第13回 Endless Summer Nights
立川駅前で我道が彼氏と一緒にエスカレーターを降りていく。
彼氏は20代前半という所か……我道が選んだ相手だけにある種オーラを放つ美男子だ。
あのカップルは目立ちすぎる。まさか副担任と生徒の密会?だとはベータには知る由もない。
ベータは汗を拭い、大戸屋で夕食を取ることに決めた。
7月20日(日)
夏休み初日の午後、堂面菊四郎は天国口高校に呼ばれ臨時教師が内定する。
菊四郎は仕事の目処がついたことを真っ先に加奈ちゃんにメールで報告する。
バスで桜並木通りで降り、菊四郎は「よっしゃー」とガッツポーズを取る。その矢先加奈ちゃんが連絡してくる。
「菊ちゃんおめでとう。よかったね」
「今日店だろう?ごめん、起こしちゃった?」
「全然大丈夫。菊ちゃん、今近所?うち来なよ、祝杯あげよう」
「いいの?本当に?」
「待ってるね」
加奈ちゃんはビールと軽食を用意してくれていた。
「昼間からビールなんて久々だ」菊四郎は窓辺に肘を付き、加奈ちゃんを見つめる。ビールを片手にほろ酔い気味の加奈ちゃんは色っぽかった。
菊四郎は加奈ちゃんの左肩に触れる。そのまま抱き寄せる。
加奈ちゃんは菊四郎の肩に頭を乗せ「幸せ……」と一言。
「加奈ちゃんでよかった」菊四郎は加奈ちゃんに頬ずりする。
天国口高校の備品倉庫で初音君也は昔からあるLPレコードを漁っていた。次から次へと名盤が見つかる。
「こりゃ昼間の放送で流したい音源の山だ」
初音はレコード漁りに没頭していて時の経つのを忘れていた。夕方6時になり、使えそうなレコードを袋に詰める。
ふと人の気配がして振り返ると2年B組の宝田舞音がもじもじしながら、佇んでる。
「びっくりしたーなんだ舞音か、脅かすなよ」
宝田舞音はなんだか瞳を潤ませてる。
「どうした?」
舞音は返事をせず初音に近づいてくる。
初音は少し下がり壁に背中をつける。
2人の顔は5センチくらいしか離れていない。
初音はキスしようとする舞音の両肩に手を置き。
「どうした?こんな真昼間から?」
初音の言葉を遮るように舞音は唇を重ねる。
初音は目をパチクリさせ、舞音と舌を絡ませる。
ディープなキスは4分くらい続く。
唇を離し、舞音は頭を初音の胸に摺り寄せる。
初音は彼女が泣いてることに気付く。
栄華武蔵……天国口高校の新任教師、口数の少ないほぼ謎だらけの男。
特にルックスがいいというわけじゃない。しかし彼は女性がイチコロになってしまう魅力のあるタチの悪い輩。噂では既に数人の生徒が彼の毒牙にかかってる。
彼はクラブの二階の照明の暗い席に好んで座る。隣りには2年B組の高橋・サファイア・ライト・里見が頬杖をついてる。
サファイアはレモン・サワーを4杯も飲んでるが、栄華武蔵は何も言わない。
サファイアもロハだからいいか……とこの沈黙の男を呆れ顔で見つめる。
”なんであたしこんな男に惹かれてるんだろう?”サファイアは首を振って、やめやめ、この男には何を言っても無駄無駄無駄……なんか悔しいけど、お酒がうまいからいいや。
真夏の夜……男も女も異様にテンションが上がるもの……ダンスフロアでは月ノ輪哲郎が二階の栄華武蔵とサファイアを見ている。彼は我道が伊藤シャドウと親密なことも知っている
「なんとも乱れた高校だ」月ノ輪は皮肉交じりに微笑む。
夜11時我道と伊藤シャドウは窓辺で寄り添い、月を眺めてる。
「センセ、月が綺麗だね」
「そのセンセって言い方どうにかならんのか?」
我道はそれには答えず。
「こうのとり、来てくれそう」
「またそれか」シャドウは口を曲げる。
「ふふふ……」
「何がおかしい?」
「センセ可愛い」
「5歳年上に言うセリフじゃないな」
伊藤シャドウは我道の肩を抱き、彼女の髪に頬を寄せる。
2015(H27)4/26(日)・2019(R1)11/12(火)
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