第10話 パソコンの気持ち
曲がりくねった道を進んでいくと、不意に、冷たい風がヒュルリと僕にぶつかって来た。思わず身震いをする。
そして次の曲がり角の先に、パソコンが落ちているのを見つけた。
閉じていたが、表面は傷だらけだ。
僕はパソコンの蓋を開ける。
ところが、ビキビキとして、キーボードと画面の部分が二つに分かれてしまう羽目になった。
キーボード部分は、キーボードのボタンが取れているところもあるし、砂や埃が隙間にぎっしり詰まっている。
とても使えそうにない状態だ。
画面の方は、真ん中に蜘蛛の巣のようなヒビが入っていた。
その画面の右斜め上に、薄黄色の付箋がついている。
そこには、赤ペンで、『ゴミ』と走り書きされていた。
その文字を見た瞬間、僕はゾワっと鳥肌が立った。
こんな状態なら、ゴミになって当然かもしれない。
でも、
『ここに置いていかれるのが、どんなに辛いかわかる?』
『大切にしてもらえなかったんだよ?!』
と訴えるようなものが、その文字に取り憑いているみたいだった。
そんなパソコンのあるはずのない感情が、モヤモヤと僕の中で広がっていく。
どうにかこのパソコンのモヤモヤを消してあげれたら。
いや、少しでもいいから、何かしよう。
そう思って、僕はバラバラになってしまったパソコンを抱えると、歩き出した。
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