第13話 連休④

 お風呂あがりに棒アイスを花楓と二人で私の部屋で食べながら、話をした。

「ベッドにはこぼさないでよ。」

「白いのでシミになっちゃうもんね。」

「・・・・。」

「ああ、ごめん。なんでもない。もしかして結衣ってこういうネタって疎いの?」

「こういうネタ?」

「わかった。せっかくだから教えてあげる。」

「なに?」

「まあまずは食べなよ。これからたっぷり教え込んであげるからさ。」

 私は花楓に言われるがままにアイスを食べきり、残った棒をごみ箱に捨てた。花楓の分も渡されたのでついでにそれも捨てる。それから、花楓がポンポンっとベッドをたたき、私はそこの花楓の隣に座った。

「私も誰かとやるのは初めてなんだ。あ、ちょっと待って。」

 と、花楓が立ち上がり、部屋の鍵を閉めてきた。

「お待たせ。それじゃあ、結衣、男子はどんなことが好きなのか知ってる?」

「男子が好きなこと?・・・・競争とか?」

「うーん・・・これは重症だ。結衣は男子から何か視線を感じたこととしなかった?」

「私は影が薄いからね。」

「わかった。じゃあ直球でいかせてもらうね。」

 花楓は私の耳元に顔を近づけてささやいた。

「あのね、男の子はね。えっちなことが好きなの。」

 それを聞いて私は顔を赤らめた。

「で、でも男子じゃなくてもそういうのが好きな女子もいるよ。」

「うん。そうかもね。でも、たいていの男子は女子とそういうことしたいっておもってるはずだよ。」

「じゃあ、花楓はもうやったことあるの!?」

「いやいや、さっきも言ったけど私も誰かとやるのは初めてなんだって。」

「ん?ちょっと待って。それって今から私とやるの!?」

「なんだか結衣のこと見てると、かわいがってあげたくなっちゃうな。あまり大きな声は出さないようにしてね。」

「えぇっ!」

 花楓は私をベッドに押し倒し、私の上に乗ると私のパジャマのボタンを外し始めた。私は全身が沸きだつように熱くなり、虚ろな目をして何もしなかった。胸に花楓の手があたり、しばらくしてから花楓の手は私のズボンのなかに入り込んできた。活発だけど姉のように優しい花楓の温もりに包まれていく感じがした。


 結衣はそのまま気持ちよくなって眠ってしまったので、私もこれくらいにしておいてやめた。初めてのわりには指のとおりがよかったような気がする。もしかして結衣は結衣が知らないときに何度かやってたりしてたのかなぁ、と思いつつそれは無いかなといろいろ考える。それとも私みたいにときどき一人でしてたとか?いや、それもないか。だって、こんなにすぐになるわけないもんね。それにしても結衣は変わらずに外見が小さくてかわいいな。今だってこんなにも気持ちよさそうに寝ているし。本当にずっと私が面倒を見ていられたらいいのに。そう思いながら私は後始末をして、最後に結衣に布団を被せると、消灯して自分の部屋に戻った。



 翌日。朝起きると、なんだか汗っぽかった。こんなに寝ている間に汗をかくものだっけか。・・・・いや、違う。私は昨日の夜のことを思い出した。そのことを考えると再び身体中が熱くなる。自分の体のあちこちを触って確かめてみると、パジャマはちゃんと着てあった。きっと花楓が直してくれたのだろう。まずはシャワーを浴びてこようと部屋を出る。すると廊下で実乃梨さんにばったり会ってしまった。

「おはよう、結衣ちゃん。昨晩はよく眠れた?」

「え、ああ、はい。でも汗をかいたのでシャワー浴びてきます。」

「じゃあ私は朝ごはんを作ってるから、できあがるまえには下にきてね。」

「わかりました。」

 昨晩とか訊かれると心臓に悪いけどなんとか乗り切った、と思う。ただ実乃梨さんは長年一緒に暮らしてきた親代わりとしてはすばらしいものをもっている。もしかしたら、昨日のことは知っているかもしれないし、私がそのことを知ってほしくないということも察しているかもしれない。何にしてもこれ以上はどうしようもない。

「さっさとシャワー浴びてこよう。」

 浴室に近づくと、ドアの向こうから音が聞こえてきた。そして、そこにドアが勝手に開いた。そこにいたのは全裸の花楓だった。お互いに顔を見たまま固まる。まばたきを何度かした後に花楓が口を開けた。

「ああ、ごめん。結衣もシャワー浴びたいよね。私はもう終わったから入っていいよ。」

「あ、うん。」

 そして、私はパジャマを脱ぎ、花楓は下着を身につけていった。私はそそくさと服を全部脱いでしまってシャワーを浴びにお風呂場に入った。シャワーを浴び始めるとドア越しに花楓が話しかけてきた。

「結衣!」

「何?」

 動きをとめて耳を傾ける。

「昨日はごめん。やりすぎた、と思う。」

「う、それはもういいから。とりあえずなかったことにしておいて。だって、恥ずかしいし。」

「え?最後なんて言った?」

「なんでもない。とにかく私は大丈夫だから、このことは内緒ね。」

「うん。わかってる。それじゃあ下で待ってるから早く来てよね。」

「うん。」

 こうして、一連の件はシャワーの水とともに流れ、私たちはいつものようにその日を過ごした。

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