第54話 この世界の逝く先(下)

 この世界は「ヘイムス・リング」と呼ばれている。

三つの大陸があり北と南には半月状の大陸がある。

北と南の半月状の大陸を繋ぐと円環状になる事が名前の由来だ。


円環の中央に横たわるように大陸があり「ミドルアース」と呼ばれ、エルフを含む人族はミドルアースに住んでいる。


 円環の北側の大陸は「アガルタ」と呼ばれ竜種の領域だ。

南側の大陸は「ウトガルズ」と呼ばれ、大陸中央から左右に分ける形で、西側は巨人種、東側は獣人種の領域となる。

 

 円環の大陸に住まう者達は、人より魔力も力もある位階の高い上位種になり、人族は決して触れてはならぬ者達との認識を持って長い時をすごして来た。


 フレイアの説明は続く。

『特に被害が大きかったのが私達、竜種でした。

どう言った理由かは判りませんが、巨人種と獣人種は位階の上の者が数度襲われた程度で終わったそうです。

そのため、「我等の強さから恐れをなし逃げたのだろう 」と言う意見が大半で、それ以上の調査なども行なわない事になったそうです 』


『それはまた……あの種族らしいな。 

フレイヤ殿、竜種の長達は呆れたのであろうな? 』


白銀しろがね殿、その通りだよ。 

我等はそんな風には考えなかった。 

試したのではないか? と言う意見が大半だったよ 』


「フレイア殿、試したとは……強さをか? 」


『タケル殿の言う通り。 強さを測ったのだと思います。

この星の位階序列は御存知ですか? 』


位階序列? と言う言葉に疑問を向けると、マリアがこちらを見て気付いたのか説明をしてくれた。


「はい、さとるさんにも判る様に説明すると「神に近い者達の順位」と言う表現が妥当でしょうか 」


「神に近い…… 」


さとる殿、神に近い者達の序列になる。

ただし、神の中にも序列があるゆえ、神を一括り考えてもらえるか? 』


白銀しろがねの説明はこうだ。


まず神がいるがその下には

神   

聖霊 竜鬼神

竜神/龍神  巨神  獣神  妖精神/精霊神

竜人/龍人 竜種/龍種 亜竜種/亜龍種 ハイエルフ ダークエルフ

妖精/精霊 エルフ/ドワーフ

巨人  獣人

人種  


※竜神 巨神 獣神 妖精神 精霊神 の中から聖霊が現れる事もある。 

※先祖返りした人間は妖精/精霊や竜人 竜種 亜竜種と同等の者も存在した。

※勇者(遊者)はその者能力次第だが竜人、竜種、亜竜種と同等かそれ以上の者もいた。


妖精から獣人までは誤差程度の順位になり、能力はそれほど離れていないらしい。

稀に飛びぬけた者も居るそうだけど。


中には、本当に極稀・・に「神格化」するものも下位種にいたらしい。

神格化すると聖霊又は神に近い存在になるそうで、遥か昔には人種にも現われたと記録があるそうだ。


『そんな訳でウトガルズの手を借りる事が出来ず、我々アガルタのみで調査をはじめたのです。

油断があった、最強種と自惚れも有ったのだろうっ…… 私が相手の術中に落ち母を奪われたっ! 』

フレイヤは俯き、震える手を鎮めるかのように握り締め、その指の間から血が滲む。


『やつらは、見たことの無い魔術を使う。呪術符や拘束呪とか言っていたが。

白銀しろがね殿は御存じないか? そのせいで我等は捕らえられてしまった 』


『うむ。 聞いた事が無いがな。 

この世界の魔法ではないやも知れぬし、本当の魔法名を言っていないとも考えられるが。

……今のままでは情報が足りぬな 』



『驚異は魔術だけではなかった。 デーモンと呼ばれた者がいた。

其奴は異常に強い。 

竜神の戦士以上に強い。恐らく、竜鬼神と同等か、それ以上。


此方の魔法が殆ど防がれてしまった。


調査中に二体のデーモンが現れ戦士と戦い、我々は敗れた。

敗れた戦士は連れ去られ、それ以降の消息は判らない。

それも、強さを試したと考えた理由。

ただ、その他にも理由があった様に感じるが……思いあたらない 』


「ふ~っ。 これは、想像以上に不味いかもしれん 」

タケルは椅子に深く凭れ掛かり深い溜息をつく。


『その様だな。 エルマーの戦争準備と言い、海を渡る手段も気に掛かるな。

紅蓮ぐれんの調査次第ではアロイス帝国を深く探る必要があるな 』

白銀しろがねも思案顔であった。


「フレイア。 気になった事が有るんだけど、「竜種による蹂躙」ってなに? 」


『……サトル、それについては答え難いのだが 』


『我が話そう。 

さとる殿、この世界の創造主と言えば良いかな? 

その方が決められたルールがあるのだよ。

この世界を害悪に染める者は、創造主の代行者・・・と呼ばれる竜神により滅ぼされるとな 』


「滅ぼす? 」


『そうだ。 滅ぼす……。 それ以下でも以上でもない。 言葉通りに滅ぼす。 

そこに謝罪や代償は無い。 


一方的な蹂躙…… 種の消滅だな。 


その為の手段も持っておろう 』


さとる殿、過去、現在と長き歴史の中にも、その様な事は無かった。 

言わば形骸化した伝説や諺と考える者も多い。


多くの人種はそのような事を忘れた者も多く居る。


 特にその考えが顕著なのが、アロイス帝国であり、エルマー王国だ。

史実にも登場しない脅威に何を怯える! と声高にしているのも二国だけだ 」

タケルが続ける。


「この国は、始祖ヤマトにより、それが事実である事を知った。

隣国のヘルヴェスト連邦もそれを知っている。

ブリタニア公国も…… 恐らく知っているはずだ。


なぜ、ヤマトが知っていたかだが、神と話されたそうだ。


そして託された・・・・と伝え聞いている 」


「託された? 」


『この世界をだな。 ヤマトは託されたのだよ 』

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