまうほどにユウカは落胆していたが、ここでは何十年程度の時間など、有って無いようなものである。だから、
「大丈夫だよ。楽しく過ごしてればそんなの全然気にならなくなるから」
とついフォローを入れてしまった。
ユウカがその辺りを実感できるまでは、まだまだ時間が必要なようだ。
ユウカ、アーシェス、メジェレナの三人でのおしゃべりの時間は楽しくて、あっという間に夜が更けてしまっていた。
「あ、そろそろお
自分の時計を確認したメジェレナがそう言って部屋に戻ると、
「じゃあ、先にシャワー浴びちゃって」
と、アーシェスがユウカにシャワーを浴びるように促した。
『今日もシャワーだけか…でも仕方ないよね……』
本当は湯船に浸かってゆっくりしたかったが、ないものはどうにもできない。
ただ。
『ドライヤー買ってきたから髪を乾かせるのは助かるな~』
とは素直に思えた。
シャワーから出てきたアーシェスも髪を乾かし、それからまた二人でベッドで寝たのだった。
「……ん…? アーシェス…さん…?」
翌朝、アラームで目が覚めたユウカは、アーシェスがいないことに気が付いた。
『トイレかな…?』
と思って見回すと、テーブルの上にサンドイッチとメモが置かれているのが目についた。
『これは…』
まったく知らない筈の文字で書かれていたそれも、見ただけで意味が分かる。
『私が担当してる他の子のことで急用ができたので、先に出ます。朝食はサンドイッチでいいかな。お仕事がんばってね』
と書かれていた。
『そっか…私の面倒だけ見てたらいいわけじゃないもんね……』
少し寂しい気持ちにもなったものの、それも素直にそう思えた。
「よし…! お仕事頑張らなくちゃ……!」
小さく自分を励まして、サンドイッチを食べて、歯磨きをして、服を着替えて、鏡を見ながらブラシとドライヤーで髪を整えて、昨日よりはまたもう一つ身だしなみに気を付けて、八時半には部屋を出た。書店までは歩いて十分ほどだったが、念の為ということだ。学校にも、予鈴の十分前までには行くようにしていた。
しかし……
『あ…あれ? 確かこっちだった…よね……?』
道はそれほど難しくなかったはずなのに、分かれ道で少し自信がなくて戸惑っていると、アーシェスよりもさらに体の小さい、でも見た目にはそれなりに年齢のいってそうな女性に、
「どうしたの?」
と声を掛けられた。
「本屋さんって、どっちですか? リーノ書房っていう本屋さんです」
これまでは知らない人に声を掛けられると声を出すまでにも一苦労だったのに、自分でも驚くぐらいすんなりとそう尋ねられた。するとその小さな女性は、右の方を指さして、
「ハルマのお店ね。それならこっちを真っ直ぐ行くとすぐよ」
と、ユウカもそうじゃなかったかなと思っていた方を示してくれた。
「ありがとうございます」
素直にはっきりと丁寧に頭を下げてお礼を言えたユウカに、その女性は言った。
「私は大丈夫だけど、頭を下げる時は気を付けてね。背の高い種族の人たちの中には、頭を下げるのは服従のしるしと受け取る人たちもいるから。ここはたくさんの種族が暮らす<書庫>。いろんな人がいるからそういうのも覚えておくといいよ」
「は、はい、ありがとうございます」
と言ってまた頭を下げそうになって、ユウカはちょっとあたふたしてしまった。
などと、小さな女性から慣習や価値観の違いからくる細かな注意点についてアドバイスを受けたユウカだったが、実を言うと女性の言っていたことは現時点では既にほとんど気にする必要もないほど廃れた慣習だった。だからアーシェスも、ユウカがついつい頭を下げるのを何度も見ながらもこれといって忠告をしなかったのである。
ただ、この女性が来た当時にはまだそういうものが残っていたこともあり、少々お節介ながらも注意してくれたのだろう。
女性に教わった通りに歩いて、ハルマが店長を務めるリーノ書房に辿り着き、
「おはようございます」
と挨拶をして、そのまま奥の扉からバックヤードへと向かった。
「おはようございます」
そう応えてくれたタミネルはやはり今日も冷淡な瞳を眼鏡の奥から光らせている感じだったが、
『なんかちょっとだけ怖くなくなった気がする』
などと思ってしまう。
慣れと、
『ホントは怖い人じゃないみたい』
ということが分かったからかも知れない。
昨日と同じように簡潔に丁寧に改めて仕事の手順を説明してくれているのを聞いていると、そこに、
「おはよ~」
と明るく気楽な感じで挨拶をしながらバックヤードに入ってきた者がいた。
「お? 新しい子? あたし、リルケ・ニルキア。リルって呼んで。よろしくね」
リルと名乗ったその女性は、タミネルとは正反対の印象を持たせる人物だった。年齢はよく分からないが陽気で気さくで朗らかで人懐っこい感じで、緑がかった肌とややピンク寄りの赤い瞳が目に付いた。
「あ…え、と……!」
ユウカは反射的に頭を下げそうになって、しかし道を教えてくれた小さな女性の言葉が頭をよぎって、ややぎこちない感じではあったが、
