第27話 蘇る記憶

 *  *  *



「おいで」


 白く続く空間。


 遠くで、誰かが僕を呼んでいる。


 柔らかくて、温かな声。


 けれど、誰なのかはわからない。


{いや、僕はこの声を知っている。声の主も}



「おいで」


 もう一度、その言葉が白い世界の中で響いた。


 影が見える。


 ほら、やっぱり、僕の知っている人だ。


 今すぐそっちに行きたい。


 でも、それとは反対側からも、低い声が聞こえる。



「テトロ、そっちは違う!そっちに行けば、おまえは壊れてしまう!」


 おじさんだ。

 壊れてしまう……?


{やっぱり僕はおじさんに造られたロボットなんだ。


 じゃあ、父さんと母さんはなんなのだろう。

 父さんは育て親だけど、母さんは……?


 なんの複雑な感情も湧いてこない。

 ただ、疑問だった。


 きっとおじさんに聞いても答えてくれない。

 そんなの、意味がない}



「さぁ、おいで」


 僕の足が、それに答えるように、一歩前へと進んでいく……



 *  *  *

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