第18話 僕のーー足

 僕はバサリと跳ね起き、大きく息を吸った。


 今の夢は、なんだったのだろうか。


 あの夢は…そうだ、この変な世界に来た時に見た夢にそっくりだった。


 でも、前はこんなに苦しくなかったはずだ。



 たかが夢。

 なのに、どうしてこんなに気になるのだろう。


 息が整うと、急に体が重くなって、また横になった。

 そして、やっと場所が変わっていたことに気づいた。



 そう、どこかの家のベットの上にいたのだ!



 壁は、丸太が積み重なった形で、床は板張り。

 天上は三角で、足が向いている方向に降りの階段があるようだ。


 重い体をなんとか起き上がらせると、ベッドの横の窓から、外を見ることができた。


 さっきまでいた、花畑が広がっている。

 ずっと遠くまで、続いているようで、花畑の終わりは、見えない。


 高さ的に、ここは二階だろう。


 二階といえば、僕の部屋も二階だった。

 窓の外なんて、周りの建物の壁しかなかったけれど。


 僕の部屋にもベットがあって、机があって、タンスと本棚もある。

 この部屋と置いてあるものは似ているけれど、色や形が違うから、この部屋自体に親近感は持てない。

 しかし、どこか優しい、落ち着く家ではあった。



 そういえば、僕の足は無事なのだろうか。

 今まで色々ありすぎて、すっかり忘れ去られていた足に意識を集中させる。


 相変わらず、痛みはない。


 でも、確実に違う。


 ここにあるのに、自分の一部なのに。


 ……もしかして、夢の中の音は、現実?

 そんな馬鹿な。


 布団から足を出すと靴は履いていなかった。


 この家の玄関にでもあるのだろう。

 いや、どうやってここまで来た?とにかく、左足を見てからだ。



 靴下を脱ぐ。


 平然とかかとまで靴下を下げたその瞬間、ザワリと全身に恐怖が駆け巡った。


 変色している。


 そのまま勢いよく靴下を脱いだ。

 足を指で弾くと、静かにコツンと響いた。


 こんな、こんな事、あるわけがない!


 これは、一体……


「どういうことなんだ……!」



 そこにあったのは僕の知っている、人間の足ではなかった。




 弾いた勢いで指に走る小さな痛みの矢が、感覚のない足を弓に、心へ棘となって刺る。


 軽い目眩の中、僕は再度確認した。


 しかし、何度見ても間違えない。



 僕の足は、ロボットの足になっていたのだ。




 しかも、今にも外れそうで動かすことすらできない、焦げたトーストに似た、錆びている足に。

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