「おはようございます。
となんとか挨拶をした。その様子を見たリルが、
「お? ユウカも頭下げるタイプの挨拶の人なんだね。さては頭下げると服従の意味になるとか言われたのかな? 確かにそういうのもたま~にいるけど、そんなにガッチガチに気にしなくても大丈夫だよ」
と、笑いながら言った。
『え…? でもさっきの人は……』
さっき言われたことと違ってたため、ユウカは少し混乱して、
『あ…あの……?』
思わず助けを求めるようにタミネルの方を見てしまう。するとタミネルが、やはり冷静に事務的に応えてくれた。
「リルの言う通りですね。かつてはそういうこともあったようですが、今ではそれほど神経質になる必要はないでしょう。
しかし、あなたのように頭を下げる習慣がある種族の方が少ないことも事実ですので、多くの場合は自然とやらなくなるようです。ですが、互いの習慣についてはあまり口出ししないこともここでの暗黙のルールです。あなたがそれを続けたとしても非難されるべきことではありません」
「あ、そうなんですね……」
丁寧に言ってくれたことで安心できたユウカだったが、
『はあ…なんだか難しいな……』
やはり多くの価値観が混在する場所ならでは難しさも改めて感じていた。
そんな風に戸惑うこともあったりしながらも、ユウカは自分に与えられた仕事をこなしていく。リルは慣れているのか鼻歌まじりでユウカと同じ作業していたが、それをタミネルに、
「作業に集中してください。ミスの素です」
と注意されたりもしていた。
しかし、
「は~い」
と応えたリルはさほど堪えた様子もなく、しばらくするとまた鼻歌を歌い始めたりする。
『また怒られるんじゃないかな…』
と緊張していたユウカも、しばらくして慣れてきて冷静にタミネルの様子を窺っているとなんとなく分かってきた気がした。
『そうか。タミネルさんはただ仕事でミスしないようにと注意を促してくれてるだけなんだ。でも、あまり上手に人と関われないからきつい感じの言い方になるんだ…』
そうやって、怯えながら他人の顔色を窺わなくても大丈夫ということをユウカは肌で学び始めていた。それが彼女の心に余裕を生み、リラックスして仕事ができるようになっていく。
だからつい、
「♪~」
と、リルと同じように鼻歌が漏れてしまっていた自分に気付き、ハッとなってタミネルの方を見た。注意されると思ってしまったからだ。
だが、非常に小さな鼻歌で聞こえなかったのか、タミネルは自分の作業に集中していただけだった。
『よかった……』
ほっと胸を撫で下ろしていると、何かの気配に気付いてそちらの方に何気なく視線を向けてしまった。するとそこには、親指をぐっと立てたリルの姿があった。
「リラックスしていこうぜ」
などと、辛うじてユウカに聞こえる程度の小さな声を掛けてきてくれた。それを見てユウカも、なんだか励まされたような気がしていた。
だが実はこの時、タミネルにはユウカの鼻歌が聞こえていたのだった。だが彼女はあえて聞こえないふりをしてくれたのだ。
『彼女自身が自ら気付いて改めてくれるならそれに越したことはありませんからね……』
と考えたからだ。冷淡で堅物にも見えるタミネルだが、その程度の気遣いはできる人物でもあった。
人にはいろんな一面がある。そんな当たり前のことが、ここではちゃんと当たり前として認識されていた。一見不真面目そうに見えるリルも、これで実はけっこう生真面目なのだ。だからこそ、ユウカが仕事しやすいようにリラックスできるように気を遣ってくれてるのである。
やるべきことはきっちりとこなし、しかし無駄に力は入れ過ぎずリラックスして仕事をこなす。長く仕事を続けるコツがそこにはあった。まさにそれが体現されていたと言えるだろう。
昼、順番に休憩を取る為、ユウカがまず休憩に入るように指示された。バックヤードのさらに奥、従業員用のロッカーが並ぶ部屋の隣が休憩室だった。そこにハルマがいた。
「ご苦労様です」
そう声を掛られて恐縮しながら、ユウカは部屋に入った。
「お昼は各自、お弁当を持参するか近所のお店でランチをとったりしてもらってます。今日は初めてなのでユウカさんには僕から唐揚げ弁当を奢らせていただこうと思ったんですが、それでいいですか?」
ハルマがそう言いながら出してきたのは、確かに唐揚げ弁当だった。
『唐揚げ弁当だ…ここにも唐揚げ弁当ってあるんだ……』
アイアンブルーム亭の回鍋肉もそうだったが、なぜこんなに地球の料理が普通に出てくるのか、ちょっと不思議だった。
だがそれ自体は、実はそんなに珍しいことではない。他の惑星にもそれぞれ似たような料理が存在し、そういうものが合わさってそれっぽい料理になっているだけで、最も近い料理名があてがわれているだけなのである。
だから厳密には、
<唐揚げ弁当に似た別の料理>
とも言えるのだが、味も触感も、使われている食材も、唐揚げ弁当と言って差し支えないものなので、そんなに神経質になる必要はないだけなのだ。
