第51話 遭遇
ローベンシア王国は、エルマー王国とヘルヴェスト連邦両国との境界を山脈により遮られていた。
その山脈は東のビフレスト山脈と並び、越境も困難な天然の要壁と評されてきた。
エルマー王国とヘルヴェスト連邦へは、それぞれの山脈に一箇所づつある渓谷を辿るルートがとられるが、エルマー王国側へは相互通行が可能な
ヘルヴェスト連邦との間でも
ヘルヴェスト連邦の国土は七地域に分割されており、六個の国の中央には中央府がある。
六個の国と中央府は隣接し、それぞれの首都とは弾丸列車バレットラインで繋げられていた。
六個の国の中で、ローベンシア王国との国境が接する国は、ニーモ王国と言う。
ニーモ王国の現国王はヘルヴェスト連邦首相の第一皇子にあたり、ローベンシア王国の前国王の甥にあたる。
「と言うことは…… 従兄弟ですか? 」
と、
◇ ◇ ◇ ◇
国境を目前にした辺りから、何かが纏わりつく感じがして気持ち悪い。
なにやら辺りが騒がしいく感じる、騒音がと言うことではなく、雰囲気と言うか気配がだ。
『なにやら騒がしいな 』
「シロ君、この辺りに居る魔物かなぁ? 」
『この感じは、魔物では無いな。 人と…… 弱っておるのか? 気配が弱く、良くわからぬな 』
「人? こんな山奥に住んでいる人が居るの 」
『
すぐには無理であろうが、恐らく人との戦闘に成やもしれぬ。
躊躇すれば命を落とすぞ 』
「人との戦闘に? いやいや無理だから。 一旦引き返そうそうよ! 」
『……仕方が無いの。 一旦引き!? もう無理だ! 恐らく気付かれたな。
覚悟を決めよ! 自身だけではなく、
「ぐっ…… なら、牽制しながら逃げよう! 」
『
だが、危険を感じたら躊躇わずに撃つのだぞ!
「……うん 」
念のために気配関知を使ってみるが、反応が曖昧だ。
ならば、熱源感知に切り替えてみる。
所謂サーモグラフィーである。
AR表示には、人と思われるものが数ヶ所に点在して固まって見える。
「一番密集した場所には……? これも人みたいだけど? 」
「
『
それに微弱だが、人の反応ではなかったのだ 』
「判った。 こちらに近付いて来るみたいだよ。
「……お兄ちゃん? 大丈夫なの? 」
◇ ◇ ◇ ◇
ローベンシア王国とヘルヴェスト連邦の国境付近。
黒装束に身を包み、素顔を隠した怪げな集団がヘルヴェスト連邦の国境を越えようとしていた。
「何を愚図愚図している! さっさと運べ!! 」
「おらぁ! いい加減に大人しくしろ! 」
数人が槍で荷台に載ったモノを小突く
『ぐふっ…… 』
荷台のモノが呻き身動ぎ、隊長らしき者を睨め付ける!
「まだ、諦めぬか?
「「「はっ! 」」」
数名が、
『ぐっ…… がはぁっ! 』
そのモノの両の手足は、鉄杭で荷台に打ち付けられていた。
術が行使されると、その傷口から鮮血が飛び散った!
そのモノの口元が苦悶に歪み、血が滴り落ちる。
隊長らしき者が号令を掛けた。
「後少し内陸まで移動! その後は計画通りの行程で進める。
日没までに移動を完了させ撤収だ! 」
「「「はっ!! 」」」
「辺りの警戒も怠るな! 前進 」
「むむっ!?…… なにやらいる様だ! 四名ほど先行し確認せよ!
今、証拠を残す訳にはいかぬ。
速やかに対処せよ! 」
集団から四名が抜け、気配を辿りながら動き出した。
◇ ◇ ◇ ◇
レーベンシア側の国境へ逃げきれると思ったその時、背後から
咄嗟に銃を向け発砲!
魔物を倒す事は出来たが、その断末魔の咆哮に気付かれてしまった!
『
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