第34話 リトーリ


「お前は、だだ兄貴に、テトロのおじさんに復讐をしたいだけのかたまり。テトロを利用して、向こうの世界に行こうとしたんだろ?」


「……チッ」


母さんが、舌打ちをする。


母さんが、叔父さんに復讐?

僕を利用する?


わからない。


僕の方を見たリトーリは、焦っていた。


なぜ?



と、不意に、と兄弟たちが姿を現す。


あ、あれはもう一人の僕だから、偽物か……。


「なんでお前らが……!」


リトーリが悲痛そうな声を出す。


「ねぇ、こんなの間違ってる。そう思わない?」


突然、偽テトロ……。今や人間のテトロとなっている彼が声を張り上げた。


「僕、みんなに話したんだ。僕の正体を。僕はもう、十分楽しんだよ。だから僕は、消えても構わない」


消える?

いなくなるってことか。


でも、どうして。


頭が回らない。


「俺だって消えても構わんから」


モノウェがリトーリを睨むようにした。


「なんだよ、俺が悪いのかよ! 自由になりたいっていうこの気持ちの何が悪いっていうんだよ‼︎」


僕が見えないかのように、四人が話している。


「ねぇ、私たち、本当の世界で生きているとしたら、もうとっくに機械の寿命が来て止まっていたって知ってた?」


ジーロアが静かに問う。


「それは……っ」


「私、さっきまで自分がロボットだなんて知らなかったし、今も正直よくわからない。でも、ここにいたおかげでその分長く生きれたなら、これ以上わがままを言ってはいけないって思ったの」


そして目を瞑り、首を振る。


「ううん、少し違うかな。死んでもいいんじゃなくて、本来いるべきところにテトロを戻すためなら、犠牲になっても構わないって思ってる」


「なんだよ……。お前ら……。どうしてそうなるんだよ!」


「こうして最後にみんなで会えたんだ。最後くらい、仲良くしようよ」


「違う……。俺は、俺は!」


リトーリの目から、水が流れている。何の意味があるんだ?


そんなリトーリの元にそっと近づいてきて、彼の頭を撫ぜる偽テトロ。



僕だけが、独りぼっちだった。



その時。


「時間がなくなってしまう! テトロ、早く母さんとここを出よう!」


ああ、僕は一人じゃなかったんだ。


ホッとしたのを最後に、思考が遠のいていくのを感じるのだった。

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