第20話 恐怖
* *
砂嵐のテレビ画面のような風景が広がり、ザーッという音が耳鳴りのようにしつこく流れる。
何かに肩を触れられた。
耳鳴りが、段々強くなる。
手、なのかもしれない。
砂嵐の中に、人影がみえた。
近い影で、顔のようなもの。
髪の毛が短いのは確かだ。
何か言っているようだが、なかなか聞き取れない。
少しだけ、不安だ。
おまけに、耳がひどく痛くなってきた。
不意に、頭の中へと文字が流れ込んでくる。
“もうすぐだ“
その瞬間、キーンという金属音のようなものが、頭をつんざき、景色は一変した。
* *
*
赤黒い空間。今まで感じたことのない、寒気がする。
僕はゴクリと唾を飲んだ。
それに合わせるように、モノウェが目の前に現れる。
でも、目がぼんやりとしていた。
「どうしたの、モノウェ」
モノウェは答えない。
不意に彼は僕の方に左手を伸ばして、目をカッと開いた。
背筋がゾクッとし、心臓が高鳴る。
あの手が、自分の心臓を掴もうとしてきたのだ。
しかしモノウェは蒸発するように消えた。
替わりにいつもの愛想笑いをしたおじさんが現れる。
「おじさん……!」
言いたいことがあり過ぎて、言葉にできない。
喉に声が詰まったみたいだ。
まだ心臓の鼓動は落ち着かない。
おじさんは、徐々に真顔になる。
何か、ドロドロしたものが、僕の中に湧いて来た。
おじさんはそのまま砂山が崩れるようにいなくなり、次は父さんが現れる。
父さんに、表情はなかった。
片手には、太陽をそのまま封じ込んだような目玉焼きを乗せた黒いフライパンを持っている。
美味しそうだ。
僕は目玉焼きに手を伸ばした。
あと少しで手が届くという時に、目玉焼きの白身が真っ黒になり、なぜが黄身が割れて黒いドロドロが地面に落ちた。
ハッとして顔を上げると、そこには自分がいた。
モノウェみたいに、無表情のまま、口を開く。
「ぼく……は、テ……トロ」
枯れ葉がかさばるように乾いた、小さな声だった。
もう一人のぼくはそのまま小さくなっていき、あのロボットへと変化した。
ロボットは、悲しんでいた。
それを隠すように、無表情を作ろうとしていた。
ロボットになんて、表情はないのに。
でも、必死なのはよくわかった。
助けてあげたい……
そのままロボットは崩れ、誰かが現れる。
が、急に視界がぼやけ始めた。
やっとわかったのは、長身の人と、僕より数センチ背が高い人がいること。
二人とも、薄笑いを浮かべている口元だけが脳内にはっきり流れ込んで来た。
その瞬間、僕は悲鳴をあげた。
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