第66話 脱出 『紅蓮』
刹那、横合いから銀扇が舞った。
キンッ!
後と少し…… かなりヤバかった!
『誰だ? 今助けてくれたのは…… 』
今は考える時ではない、意識を切り替えると追撃を振り切るべく行動する。
「角が三本の鬼? 」の剣戟をかわし…… いや、かわし切れてはいなかったが!
『やはり……今の状態では厳しいな 』
自身に課せられた制約に歯噛みする。
本来なら長距離のジャンプを敢行する所だが、もう一箇所確認したい場所が有ったのだ。
あんなヤバイ状況の後であっても、確認せずには要られなかった!
危険度が上昇する行為なのだが……
『あれはヤバそうだ! 流石に確認しない訳にはいかないよな。
それに…… 王都には人が居たけど、それ以外には人の気配がまるで無い…… 』
これは異様な事だ。 これだけの国土を持ちながら、人の気配が王都にしか無いのだから。
高空に浮かびながら眺める。
空は竜種の領域だが、短時間ならば問題はない。
『エルマーと言い…… この国の人間。 いや王族か? 何を考えている! 』
大地には魔法陣が描かれ
ただの祭事である筈が無い、蠢く肉塊…… 腐臭を噴出しながら融合していく。
かなりの上空に居る筈の
そこに蠢くのは
しかも、海に棲まう大型海魔類であるクラーケンやリバイアサンの
『
アレだけの規模と強大な大型海魔類を制御下におくなら、相当数の術者が必要になる筈なのだが、辺りには見当たらない。
対象となる
竜の屍を人の
只人では魔法が破綻し自身に跳ね返ってくる。
竜すら屠れる程の力を、術者自身が備えねば魔法の効力は発現しないのだ。
だが、数に対しては、その前提は覆されるため
屍の力に対して優位であれば良く、屍の数は関係なく、その屍に対して力が勝るのなら、数に上限は無く使役可能なのだ。
ただし、使役可能な数は自身の魔力量が上限となり、対象を
其の前提から考えるに、眼下の状況は異常であった。
確認できる大型海魔類であるクラーケンやリバイアサンが其々二十体は居るのだ。
只人の
『このまま放っておく事も無いな。
一段上げないとキツイか? でもそれが今は限度だ 』
それ以上は本来の姿へと戻らねばならず、それは許されてはいなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
「不味いな…… 」
眼下の魔法陣を眺め一人が呟く。
「だが、今なら何とか間に合うだろう? 」
もう一人が、先端が欠けた銀扇を眺めながら呟く。
「うむっ、たが…… 呼んだ方が良いだろう 」
「仕方があるまいな。 奴らは飛べぬのだから、上空より雷撃を打ち込むか? 」
「今呼んだぞ。 五分もすれば着くであろう 」
「おい! ……先程の小僧が其処におるぞ! 」
「ばかな! あの程度を捌けぬ奴が…… か? 」
「仕方が無い、行くぞ 」
◇ ◇ ◇ ◇
ふと、視線を感じた!
そちらへ目を向けると二人の人影を捕らえる。
『よぉ! さっきは助かったよ 』
「礼には及ばぬ。 それよりも、すぐに此処を離れろ 」
『う~ん。 それは了承できないな。 アレを放っては置けないからね 』
「それには同意するが…… 御主の力では無理なのでは無いか? 」
『良く判るね…… でも、もう少しなら上げられるかなぁ 』
「ならば、早くしろ。 二つほど近づくモノが居るようだ 」
『一人は
「彼奴は我らが抑える。 さっさと片付けろ! 」
『じゃぁ……お願いするよ。 大きな塊打ち当てるから注意してね! 』
「「行くぞ! 」」
二人は近づくモノ……鬼の元へと向かった。
『さてと、逝きますか! 』
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