第28話 「ヘイムス・リング」と言う世界と富士宮焼きそば
はじまりは、リリスと俺だけだった異世界への冒険。
今は、
あえて、家族と誰へとも無く宣言をしてみる。
皆には伝えていないが、これは本心だ。
ワールドマップの開放と、大凡の世界観の説明の後は昼食をとった。
今日の昼食は軽く済ませる事にして、お手軽な焼きそばにした。
ただ、普通のではなく、B級グルメで有名になった静岡県の「富士宮焼きそば」である。
俺も、
ただ、世に認知されている作り方と我が家は少し違っている。
元々の麺が、普通の蒸し焼きそばとは比べ物にならないくらいの
だが、あの硬い食感が好みなので蒸し加減は半分位で抑えるのだ。
当然フライパンではなく厚めの鉄板を用意していた。
これは、廃業した焼肉店より譲り受けた厚さが六mmある良い物だ!。
蓄熱性も良く肉料理にも持って来いだ。
よく熱した鉄板にラードと一緒に「焼きそばの友(肉かす)」を刻んだ物を投入し炒める。「焼きそばの友(肉かす)」とは、豚肉や豚脂の揚げた物だ。
次は、予め刻んでおいたキャベツと豚肉を程よく炒めたら、麺を加える。
少量の
最後に、同じ製麺所から発売されている「焼きそばソース」で味付けして完成です。
調味料は塩コショウも使いませんねが、「焼きそばの友」と「ソース」と蒸し用の「
普通は水やお湯で蒸すだけですよね。
この
昔食べた静岡の駄菓子屋「戦国屋」さん、其処の焼きそばが凄く美味しかった。
当然、静岡おでんも美味しかったよ!
しかし、閉店する事になり非常に残念に思った。
御主人に「ここの美味しい焼きそばが、食べられなくなるのは寂しいね」と話すと、秘伝の
普通に水で蒸していると思っていたら、薄めた
ほのかな鰹や昆布の甘みが、麺に染込むゆえの美味しさだったのだろう。
焼きそばを皿へ盛り付ける。
麺の横では目玉焼きを焼いており、半熟になったところで焼きそばの上へ載せる。
最後に「だし粉」を振りかけて完成です。
お好みで紅しょうがを載せてもいいが、我が家は無しの方向だが「だし粉」は絶対に外せない。
静岡市のお隣の焼津市は、全国でも有数の鰹節の生産地なんだよね。
鰹の歴史は大変古いそうで千四百年以前にまでさかのぼるそうです。
「焼津が鰹節作っているのも関係するのかな? 」
もう一つが鰯の削り粉、静岡の名産である黒ハンペンは鰯や鯖のすり身で出来ています。その辺の関係もあるのか? 「だし粉」と言うと鰹と鰯や鯖の物になるようです。
配合はメーカーや地域により微妙に違ったりしていて面白いですよ。
俺的には、青海苔が入っている物がおすすめです。
兎に角、「だし粉」は「静岡おでん」や「焼きそば」「お好み焼き」には欠かせない物になっているのですよ。
出来上がった焼きそばを皆で頬張った。
『サトル
『そうねぇ。 哲は料理が上手よね 』
『沙弥華殿も上手ではあるが、哲殿はその上をゆくな 』
『マスター、この焼きそばは何時食べても美味しいのです。 特にこの「肉かす」は最高なのです 』
「昔は三食作ってもらっていたのよ。 学生時代からキッチンには良く立って居たわよね。
今後も、私は
「……沙弥華、それは駄目です! 花嫁修業も有るんだよ!? 一食は義務だからね 」
「え~!? まだお嫁に行かないし! 良い相手もいないのよね~っ 」
『
「いいの、めんどくさいから。 会社の人もね……何か違うのよね……。
いっそお兄ちゃんをお嫁に貰えばいいのかな!
家事もお任せだし、お給料も持って来るし!?
それなら、問題無いわねぇ~!!! 」
「おい、俺は家政婦かな? しかも
皆で笑いあった。
そんな他愛の無い話に安らぎを感じている自分がいた、リリスからはじまり六人家族になった。
一人また一人と増えていく、新しい家族と過したこの一年が楽しかったからだと思う。
◇ ◇ ◇ ◇
食事も終わり、この世界の話を始める
『では、この世界の事についてお話させて頂くのです。
まず、この世界は「ヘイムス・リング」と呼ばれているのです。
三つの大陸があり、北と南には半月状の大陸があるのです。
二の大陸を繋ぐと
円環の中央に横たわる様に「ミドルアース」と呼ばれる大陸があり、今居る「風の国」はミドルアースの中心にあるのです。
それは言い換えると世界の中心に位置する事になるのです 』
『まず、
其々に特徴を持つ五つの国があるが、先ずは「風の国」と唯一接し、ここから南西に位置する「ローベンシア王国」に行こうと思っておる 』
「シロ君、そこはどんな国なの? 」
『人族領では二番目に小さい国土を持ち、東方にビフレスト山脈が聳えておる。
この「風の国」との国境はビフレスト山脈により寸断されており、北はエルマー王国、西にはヘルヴェスト連邦と国境を接する国だな。
高速鉄道でエルマーの首都と繋がっておるが、ヘルヴェスト連邦とは繋がってはおらん 』
『ローベンシア王国は魔道工学や練成学で発展した国なの。
特に地球で言うロボット工学に特化した国ね。
他には特殊な鉱物資源を持っていてそれを輸出しているのよ 』
「ロボット? 例えばゴーレムやほホムンクルスみたな? 」
『そうね、近いと言えば近いけど、もっと地球のロボットに近いと思うわよ 』
『マスター、国土が二番目に狭いと言いましたが、人の生命活動に適した土地は一番少ない国なのです。
従って、人の踏み入る事の出来ない場所で作業をするために、必然的にその方向へ進歩していった国なのです。
国民の数も少なく、一部の兵士は
「凄いわね!
『うむ、そうでもあるし、違うとも言えるな 』
「それは何でかな? そんな凄い科学……魔道工学が進んでいるなら、生活水準は高いんじゃないの? 」
『その辺がこの世界の暗い部分だな。
それほど広い国土は無く、産業が鉱物資源と海洋資源のみの国。
農耕する場所は少なく、厳しい気候により穀物は殆どが輸入に頼っておる。
海洋資源と言っても、海の魔物は巨大な物が多く沿岸部だけでの操業になる。
そう言った意味では、ジリ貧の国なのだよ。
また、悪い事に
表向きは中流の国家だが、最下層に近い経済状況だな 』
「仲が悪いのは、鉄道で繋がっていないヘルヴェスト連邦なのかな? 」
『サトル
下心があるから
「シロ君、そんな経済状況じゃ治安も良くないんでしょう? ちょっと心配だなぁ 」
『その辺は大丈夫だろう、皇女が中々の切れ者でな、国民の信頼も厚いのだよ。
ただ、疲弊しておるのも事実でな、その辺も含めて最初の訪問地としたのだが。
それに、御主達に一番必要な物がこの国にはあるのだから、それを手にするためには避けては通れぬよ 』
「必要なもの? 」
『そうよ、この「風の国」に足りない労働力。
哲の称号「探求者、技巧士」はね、彼らの作る
「そんなに簡単に教えてくれるのかな? 」
『その辺は大丈夫よ、心配しないでいいわ 』
既に逃げ場は無しね……仕方ないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます