第2話 普通の友達

 告白されてOKの返事を出してから一日が経った。つまり、翌日である。大学ではまだ何の科目を履修するかを決めていないので今は興味のある科目が講義している時間に学校にいく。一週間のお試し期間を経て履修申告をするとようやく自分独自の時間割ができる。一時間目といっても大学での一時間目は高校までに比べてまあまあ遅い時間に始まる。だから、朝起きて慌ただしく支度をする必要はない。高校と違って落ち着いて朝を過ごせる。軽く作った朝食を食べて、歯磨きをし、顔を洗う。それから着替えて、大学にもっていく荷物をそろえる。すべての準備が完了したら大学へ向けて家を出た。ちょうどそのときにスマホの通知音が鳴った。さくらさんからのメッセだった。一緒に行きましょうってきた。じゃあどこで待ち合わせ?って送ったら、ここってきた。ここ?アパートの階段をおりる。すると、一階の部屋からさくらさんが出てきたところだった。

「さくらさん!?」

「おはよう、ゆいちゃん。実は私の家ここなの。」

「えぇぇぇ。そうなの?だって昨日途中まで一緒に帰って、私こっちだからって。」

「それは夕食を買いにスーパーに。」

「え、その前に私がこの上に住んでいること知ってたの?」

「そうだよ。実はゆいちゃんがここに引っ越してきたときに見て惚れちゃったんだよね。」

「ああそうか、そういえば私もぎりぎりに引っ越してきたからあいさつするの忘れてた。ごめんなさい。」

「ふふふ。もういいよ、こうやって一緒にいるんだから。ゆいちゃん、はやくも敬語じゃなくなってるね。」

「あああ、ごめんなさい。」

「いいんだよ、そのままで。だって私たち付き合ってるんだよ。」

「あ、うん。で、でも、それはその、私が一緒にいたいから・・・なので、ええと。そういう意味では・・・。」

 だんだん声が小さくなっていく私をさくらさんは笑顔でいう。

「大丈夫。私はゆいちゃんのことが好き、だから。怖くないよ。ずっと一緒にいるから。」

 さくらさんの笑顔はまぶしかった。直視できずに目をそらす。そしたら、ぽんっと頭をなでられた。それでさくらさんと目が合う。さくらさんはずっと笑っていた。その笑顔に私までにこやかになる。

「そろそろ行こうか、ゆいちゃん。」

 私はうなずくと、頭から手が離れた。二人は並んで歩き出した。まだ気温は低くて風が冷たい。だけど、さくらさんと並んで何かを話しながら歩くと心から温まった。

 だいたい最初の講義はガイダンスで終わる。だからこの一週間はゆるいはずだ。でも、英語が週4である。私は英語が苦手。この先授業についていけるか心配だ。さくらさんとはずっと一緒に講義を受けて、お昼も一緒に食べて、帰りも一緒だった。講義中は話せないから、となりに座っているさくらさんはちらちらとこっちを見てくるのが気になった。そしてこう一日中一緒にいて話していると、話すことがなくなってくる。はじめは高校までのことをお互いに聞きあっていたが、あまり思いつかなくなってしまって、一週間が経つと、話が続かなくてお互いに無言になるようになった。もともと私も人とあまり多く話す人じゃないから、どうしたらいいかわからない。

 一週間というお試し期間が終わり、履修申告をする期間に入った。大学の近くのカフェで何を履修するか相談した。

「どの科目を履修しようかな~。」

 さくらさんが注文を済ませた後に、手足を伸ばしながらつぶやいた。

「ん~。大学のいいところって、自分で好きな時間にいけるってところだから・・・休みを一日くらい増やせないかなあって思うんだけど。」

「なるほどー。それはいいね~。思い切って月曜日か金曜日のどちらかを休みにして3連休にしちゃおうよ。」

 Vサインと笑顔でさくらさんは私の顔に近づく。そのときに注文した

 飲み物やケーキが運ばれてきた。だから、さくらさんはすぐに顔をあげてスペースをあける。店員さんがあいたテーブルの上に並べて去っていった。私たちはまずドリンクを飲んだ。

「じゃあ金曜日のほうがいいんじゃないかな、休みにするとしたら。食べ終わったらパソコンでやってみよう。それでどうなるか見てみよう。」

「よし、そうしよう。」

 そうして私たちはケーキを食べ始めた。私は普通にいちごのショートケーキをさくらさんはフルーツタルトを食べた。

「う~ん~。やっぱりここのフルーツタルトはおいしいね~。これが初めてだけど。」

 さくらさんは幸せそうだった。うん。こっちもいちごとかクリームがおいしい。ケーキは味わっておいしくいただいた。

 さて、食べ終わったら、皿をよけてパソコンをテーブルの上にだした。そしたら、隣の席にさくらさんが座ってきた。私たちは同じ画面を見て、履修科目について考えた。その結果、私たちは同じ科目を履修し、金曜日を休みにして三連休を作り出した。

 そして、月曜日。授業が始まった。私たちは月曜日は一コマ目から5コマ目まである。一週間で1番コマ数が多いのがいきなり週の始めにある。これも三連休を作るため。今日の午前中は二科目とも経済に関するものだ。似たようなことが二コマ連続で聴く。でも、これは逆に試験のときに楽かもしれないと、さくらさんと話した。お昼は学食で二人で食べる。午後一は英語。しかも単語テストまである。私たちはご飯を早めに食べて、テストの用意をした。単語テストが終わると、どうも眠くなってしまう。うとうとしていると、隣のさくらさんが当てられ、そこで意識が戻る。でも、肝心の当てられた張本人が完全に寝ている。私はさくらさんの肩を軽く叩く。でも起きない。次は身体を揺らす。それでようやく起きた。当てられていることと答えることを教える。さくらさんは慌てて私が言ったことを答えた。

「ありがとう。」

 と小声で言われる。私は軽く頷いた。そんな風に眠いゴールデンタイムをやり過ごし、次の授業に向かった。次は情報っていう科目。場所はコンピュータルーム。だけど、場所が分からないでいた。そこで私たちは見たことのある同じ学科の人を探して、その人たちの後を付いて行った。それでなんとかたどり着くことができた。情報はパソコンを使った授業で、楽しい。だから、あっという間に終わった。そして、本日ラスト5コマ目は現代の問題について考える授業だった。私たちはスマホをフル活用してニュースを読み漁り、情報を収集した。そんな感じで本日すべての授業は終わった。

 その後は学食で夕食を食べて、帰る。ところが、さくらさんが私を引っ張ってどこかに連れていった。そこは人影のない食堂の裏側だった。さくらさんはそこでカバンを置き、いきなり私に抱きついてきた。

「うわぁあ。」

「ねえ。1日1回、こうやって抱いて、それから、キス、しよう。」

「え、ええ。」

「逃げても無駄だよ。だって今、抱きついてるんだもん。」

 耳元で囁かれ、身震いがする。そして、そのまま私はされるがままにさくらさんとキスをした。やっぱり身体全体が熱くなる。さくらさんが離れたあとでもドキドキが止まらない。私はそれを隠して、顔を合わせずに手を差し出した。

「もう、帰ろっ。」

 それを言っただけなのになぜか顔がもっと熱くなった。

「うん。」

 とさくらさんが手をとり、私たちは恋人のように手を繋いで二人がするアパートへ帰った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る