第15回人生の一日
7月24日(木)
3年A組の教室では浅利恵子と深津時枝、遠藤くすみ、大松稲太郎と大貫敏夫の4人と補習の必要のない学年1位の我道幸代がいた。
大松は柔道部の下っ端。典型的劣等生。大貫敏夫はアニメ同好会の部長アニメ以外興味なし。勉強そっちのけ。
我道は2日続けて遠藤くすみに英語を教えていた。校庭から蝉の鳴き声が響いている。
英語教師希林直美は34歳の独身。伊藤シャドウに惹かれてる。結構イケてる美形だが、わざと地味なファッションでオーラを押さえてる。
月ノ輪哲郎と少しカブる。人から注目されるのを極端に嫌がる。伊藤シャドウには相手にされてないんだろうな……という自覚はある。
立川で何度か我道幸代と一緒の所を目撃してる。我道に嫉妬を覚えたが、あまりにもお似合いの極的美形カップル、道行く人々がかなりの頻度で振り返る。
希林はすぐビルの陰に隠れたが、何で教師と生徒の禁断?の2ショットを前にして自分が隠れなきゃならんのか?情けなくなってきた。教頭にチクれば伊藤シャドウもただではすむまい。
浅利と深津はやる気ないし、大松と大貫もぼーっとしてる。我道は遠藤に勉強を教えてるが、たかだか18歳のガキに34の私がなんで嫉妬を覚えるのか?合点がいかない。
暑さと生徒のやる気のなさに希林も大分イライラし始めてる。
一方本来なら補習を受けなければいけないはずの高橋・サファイア・ライト里見には梶五十歩がまとわりついていた。
「なあ、機嫌直してまた元に戻ろうぜ?」
サファイアは向き直り「あんた、傍から見たらストーカーだよ」
ハーフ美人、サファイアはなぜか今日も美しさを増していた。
梶五十歩は見とれ取る場合じゃないんだよなと自分に言い聞かせる。
先に早足で背中を向けるサファイアの魅力的肢体。
「なあ、待ってくれよ」
おまわりさんが前から自転車で来たので、サファイアは「あの男が追いかけて来るんです」と言う。
梶はギョッとして逃げ出す。おまわりさんは梶を追いかける。
サファイアは「ふっふっふっ」勝ち誇ったように歩き出す。
夕方3年B組初音君也はこないだ宝田舞音とのキスの感触を思い出していた。あの後喫茶店に入るが、舞音は泣くだけで何も言わない。栄華武蔵と何かあったのか?
いつもつるんでる3年A組の慶事紀之は初音の目がうつろなので「おい。君也暑さでやられたのか?」
初音ははっとして「いや大丈夫」考えてみれば妹みたいな目でしか見ていなかった舞音とキスしちゃったんだから、こりゃ只事じゃ済まない。
「いたぞ、いたぞ」初音と慶事はパパラッチ癖で、白昼堂々と一緒に行動する伊藤シャドウと我道をスマホで撮りまくった。
実際天国口高校ではこの2人のことはかなりの人数が認知してる。今更写真を公開した所で面白味はない。
「まったく、新任教師と校内ナンバーワン美少女の堂々たる2ショット。これをあのハゲ教頭に見せたらどんな反応を見せるのか」慶事はソイジョイをかじる。
初音はまったく上の空だった。宝田舞音のことばかり考えてる。サファイアにフられたばかりだってのに俺も節操がないな……。
7月25日(金)
我道は伊藤シャドウの部屋で朝食を作っていた。スクランブルエッグをつくっていたら、伊藤シャドウが後ろから抱きすくめてきた。
「センセ、料理できないよ」
「…………」
「子供みたいね」
「…………」
伊藤シャドウは我道から離れ新聞を読み始める。
2人は無言で朝食を食べる。
伊藤シャドウはこの子は俺のものなんだろうか?なんか実感湧かないよな。
食事が進まず、我道をひたすら見つめてる。
「どうしたの?センセ?」
「お前の美貌に見とれてた」
「ふ~ん、まあいいけど」
朝8時半に2人はマンションを出て、駅前へ向かう。
月ノ輪哲郎は2人の事を確認して、後ろにいるオールバックにサングラスに黒いスーツの男と黒いバンに乗り込む。
2015(H27)5/2(土)・2019(R1)11/12(火)
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