第43話 不作の原因は?
マリアは、
「現状を把握し、分析しなければ対応策がわからない。
その為にもう一度確認をして来て欲しい 」
と、お願いされたからだ。
まずはマリアや
◇ ◇ ◇ ◇
そこには、北海道を連想させる牧歌的な風景が広がっていた。
この辺りの被害は、平均収穫量に対して50%と、かなり悪い状況の場所である。
「これは…… 作物の状況が予測よりも悪いわ 」
水路を見ても涸れている訳ではない。
当然の事だが、土も乾燥し過ぎなどの問題は無い。
「やはり…… 原因が良く判らない…… 」
ファルド・シル・ヤマト・ローベンシュタインは溜息混じりに呟く……
農業関係を統括するのは、以外にも行政府最高議会長を勤めているファルドだった。
「マリアさま、状況は依然悪いままです……
未だ原因も特定できず申し訳御座いません 」
「いいえ、謝らないで。
他の者達も同様の意見…… ファルド、あなたの責任ではないのだから 」
三時間ほど農作物や土地の検証を行なった。
当然、鑑定なども行なったのだが、依然として原因は判明しなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
ファルドさんが農業関係を統括する立場にあると説明され、昨日言っていた「後ほど」の意味がやっと理解できた。
昨日とは別の会議室へ移動し、今までの事と現状について説明をお願いした。
当然、その後には現地へと赴き検証を行う事になっている。
『マリア、今までどういった検証をしていたのかしら? 」
「そうね、その辺りはファルドから説明をしてもらうわ 」
「では。 作物は今の時期に
お二人の世界にも馴染みのある作物も多く御座いますが、これは始祖大和様が持ち込まれたものと記録が御座います。
そのため呼称もそのままなのですよ。
男爵や紅芋、人参や麦などで色々ございます。
来月からは、お二人に馴染みのある
米以外は、耕作地により二期作と二毛作を行なっていますので、収穫後にもう一度作付けを行い、冬の前に収穫します。
また、降雪地では人参等を雪下へ保存し春掘り起こす、雪待ちと呼ばれる物も御座います 」
「作物の育成不良についてですが、現状は例年の五割を下回る予想がでております。
この国では耕作地へ肥料を使用する事で、作物の育成を促進してまいりました。
これも始祖大和様のお知恵で御座います。
現在の状況での予測は、それ以前の収穫水準へと下降している状況です。
当然、作物や肥料と言った物への検査や調査も行ないました。
水質も然りです。
ですが、育成不良の原因が判らないのです。
耕作地の土壌を鑑定すると、肥料などによる栄養素は減少しているのですが、作物の状態は栄養が不足している状態で、供給と消費が矛盾した状況なのです。
作物の健康状態も鑑定では栄養不足としか出ず、病気などによるもので無いばかりか、害虫などによるものでも無い事が判明しております。
情けなく思いますが、現状は原因不明の不作……
としか表現し様が無いのですよ 」
「話を聞いた限りでは、現状の把握のため魔法的な検証も行っていたのですね。 水質や作物の病気、土壌汚染等の原因は見当たらないと…… 」
「そうなのですよ。
数名の検査官が、広範囲に調査を行なっておりますが、皆同様の調査結果でした 」
「マリア、例えばだけど魔力的な育成阻害とか?
そういったものは存在するのですか? 」
「ファルド……、そのようなものに心当たりはありますか? 」
「マリア様、そのようなものは聞いた事が御座いません。
それと、鑑定の結果ですが、魔法的な物は確認されていないのです 」
「例えば、先ほど肥料の話が出ましたがどの様な物ですか? 」
「肥料はエルマー王国より輸入しております。
当然全てではなく半量程度になりますが。
本来は穀物などを輸入していたのですが、相手側も少なからず不作が発生しておりまして…… 代わりに肥料の供給量が倍になっております。
当然、受け入れ時には鑑定による毒素など薬物や品質検査を行なっております 」
話を聞いただけだが、原因が特定できずに困惑する。
ただ判っていたのは、土が痩せ栄養不足になっている事だけだった。
肥料を追加しても改善されなかった様で、水質や薬物による土壌汚染、作物の病気ではなかった。
「う~ん…… 何だろう? 原因と解決策は? 」
通常は土壌や肥料が毒等により汚染されていないか、作物についても同様に毒物汚染を調べるそうだ。
使用する魔法も鑑定で、毒素の有無を確認して終わるそうだけど。
「土壌ですが、そちらも鑑定で調べたのですよね? 」
「そうです。 土壌検査も鑑定を使って行なっています 」
鑑定と分析についても聞いてみた。
分析は意外な事に、食料生産者には使用できる人員が居ないそうだ、商業組合の流通や買い取り部門には鑑定持ちが多く、分析は鍛冶職や研究所などの開発者に片寄っていた。
「魔物の事でも感じていたけど、地球とアプローチが違うんだよなぁ 」
動物にしても魔物にしても、地球の生物学の様に習性以外の解剖学的なアプローチ等が無く、使用する魔法属性と耐性等の討伐に必用な情報で終わっていた。
それに、輸入品に対しての検疫も甘いのかもしれない。
「見方を変えて鑑定以外の方法で検証したら?
試す価値はありそうだ! 」
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