第24話 過去の話

 *  *  ※  *  *



「一、二、三……三体か」


 弟、ジルが、熱心に何かを数えていた。


 弟とは、結構仲がいい。

 割と年が離れていて、俺には反抗してこないからかもしれないな。


「何を数えているの、ジル」


 振り返ったジルの顔がパアッと笑顔になる。


「あ、ジム兄さん!これ、家の物置で見つけたんだ。母さんには秘密。どうせまたうるさいから」


 きっと父さんが置いていったものだ。


 今父さんは仕事で外国に行っている。

 必要なものは全部持っていき、あとは捨てて置いてと放置したものだった。


 母さん曰く、ガラクタは遊びに使ってはいけないらしい。

 でもジルは、そういうものが大好きだし、別にいいと思う。


「そうだね。で、これは何なの?」


「これは……」


 ジルの説明はとても長い。

 面白いのだが、脱線した話が多いためだろう。


 要約すると、どうやら未完成のロボットで、あと少し調節すれば、動くそうだ。



 前からジルの夢は、機械やロボットを作ることだと聞いていた。


 俺は賛成だ。


 だって父さんみたいに色々発明できたらかっこいい。


 残念ながら俺にはそこまで才能がない。

 だからそのぶん、ジルを応援したかった。




 それからロボットを動かすまでには、何年もかかった。


 その途中で父さんが家にいる時期があったり、またガラクタを引っ張ってきたりした。


 やっと完成した時には、もう俺たちは大人になっていた。




 ロボットが完成した日に俺は母さんが捨て忘れていた最後のガラクタを発見した。


 そのとき父さんは、天国だった。


 父さんが、俺たちのために残してくれていたのかもしれない。


 ジルにそのことを話すと、


「非現実的だ」


 と突き放されてしまったが。

 ジルはそういう性格になってしまったのだから仕方がない。


 そう言いながらも


「でも、この装置は変わっている。後で調べてみる」


 と俺が見つけた機械に、熱心な目を向けていた。



 そう、結局はこうやってジルの役に立つのだ。



 *  *  ※  *  *

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