第28話 「オオサジ、ニブン、ノ……イチ」

「テトロ、今思い出してたでしょ」


どうしてわかるんだろう。


ロボットは一つ深呼吸し、決意を固めたように口を開いた。


「それは、ボクが……」


しかし、それを遮る者がいた。


「なぁ、早くしないと、誰一人逃げられないぜ?」


「リトーリ、ボク、賛成してない!」


リトーリは腕を組んだ。


「反対もされてないからな」


なんの話かわからない。


「ずっと、あんたの夢だったんだろ?こっちは手伝ってやったんだ。犠牲者と一緒に」


「犠牲者なんて呼び方、しないで!」


「もう後戻りなんてできないんだぜ!早く決めないと全部水の泡だ!」


「まだ、間に合う!方法、きっとある!!」


まただ。わけのわからない会話ばかり……


「サッキカラナニヲイッテ!……?」


喉が、変だ。機械のような音が出る。


舌が、うまく動かない。


「ドウシテ……?」


ロボットがハッして俯いた。


リトーリは、気が狂ったように笑い出す。


色々な感情がごちゃ混ぜになったような笑いだった。


「ほらみろ!手遅れだ!このままじゃテトロも犠牲者になるぜ!!」


リトーリが表情を消した。



「そうだろ、テトロ」



彼の視線の先には、あのロボットがいた。



いるはずだった。


……そこには、チカチカと姿を変える生き物がいるのだ。

チカリと光って僕と瓜二つの少年になり、チカリと光ってあのロボットになる。


それを永遠と繰り返していた。

それは、もうすぐロボットが、僕自身になり変わろうとしているかのようだった……




僕は自分の足に意識を向けた。


わかる。


ジワジワと、錆びた鉄が、僕を飲み込もうと忍び寄る様子が。

心にまで、のめり込もうとしている感覚が……


まだ血の通っている場所という場所に、びっしりと鳥肌が立った。



地面にあのスプーンが落ちる。


白い粉は、ちょうどスプーンの半分ほどまで積もっていた。



「オオサジ、ニブン、ノ……イチ」



それと同時に頭がギンギンと唸り始め、僕は悲鳴をあげた。



脳みそをかき混ぜられているみたいな、おかしな感覚……



地面に真っ直ぐ立てなくなる。



また、意識が遠のいていく……

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