第33話 白い光

「やっと見つけた! 出口を!!」


 リトーリの声が聞こえる。


「移動しやすい記憶で助かったぜ、テトロ」


 僕は地面に転がっていた。


 あのコンクリートの部屋だ。


 リトーリはどうやってここに来たんだ? 移動?

 瞬間移動が使える……?


「キ、オク……。イ、ド、ウ?」


「戻ったんだよ。お前の記憶の中にある建物に。唯一の出口のある場所に! さぁ、どこから出れる?」


 どうしたんだろう、リトーリ。

 何を言っているの?



 その時。

 白い光がフワフワと漂ってきた。


「犠牲者、なにしに来たんだよ」


 頭痛がする。


 目を凝らすと、白い光が人の形だということに気付いた。


 その人が振り向く。


「カ、ア……。サ、ン」


 なぜだろう。

 空っぽの心に光がともったような気分だ。


「テトロ、ここにあなたを連れて来たのは私。私が母さんだってよくわかったね。ずっと会いたかった。我慢していたのに。私は人間だったのに、兄さんの実験のせいでこんな霧になってしまった。そしてお前も……」


 そうか、母さんはずっとそばにいたんだ。

 あの白い光は、母さんだったんだ。

 あの夢に出て来た女の人も、母さんだ。


「さぁテトロ。まだ間に合うわ。私たち二人だけであの世界に戻ることが」


 でも、邪魔が入る。


「おいおい、犠牲者。黙って話を聞いていれば、随分勝手なことを言ってくれてるじゃーないか? ここまで連れてきた俺の働き損??」


 パッと母さんが僕から離れて行ったのを感じる。




「こう呼ぶべきか? 『悪魔』」


 崩れた気がした。

 母さんを覆っていた、仮面が。



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