第47回月に迎えし眠り姫
月にいるアルテミスは連絡を受ける。
「アポロン、岸森明日菜がやっと捕まったらしいよ」
アポロンは腕を組み、「我道幸代は未だ行方不明か……冥界にでも迷い込んだんじゃないか?」
3年A組の高橋・サファイア・ライト・里見は栄華武蔵の番号を着信拒否に設定した。もうあの人はいいや…1年の剛力和利に対する想いも薄れてきてる。
煮え切らない男ばかり……あたしって飽きっぽいのかな?正直大学進学も面倒臭い。
誰かのお嫁さんにでもなるか?でもなあ結婚するのは早すぎるよな。あ~あ~日本のどこかに~私を待ってる人がいる~……なわけないよね。
ああアンニュイな私……ファミレス・ジョナサンでひとり想いに沈むサファイアであった。
野上薫子は2学期初日から学校に進学を断念して就職する意志を伝える。
「あなたみたいに勉強が出来る子が進学を諦めるのはもったいないけど、色々家庭の事情があるのよね。先生は応援するわよ」汐留先生は力強く野上を讃えた。
ママハハ知代とその連れ子省吾には2度と会いたくない。
父が家を売却するつもりらしい。あの家にはいい思い出が少ないので、好都合だ。
父は新しくマンションでも借りて一緒に住もうと言ってくれてる。
野上は一人暮らしをしたいと思っていた。なにせこの一か月半はネットカフェかカプセルホテル住まいだ。一人でいることの自由度に慣れてしまっていた。
一人でいるというのは一見孤独な印象を受けるが、いつでもどんな時間でも自分の好きな事を120%楽しめるのだ。これは一人暮らしの孤独の代償としても余りある。
あと北島守の存在も野上にとっては比重が大きくなってる。
昔から知ってるから意識はしなかったが、これだけ頼りになるとは思わなかった。
だが最近の北島は以前に比べても明らかに良い方向に変わってきてる。
学力テストで7位になったことで学力面はもちろん、男としても自信をつけてきた。1年前のままの北島だったら多分恋人にはならなかったと思う。
早く働き始めて、自分の自由を取り戻そう。仕事に就くことがイコール自由になるとは限らない。今の日本の雇用状況の厳しさも知ってる。
とにかくこんなフラフラした毎日とはおさらばしたい。そういった意味も含め自由になりたいのである。
大学推薦入学を勝ち取った三日月易郎は毎日のように父哲馬の仕事を手伝っていた。「お前はなかなか要領がいい」と易郎を褒めていた。
これなら大学を出て社会に出ても安心だ。哲馬は感慨深かった。
夏休み中は仕事が休みになるとかならずレンタル屋で10枚くらいDVDを借りて観ていた。運動不足なので、夜のウォーキングを始めていた。
三日月易郎は毎日が新鮮で楽しくてしょうがなかった。ガールフレンド問題もそのうち解決するだろう。
ベータは教会からビジネスホテルに戻って、携帯で我道と連絡を取ろうと思ったが、予想通り繋がらない。
今夕方4時半。ふと窓見ると霧が薄くなってるのに気付いた。早速外に出てみた。ビジネスホテルの回りの建物がうっすら見えるくらいで、道の先はまだぼやけてる。車を見かけないが、この状況で車を走らせる命知らずはいまい。
道を進んでいくと、ハリーポッターみたいなレンガ造りの建物が多い。それでも何日か前に比べれば、霧が薄くなってきてる。
そのうち広場に出て、金属で出来た建物の骨組みのようなものが放置されていた。
ボロ宿屋に泊ってる夜河満男は岸森明日菜が3時間近く戻って来ないので、受付に行ってみた。
受付の主人は「ああ、お連れの御嬢さんなら先程黒い車に乗った人達と話してて、どっか行っちゃったみたいですね……」
黒い車の男?まさか連れて行かれちゃったとか?夜河は慌てて部屋に戻る。
後部座席のレッドは「噂通り堂が座ってるねこの娘は……拉致されたってのに居眠りを始めやがった」
「本人は拉致されたとは実感してないんだろ……多分」助手席のブルーは無精髭に触れながら岸森の眠り姫顔を拝む。
2016(H28)4/16(土)・2019(R1)11/20(水)
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