第31回サイレント・サマー・アフタヌーン

ドアはドンドン叩かれているが、きみ悪いのでベータは応対はしなかった。


インターホンの映像にはもう誰も映ってはいない。


朝からやかましいこと。


今日も映画“オーバー・ザ・サマー・アポカリプス”の撮影だ。


撮影は終盤に向かっているが、スタッフとしてベータが見る限りまだカオスだ。


ベータは9時には絵里江さんのマンションを出た。




天国口高校の校庭は夏休みとはいえ活気に満ちてる。


今年は甲子園への夢は叶わなかったが、野球部キャプテンの彩蓮豪太は次の大会に向けて構想を練っていた。


キャッチャーの花咲と投手が出来そうな選手を考えていた。


1年のファースト剛力富利は彩蓮と花咲の話し合いに参加。1年生とはいえ自分の意見を持ってる剛力に彩蓮は感心していた。


1年は剛力同様気骨のある部員が多い。この猛暑が若者たちを鍛えているんだろうか?


もう昼12時近いが、熱中症警報は鳴らず、いつもより涼しい昼休みになりそうだ。



視聴覚委員の枝野光輝はいつも入り浸ってる野比が休んでるので、カレーパンを食べながら、選曲していた。


しかし部室中にCDが散乱してる。ジャンル分けしてるのは分かる。


ミーハーな枝野は「鉄板いこう、鉄板」そう言ってプリンスの「PURPLE RAIN」を流す。


情感的なギターが流れ、希林直美先生は思わずニヤリとする。


ビール狂の浦兼先生は反応して「誰の曲なんですか?」と聞く。


「あんたこの曲聴くの初めて?」希林先生は意外そう。


「聴いたことあると思うんだけど……ああ若いうちに亡くなった人ですね、名前が出てこない、なんだっけ?」


「プリンスよ」


「そうだ、プリンスだ、マイケル・ジャクソンとカブるんですよね」


構内にプリンスが流れる。校庭も昼休みで生徒もほぼいない。空は曇ってきた。





作家になる夢を諦めきれない北島守は今日も机のパソコンに向かっていた。


夜勤のバイトまで時間はあった。妻の旧姓野上薫子はまだ仕事から帰って来てない。


色んな所へ自分の小説を持ち込んだが、どこもかしこも反応は鈍い。しかし断わられる分だけ闘志は湧いていた。諦めてなるものかとひたすらキーボードを打つ。


夜9時頃北島薫子は帰宅。「ただいま」


守は振り返って「おかえり、夜飯作っておいたよ。俺そろそろバイトだわ」


「夕御飯ありがとう。ありがたくいただくわ」


薫子はひたすら夢を追い続ける守は否定しない。お互いまだ24歳である。ただ現実主義者の薫子にはかなり歯痒く感じる。


守はバイト以外はほぼパソコンの前に居る。ほぼ会話らしい会話をしばらくしてない。薫子はやはりいつもと同じようにため息を一つ付く。





月にいるアルテミスはアポロンからの連絡を受けている。


「その彗星は本当に地球に衝突するの?」


「まだ分からない」


アポロンは一呼吸置いて「衝突させないようにするのが我々の役目だろう?」




2020(R2)3/15(日)
















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