第21話 ジーロア

「しっかりして!大丈夫?」


 目を開くと、そこには女性がいた。


 また、あの部屋に戻っていた。


 女性はまだ子供のような雰囲気も残っているが、物静かそうに見える。

 麦わら帽子を被った色白の顔。


 薄い茶色の髪は、肩より少しだけ長い。

 そして、黄色のワンピースを着ている。


「大丈夫です。あなたは……?」


 女性はパッと表情を明るくした。


「気づいてよかった!私はね、ジーロアっていうの!」


 聞きなれない名前だ。

 それにしても、意外とテンションの高い子で、驚いている。


 おてんば娘という感じだ。


 ジーロアは、言葉を続ける。


「君はね、ずっと花畑にいたでしょ?だから具合が悪くなっちゃった!あの花畑に入る時は、持ち主の私でさえ、洗濯バサミで鼻を摘まなきゃダメなんだから」


 ジーロアは、自分の鼻をヒョイっとつまんだ。


「どうしてかっていうとね、ここの花達には、色によって色々な効果があるからなの!眠くさせたり、元気にさせたり、のんびりさせたり、ね!ほら、それが全部同時に起こったら、頭が壊れちゃうでしょ?」


 それからジーロアは、ポンっと手を叩く。


「そうだ!看板よ!ジムおじさんがせっかく作ってくださったのに!きっとガッカリなさるわ!でも、あなたが元気になったから、問題はないわね」


 もしかして、僕はジーロアの言う看板にぶつかったから、気を失ったのだろうか。

 それで看板が壊れてしまったのなら、すごく申し訳ないのだけど。



 彼女は階段にたどり着いたが、サッとこちらを振り向いた。


「ご飯をいっぱい食べれば、頭もスッキリするから!動けるようになったら降りてきてね!」


 インパクトの強い彼女のことがあったため、テトロは夢も、さっきまで悩んでいたことすらも忘れてしまった。





 テトロは、ジーロアとジムという、彼女のおじいさんと一緒にあの家で食事を取っている。


 その様子を、陰から見つめるものがいた。


「あとは、あいつらだけだな」


 その上空を、あの光の線が通る。


「なるほど。そこにいたのか……俺たちの犠牲者が」



 次の瞬間、その者は姿を消していた。


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