Day4
昨日買った狐の仮面つけて店へと向かう。
なんだこれ…こんなに視界悪いのか…
実用的なことをまるで考えていなかった。しかもこれに眼帯が加わってるからもうどうしようもない。せめて片目のみ隠れるヤツにすればよかったかもしれない。…いや、それじゃだめだ。…寂波はいつもこんな世界を見ているのか?
店に着くと、そこにはいつも通りの彼女の姿があった。…というよりは今まで通りと言った方がいいかもしれない。
「おー!?だれだぁ?…あーっ!もしかしてもしかしなくとも銀河クン?」
「そ、そうだけど。買ったはいいけど視界が良くないよ。あ、別に商品に文句いってるわけじゃないから。こうすることでお前の気持ちが理解できるようになるかもしれないと思って買ったんだし。」
「仮面の良さが分かって来た?今ボクは般若の仮面にノルウェーのブーナッドっていう民族衣装を着てるんだよ!このミスマッチ感が逆にイインダッテ!視界の悪さはそのうちなれるよ!あとキミはやっぱり無自覚シンドロームだね!」
なんだろう。昨日のことがまるで夢の様に思えてくる。
彼女はもう忘れてしまったんだろうか。それとも忘れようとしているんだろうか。
忘れてしまって…いいんだろうか。
少し、いやだいぶ聞くのを戸惑ったが気になってしまったものは仕方がない。
今の状態なら大丈夫だろう。
「昨日のこと覚えてる?」
「覚えてるよ!ばっちりね!」
どうやら忘れているわけじゃないようだ。
「もうこっちの方が慣れちゃって本人格みたいなとこあるし、無理してまで裏人格を引っ張るつもりもないかなッテ!こっちの方か素直で気楽で居られるし前にも言ったけどもうボクにとっては仮面は顔の一部で民族衣装は身体の一部だからさ!今更外すとかダメダメ!ムリムリ!こっちを貫けばあっちの方が消えてこっちが全てになる日が来るかもしれないし。どうせ社会には出ないし。それに多分ボクには向いてないよ。銀河クン、キミのおかげで吹っ切れたよ!ありがとう!テヘッ!」
「そうか…お前がそう決めたんならもう何も言わない。」
顔は昨日しか見てないけど、なんだが憑き物が落ちたというか清々しくすっきりしてるように見えた。少し寂しい気もするがそれでもこうあって欲しかった気持ちもどこかにあって。やっぱりこの方がお互い気楽で居られる。一見取り繕っているけれど、意外とそうでもない。逆にじつは素顔でいることの方がよっぽど取り繕っていることが良く分かった。
だからボクは私は、これでいい。
この価値のある関係と会話をもう壊したくない。壊す必要なんて
どこにもないんだ。
「どうした?ぼーっとして?考え事か?悩みがあるならドーンとこのボクにブチマケチャッテ!セイ!」
「お前のせいで悩みもどこかへ吹き飛んだわ。それこそドーンってな。」
「なぁんだ~でもよかったぁ。あーでもこれから銀河クンはどうするの?」
「あぁ…それは…」
「やっぱりあるじゃないか!しょうがないから一緒に考えてあげるよ!うーんそうだなぁ…」
「仮面同盟広報部長!」
「えっ!?」
「世界仮面化計画!まぁ、もうある意味なってる気はするけど実際にこうやって仮面を身につける文化はもっと流行ってもいいと思うんだよね!」
「そ、そうだね…」
「なんか乗り気じゃないね?まさかこの期に及んで脱退する気じゃ…!」
「しないよ!もうここしか居場所ないし!」
「そうだよね!これからもヨロシクッテネ!」
「……こっちの方がいいって言っても疲れるのは変わりないんだよなぁ。」
「何か言った?」
「お前の相手は疲れるなーって言っただけだけど。」
「なんでも素直ならイイッテワケジャナインダッテバ!」
私達二人だけの仮面同盟。
他の人にとっては無意味で無価値だとしても。
私達にとっては何よりも大切な世界なんだ。
まぁ、早速そこに亀裂が入りそうで危うしといったところなんだけど…
友達以上恋人未満の不思議な関係。
店長とバイト、親分と子分みたいな。だけどそこに上下関係みたいなものはなくてすごく心地よくて。
どこにもないと思っていた楽園こそがここなのかもしれない。
他の人から見たら闇市場が楽園って頭おかしいとか思われるかも知れないけど、言いたい奴には言わせておけばいいんだ。
だって価値観は人それぞれなんだから。
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