第39話 錬成技術の継承

「では、早速ですが継承儀式の間へ御案内します 」

そう言ってマリアに案内され儀式が行なわれる場所へと向かった。

その道すがら、気になった事を質問した。


「さっきの話で、祖母はエルフと言っていたような気がするのだけれど。

もしかして、俺達にもエルフの血が流れているって事かな…… 」


「そうですよ。

……もしかして、御存知なかったのですか!? 」


「そうなの…… 両親からは何も聞いていないの。

多分、話をする前に事故で亡くなったから、だと思うのだけれど…… 」


「……そうでしたか。 

では、お二人のお母様がエルフだと言うことも……御存知無いのですか? 」


「「はい!? 」」


『なに!? それも知らなかったのか? 

我はてっきり知っておるものと……それで我等を受け入れたと思っておったのだが……

兄妹ふたりとも大分、患っていたと言う事かな…… 』


「「違う!! 患ってないから!! 」」


『『『『「……………… 」』』』』

今更感はあるよね……でも抵抗させてよ!


『う……むっ、そう言う事にしておくかの 』


マリアさんを一目見た時の違和感の正体、母の若い頃に似ていたからだった様です。

マリアさんの母親と俺達の母が姉妹だとは。

父さんは知っていたのかな……。


「こちらが伝承の間となります。

中に入れるのは御二人だけですので、私達はここでお待ちしております。

中に入ると意識へと問いかけがあります。

その声に従って頂けば、儀式は数瞬の内に終わりますから 」


 そう言って案内されたのは、来るとき転移門があった場所と同じ様な造りの中庭だった。

違いは天井が吹き抜けではなく、魔法陣が描かれていた。


 日本の伝統的な様式美の中に不似合いな石柱が置かれ、その高さは天井まで伸びている。

床には天井同様に魔法陣が刻まれていた。

その魔法陣に沿って規則正しく石柱が並べてあったのだ。

良く見ると、石柱にも魔法陣が刻まれている。


 沙弥華さやかと中へ入ると入り口が閉ざされた。

魔法陣の中央へ歩いてゆく……

丁度中心に立つと、意識下へと問いかけがあった。


『祖王ヤマトに連なる者よ、汝は継承を望むか? 

望むならば与えよう深淵へ至る路を 』

……継承? 伝承じゃないのかな。


沙弥華さやか、どうする? 

継承とか言っていて、何かニュアンスが違うみたいだけど 」


「……相手によって言葉が違うみたいよ! 私には伝承と言っているし 」


問題は無いのかな? 

「う~ん…… 兎に角先に進むか 」


「お願いする! この国を手助けする力が欲しい! 」


『その望み承った。 与えよう、汝らの望むものを。 コネクション 』


 上下の魔法陣が発光すると、その光は意思を持つかのように周りの石柱へと流れ込んでゆく。

石柱の中ほどに達した光は、俺達の居る中心に向かって魔法陣を描き出した。

何も無い筈の空間に魔法陣は浮かび上がると、俺達の身体へと流れ込み消えてゆく……。

全ての光が流れ込むと静寂がやって来た。


『……継承は完了した 』

(おや? ……まあ、問題はなかろう。 希望が潰える前に逢えてよかった )


特に何かが起こる事も無く、済んだようだ。

何も変わった気がしないのだけど……。

沙弥華さやか、何か変わった事は無い? 」


「う~ん。 そうだ、称号を確認してみたら? 」


二人で確認をすると称号が変化していた。

俺は「遊者、グランドマスター、深淵の探求者、創造者クリエイター

沙弥華さやかは「遊者、ガーディアン、深淵の探求者、錬成者」に替わっていた。


    ◇    ◇    ◇    ◇


 儀式の後は、マリア達と食事を済ませ案内された部屋で休む事になった。

時間が遅く色々な事で疲れが出たのだろう、朝まで兄妹ふたりはグッスリ眠るのだった。


 翌朝朝食を済ませると、マリアに案内されて錬成工房へとやって来た。

継承された錬成能力を確認しておくためだ。


「こちらが錬成工房となりますが、工房と言うよりは研究所と言った方が馴染みがありますか? 」


そこは俺達が想像していた物とは違い、近代的なラボ? の様な場所だった。


「想像と違って、なんと言うか……本当に研究所みたいですね 」

そこでは、造られた腕や脚と言ったパーツをベンチテストしているみたいで、高負荷耐久試験らしき事や、出力試験みたいな事をしている様に見える。


 作業に従事する人も作業服と言うよりは、研究者のように白衣を纏っていた。

そのまま、マリアについて進んで行くとベット? の様な物が並んだ場所に到着した。


 腕などのユニットをボディーへと組み付ける場所らしい。

幾つかのベットには腕や脚、頭部などの装着作業を行っており、完成した物からベットごと隣の部屋へと移動して行く。


そこでこの施設の責任者を紹介された。

「こちらは、当施設の責任者サリア・S・ヤマト・ローベンス。

私の姉になります 」


「サリアです。 敬称は抜きでサリアで良いですよ 」

マリアの姉だと言う? 

普通は姉の方が王位継承権が上じゃないのかな?


「? あぁ、私が王位に付かない事に疑問がお有りのようですね。 

簡単に言うと、資質優先なんですよ。


始祖ヤマトの教えで、適材適所は物事の基本で間違うと国の崩壊にも繋がりかねないと。 私はどちらかと言えば現場や研究など、魔道騎士シュバリエ製造の方が適正が高かったので。

正直……王位など面倒ですから 」

疑問が顔に出ていた様だ、サリアさんは笑いながら話してくれた。


「……ほんと、姉さんが継いで下さったら良かったのに 」

とマリアがこぼす。


「まぁ……マリアったら! 今のはオフレコでお願いしますね 」


と笑いあっていた。 

兄妹の仲は良いみたいです。


マリアからサリアに案内はバトンタッチされ、製造工程へ案内される。

ちょっと秘密工場みたいでワクワクするよね。 


あ、秘密工場だったね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る