第5話 変色

 —ほんの数日前の晩。


 足の爪を切ろうと思って左足をみた時、親指の先っぽが、少しだけ変色していることに気がついた。


 まるで、オーブントースターで焦がしてしまったトーストみたいな色に。


 触ってみると、石のように硬い。おかしい。


 でも、痛くない。


 さっきの変な症状だって、きっと明日になったら、治っている。


 だから、その日はいつも通りにした。


 けれど、そんな期待はあっさり裏切られた。


 結局どうしていいかわからなくて、僕は父さんの所に行った。



「父さん、これ見て」


 僕は父さんに親指を見せた。


 父さんが、必死で冷静になろうとしているのが、いやでもわかる。

 冷静になろうとしたら、余計に焦って良くないのに。


 僕も少し不安になる。

 そんなにまずい事なのだろうか。


 けれど少しの間を置くと、父さんは、いつも通りに戻り、


「大丈夫だ。気にするんじゃない」


 と笑った。




 だが、その声の裏に隠されている大きな絶望感を、感じ取らずにはいられなかった。


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