第14回Heartbreak Summer Days
7月22日(火)
うだるように暑い日々が続く。3年A組学級委員野上薫子は天国口高校へ向かっていた。
同じく3年A組学級委員北島守はもはやストーカーと化していた。野上の気持ちより自分の気持ちが優先。
電信柱に身を隠し、我ながら情けないものの、仕方ないよなと開き直る。
野上の前に背の低い金髪の男が現れる。野上は避けるように歩き出すが、このチビはいきなり野上に抱きつく。
北島は次の瞬間、口をアングリ開けてしまう。チビは野上に無理矢理キスし始めた。野上は抵抗しようと手をばたばたさせるが、チビの腕力で身動きが取れない。
野上はチビの急所に蹴りを入れた。チビは悶絶して飛び上がった。その間に野上は駆け出した。
チビはピョンピョン飛び上がって痛い痛いと叫んでる。北島はその場で固まってしまった。自分より先に野上の唇を奪われる現場を見てしまったのだ。
北島は衝動的にチビの方へ駈け出し、チビの背中にドロップキックを喰らわせた。チビは2メートルくらいすっ飛んで、壁に激突して、う~んう~んと唸ってる。
北島は高校とは逆の方へ一目散に逃げ出した。走りながら、涙目になってる事に気付く。
補習授業の常連、3年A組浅利恵子と深津時枝はちゃんとやればわざわざ夏休みに学校に来る必要がないのに、どこか勉強することに冷めてる。
浅利は授業そっちのけで漫画を読んでいた。深津は相変わらずコンパクトミラーを離さず、自分のモデル顔をチェックしてる
堂面菊四郎は数学を教えていたが、補習授業にきてる10人のうち半分はやる気がないのに気付いていた。
”子供だからしょうがないか”自分は仕事をするだけ。やる気のある奴だけやればいい。昼ご飯までには仕事は終わるので、可奈ちゃんとランチに行くつもり。
「菊ちゃん仕事どうなの?」
「う~んまあ非常勤だからね、そんなに大変じゃない」
「ふ~ん」そう言って加奈ちゃんはサラダを口にしていた。
「ここのランチが旨いって、こないだ知ったんだ」
「喫茶ズムっていうのも覚えやすいね」
「コーヒーもコロンビアから発注してるからおいしいんだよ」
「菊ちゃんこないだ一緒に住もうって言ってくれたじゃない?」
「うん、俺のマンション、一部屋空いてて、倉庫になってるから、片付ければ加奈ちゃんも住めるよ」
「ほんとに住んじゃおうかな?」そう言って微笑む加奈ちゃんは魅力的だ。
今はこの幸せを噛みしめよう、堂面菊四郎は背を伸ばした。
3年A組野球部5番サードの中島幸人は最後の夏を全力で野球に打ち込んでいた。1年A組の剛力和利は中学から野球をやっていて、すぐに頭角を現し、1番センターのレギュラーを射止める。中島は剛力とキャッチボールをしていた。
ふとグラウンドに中島のステディ麗羅雪子が現れた。
中島は剛力にちょっと待っててなと言い、麗羅の方へ向かう。
「なんだよ、今日夕方まで練習って言ってあったろ?」
麗羅は指をおでこに当て「2年A組の神ヶ谷詩織って子に中島さんと別れて下さいって言われたわよ?」
中島は一瞬目が曇ったが「よくわからんね……2年の子に手なんか出してないし、いいんじゃない無視して」
「あんたはそう言っていつもごまかすのよね」麗羅は腕を組み出した。
「とりあえず、練習5時くらいに終わるから、また駅前のマックで話し合おう」
そう言って中島は練習に戻る。麗羅は右目の髪をかき上げ「いつものことか」と呟く。
我道幸代は昼1時過ぎに目を覚ました。隣りでは伊藤シャドウがすやすやと寝ている。ああ昨日夜中4時まで飲み明かしたっけ……。
お腹が空いたので、シャドウの好きなチリトマトカップヌードルを食べる。一息ついたら携帯が鳴る。遠藤くすみからだ。
「幸代?ちょっと頼まれてくれる?」
「何を?」
「英語教えてほしいのよ」
「家庭教師代取るわよ?」
「なんでもいいから、3時にマックでどう?ハンバーグとシェイクおごるから」
「わかった」
「ありがとう、今度何かで埋め合わせさせて」そう言って遠藤くすみは電話を切った
我道はシャドウの寝顔を眺めながら頬杖をつく。
本城ベータは家で干物になっていた。ビーチボーイズの「ペットサウンズ」をリピートで流し、クーラーを除湿にして部屋でだべる。
体重も74キロに増えていた。やっぱデスクワークは太るよな。そう言って三ツ矢サイダーをごくごくと飲み干す。
携帯の待ち受け画面では岸森明日菜がエンジェルスマイルを輝かせてる。何とかこの子を再登場させてくれないかなあ?
神のみぞ知るか……ベータはBGMをヴァン・ヘイレンの「OU812」に変える。
2015(H27)5/1(金)・2019(R1)11/12(火)
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