第30回ドライヴ
8月13日(土)
「お待たせ」
そう言って天津玲奈は古着屋から出てくる。
欅坂蓮次郎は夏物の白いセーターに薄手の赤のロングスカートを着けてる玲奈を見て、センスがいいなと思う。
「よく古着屋でそれだけのものをコーディネート出来たね」
「掘り出し物見つけるの得意なんだ。あたし」
そう言って玲奈はポーズを取る。
「Wの悲劇か……」蓮次郎は聞き取れないつぶやきをポツリ。
「え?なんの悲劇?」玲奈は蓮次郎を見上げ、腕を組む。
「いや、なんでもない。昔観た映画の一場面を思い出した」
「映画?ふーん、そんなに絵になってた?」
「うん、見事に。君は美しい」
玲奈は呆れ顔で「また、衆人環視でこそばゆいこと言う……」両手を広げて、おージーザス。
「さあ、イスカンダルでも目指そうぜ」
蓮次郎は歩き始める。
「世界は近いうち終焉を迎えるよ」
ベレー帽の男はMr.Zに向かって吐き捨てるように言う。
「アンドロメダのお使いが来るのさ」
目と鼻を帽子で隠し、口元だけ笑ってる。
ベレー帽の男の前で立ち止まり、再び麦わら帽子の少女は足早に立ち去る。
「やれやれ、嫌われちゃったな。なあ、大きな番人さん、なんで俺がこんな情報を知ってると思う?」
ベレー帽は口元をまた歪ませて
「俺が人間じゃないからさ……人間を超えてしまったのさ」
8月14日(日)
ベータは朝6時半に目覚める。
冷蔵庫の中には長期保存が可能な食品に溢れていた。絵里江さんが買い置きしてくれてたみたいだ。
冷凍ほうれん草と冷凍ピラフをレンジで解凍し、さばの味噌煮缶と一緒に食べる。
充分腹は満たされて、パソコンでニュースを見る。
絵里江さんはなぜ予告もなく旅に出たのか?もともと変わった子だったからなあ……我道とのことを気にしているのか?いやそんなに懐の小さな子じゃない。でもこのまま帰ってこない可能性だってあるものな。
一気に女運無くした気分だ。
パソコンを見ながら、ボーッとしてたら、玄関のドアを「ドンドン」と強めに叩く音がする。
時計を見ると午前7時過ぎ。
こんな早い時間に誰だ?しかもオートロックのマンションのはずだろ?
2017(H29)9/28(木)・2019(R1)12/14(土)
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