しかも、それぞれが住んでいる地域は、姿形だけでなく生態的だったり体質的だったりが近いものが振り分けられているため、食べられるものもそれほど違わないというのもある。
そうしないと、ある種族にとっては必須の栄養成分が他の種族にとっての猛毒だったりするので、死ぬことはなくても大変な食中毒を起こしたりする場合もあるのだ。
他の地域に出掛けたりする場合には気を付けないといけない注意点だった。
もっともそれも、特に危険な場合には、言語が自動翻訳されるのと同じように『これは食べられない』という直感が働くので、本来ならそれに素直に従えばいいのだが、たまに敢えてそういう感覚を無視するのがいて事故になったりするのである。
まあそういう注意事項もありつつも、ユウカのここでの生活はおおむね順調と言えるだろう。
「いただきます」
「はい、どうぞ」
穏やかな笑顔を浮かべているハルマに見守られながら、彼女は昼食をいただいた。今日はハルマからのもてなしということだったが、明日からは自分で用意する必要が出てくる。
…かもしれない。
と言うのも、彼女が来たばかりと知れば誰かがもてなしてくれるので、当面、食べるには困らないはずだ。要はこの近所の店を巡って、行く先々でもてなしてもらえばいいのだから。
ただ、ユウカ自身が、
『なんかそういうのって、厚かましいって気がして恥ずかしい……』
と感じてしまうほど、そういう風に積極的に『来たばかり』だということをアピールできる性分じゃないので、必ず気付いてもらえるわけでもないだろうが。
しかし、その辺の損得もそんなに気にしても意味はないとも言える。
ここでは損も得もないのだ。損をしたからと言って死ぬわけでもないし、得をしたからと言って何か素晴らしい恩恵にあずかれるわけでもない。程々に頑張って程々に楽しむ。結局それがここでの人生を楽に生きるコツなのだ。
昼からの仕事も順調にこなして、ユウカは今日も自分の役目を果たすことができた。
『なんか、ちゃんとできた気がする……!』
それがなんだか嬉しくて、ほんの少しだけど誇らしいような気持ちにもなれた。
「はい、今日の分のお給金」
ハルマから給金を渡されて、
「ありがとうございます」
とやっぱり頭を下げる。
『頭を下げていいのかどうかよく分かんないけど、私にはこっちの方が当たり前かな…』
と、自分にはまだこうするのが自然なんだと彼女は思った。
店を出ると、そこにはアーシェスが待っていてくれた。
「アーシェスさん…!」
どうやら用件は無事に終わったようだった。
「お疲れ様。このまま帰る? それとも夕食でも食べてから帰る?」
そう聞かれてユウカの頭に浮かんだのは、アイアンブルーム亭だった。あの気持ちいい夫婦のお店になんだか無性に行きたいと思った。
「ラフタスさんのお店に寄っていいですか?」
その言葉に、アーシェスも嬉しそうに微笑んで、
「もちろん」
と応えてくれた。そして二人でアイアンブルーム亭へとそのまま向かう。
「いらっしゃい! あ、ユウカちゃん、来てくれたんだ。ありがとう!」
ニレアラフタスがユウカの顔を見るなり、満面の笑みになった。
「どうぞ座って座って、今日こそはうちのおごりだよ。何でも頼んで!」
ユウカとアーシェスを席に座らせながら明るく笑う。その笑顔がユウカにはまぶしく思えた。
「え、と、じゃあ、焼き魚定食でお願いします」
パッと目に着いたメニューの中にあったそれを頼むと、ニレアラフタスが少し驚いた様子で、
「おおう、若いのに渋いところ攻めてくるねえ」
と言ったあとすぐ、
「よっしゃ、焼き魚定食いっちょう~!」
と、ネルアーキに向かって声を上げた。それに対してネルアーキも、
「おう」
短く応えてさっそく作業に取り掛かる。続けてアーシェスは、
「私は今日は冷奴定食で行こうかな」
と慣れた感じで注文した。
「あいよ~!」
ニレアラフタスの元気な受け答えに、ユウカは思わず頬が緩むのを感じた。
『素敵な人だな……』
改めて思う。
それから店の中をちらりと見まわすと、今日も他にも何組かお客がいた。が、昨日いた常連らしき酔客は、若干時間が早かったからか見当たらなくて、
『よかった…今日はいないのか…』
などと少し胸を撫で下ろした。あのノリは彼女にはまだ早かったようだ。
しばらくして焼き魚定食が出てきてから、
『そう言えば昨日の回鍋肉がまだ残ったままだった……! 今日食べる筈だったのに……」
冷蔵庫に回鍋肉が残っていることを思い出してしまった。でも今さら食べない訳にもいかず、冷奴定食を前にしたアーシェスと一緒に、ちゃんといただいた。ご飯はおかわり自由だったがおかわりはしなかった。
「今日はうちのおごりだよ~。また来てね~」
そう言って見送られた後、アパートへ戻る途中でアーシェスが言った。
「まだもうちょっと食べられそうだから、帰ってから昨日の回鍋肉を温め直してもらっていい?」
その言葉にユウカも、
「はい!」
と元気に答えられたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます