第2話 レーン・アーツ
天帝暦1206年 2月30日 晴れ。この日、俺様が率いる部隊に「あるひとりの少女を、指定の位置にまで無事に送ってほしい」との指令が通達される。
俺様の部隊は【
【
俺様は24歳となったその日に、
「しっかし、なんで栄えある【
「はははっ! アーツ隊長。そんな脅すように言わなくても良いじゃないッスか。ほら、隊長が機嫌悪そうにしているから、おいらの後ろに隠れちまったッスよ?」
レーン・アーツが部隊の中で一番信頼している副官・シン・スー・リンであった。彼はレーン・アーツとは違い、物腰柔らかで、いつもニコニコと笑顔を絶やさなかった。歳はレーン・アーツの2歳上で、現在、27歳であった。
「ちっ。お前はさすがにガキの面倒には慣れているみたいなんだぜ。3歳の娘を持つやつは、違いますねえ?」
「はははっ! なら、隊長も結婚したら良いッス。我が子ってのは、とてつもなく可愛いもんッスよ? 他の小生意気なクソガキも許せるようになるッス」
けっ。言ってろと想うレーン・アーツであった。【
戦車は4人乗りであったが、その場に似合わない少女が乗っているために、戦車の荷台部分は手狭も良いところであった。さらにレーン・アーツをイラつかせるのは、その少女がシン・スー・リンには懐いているようだが、自分には明らかに忌避の色を眼に映していたことだ。
「ちっ。なんだって、俺が14歳程度のガキのお守りをしなきゃならんのだぜ。これが
「レーン隊長。本当に子どもが嫌いなんッスね。ほら、怖がることは無いッスよ? レーン隊長は惚れた女がコブ付きだったから、こんな性格に変わっちまっただけッスから」
「ん……。性格は直らないから性格。このひとは多分、元から、子どもが嫌いだと想う」
シン・スー・リンが少女の手厳しい指摘に想わず、笑わずには居られない。
「はははっ! レーン隊長。これは一本取られたッスね! そういや、隊長は昔から子どもが嫌いだったッスわ!」
「うるせえんだぜ! そのクソガキより先にお前を戦車から叩き落としてやろうか!?」
「おっと、レーン隊長が怒ったッス! おい、がきんちょ。おいらの後ろに隠れていろッスよ? この隊長の格言は【有言実行】ッスからね! はははっ!」
レーン・アーツは、豪快に笑う自分の副官に、ふうやれやれと毒気を抜かれてしまうのであった。
「わかった、わかった。俺様が悪かったんだぜ。おい、クソガキ。戦車から叩き落とすのはやめてやるから、せめて、名前くらい教えるんだぜ?」
レーン・アーツは少女と和解するためにも、彼女の名前を聞き出そうとする。すると、彼女はただ一言
「ん……。マテリアル・レイ」
「えっ? マテリアル・レイだって? また、珍妙な名前だぜ。それはお前の本名なのか?」
「ん……。多分、そう。
「レーン隊長。まーた、そんなヒトを疑うような視線を向けるのは止めるッスよ。多分、レイちゃんは、
「ん……。自分の出自については何もわからない。ただ、ボクは、あそこで育てられたとしか」
「育てられたあああ? まったく、近頃の
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