第53話 この世界の逝く先(上)
国境から戻ろうと愛車を出したのは良いのだが、困った。
「
フレイアとはお互いに敬称を抜きに呼び合うことにした。
『それは…… 不味いと思うぞ! フレイア殿が一撃死するだろうな 』
『ちょ、ちょっと! サトル!? なに物騒なことを言ってるの。
これに乗るために、小さくなれば良いのでしょ? 』
「そうなんだけど… もしかして小さくなれるの? 」
『この子の魔力量なら……、 大丈夫ね。 すぐやるからちょっと待って 』
そう言うと、
次の瞬間、目の前に小さな女の子が現れた!?
お嬢様バージョンの
元の姿ではなく…… 色々な所が、少し縮んだ???
『・・・・・サトル!? なにやら不埒な事を考えたわね! 』
『ほほおぅ! 特殊魔法か、流石は上位の聖霊と言うことかの 』
「魔法? に聖霊? 竜種でしょ? 」
『我等と同じ聖霊だぞ、空間魔法と聖霊の特殊魔法の複合だな 』
『
「どういうこと? 」
『
車に乗り込み移動しながら説明を聞いく事にした。
フレイアは後部で
『では、空間魔法からいくぞ。
簡単に言うとだな、時空には時間の影響を受ける場所と受けぬ場所があるのだが、
以前説明をしたと思うが、リリスや
そこまでは良いな?
今現在も、本体である聖霊結晶は時間の影響を受ける時空間に存在するが、目の前に居る我も同時に存在しておる。
この実体は聖霊の特殊魔法により顕現しておるのだよ。
当然痛みもあれば損傷もするが、我の場合は聖霊結晶が時空間にあるでのでな、ちょっとやそっとでは死にはしないぞ。
我を倒すには、この実体を通して時空間にある結晶を破壊せねばならん。 かなりの難易度だな。
フレイア殿の場合はそれの応用だが、
『私の場合は、
それと、種族は竜神種で竜種とは
「位階? 竜と竜神? 」
『その辺は落ち着いてから説明するわ、 少し疲れたみたいで……眠い……の 』
そのまま、目的地である首都ヤマトを目指した。
◇ ◇ ◇ ◇
戻って早々マリアに怒られた! 目の前で泣き出されたのには……正直まいった。
現状の説明のために会議室へ移動し、国境での事とフレイアの事について説明をはじめる。
目の前にはマリアさん、サリアさんとタケル伯父さんだけが座っているが、他の武官などは同席していない。
こちらは、
リリスは
マリアの計らいで寝室で
目覚めた時に一人では心細いだろう。
「さて、フレイア殿と言ったか、これは身内の相談事だとでも思って気楽にして頂きたい。
堅苦しいのは苦手でな。 宜しく頼む。
私がタケル・S・ヤマト・ローベンス、タケルで構わない。
真ん中がマリアで端がサリアだ 」
「フレイア様、ようこそ。 気楽にして下さい 」
マリアが告げると、サリアも続く。
「そうよ、気楽にしてね 」
『では、お言葉に甘えさせて頂きます。
私はアガルタ大陸の竜神族の長が娘、フレイア・アース・ヴァルキュリエ、フレイアと呼んで下さい。
先ほど、ヘルヴェスト連邦との国境付近で
そのままなら、恐らく命が無かったでしょう。
その後は、竜種による蹂躙が起こったと断言できます。
色々な意味で三人には救われました。
改めて、感謝を。
『フレイア殿、何があったのだ? 竜神種が人種に捕まるとは考えられぬ 』
「母の敵と言っていたけど 」
竜種による蹂躙!?
『先ずは、事の発端からお話しします 』
そう言ってフレイアが話はじめた。
彼らの種族は北のアガルタ大陸を居としている。
基本的に他の大陸へは不干渉としているが、この世界への悪意に対しては例外であるそうだ。
『今から一年ほど前に事が起きました。 竜種の捕縛…… いや、狩です。
皆、最初の頃は気付かなかったのです。
よもや、竜を狩る
「フレイア殿、竜神種に巨神種、獣神種までもが襲われたと?
馬鹿な! 考えられん、神に挑むのに等しい行為だぞ 」
タケルはその発言に驚きを隠せず問いかける。
『そんな馬鹿は居ない、私達もそう考えました。
きっと他の神族によるものだと。
確かめるために南のウトガルズ大陸へと特使を派遣しました。
しかし、そこで地の神族も襲われていた事実を知ったのです 』
『フレイア殿、1年前と言ったがその間は大きな動きが無かったのか?
あまり世界が乱れた様には感じなかったのだが 』
『
巧妙な結界が張られ、神ですら欺いたのでは無いかと 』
『うむ、それで啓示がなかったのか? 』
『その辺は、他の神族も判らないと 』
「フレイア様。 誰が、何のために行なっていたのかは判ったのですか? 」
マリアが不安げに確認をする。
『首謀者は既にこの世界には居ないのです。
捕らえる前に他の世界へと跳躍してしまったと報告を受けました。
ただ、不可解にもメッセージを残していたそうです。
しかし、扇動者は残りました。
扇動者はアロイス帝国の中枢食い込み、エルマー王国を尖兵にして東を目指しています 』
「フレイア殿、首謀者とは? いったい 」
『他の世界より来た人ならざる者達。 メッセージにはこう綴られていました。
「この世界へは、私達が味わった苦痛の代価を支払ってもらった。
あとは勝手に愉しんでね! 」
詳しくは判りません。
本当の事なのかさえも……。
しかし、このメッセージを信じるなら。
この世界へ混乱を計画した者達はもう居ない事になります。
ただ、確認する手立てはありませんが 』
場に暫しの沈黙が訪れた……。
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