第16回今夜、三日月を仰ごう

7月26日(土)


3年A組野球部5番サード中島幸人はイラ立っていた。学力テストでかなり長い時間をかけて本気を出したのに18位と惨敗。同じ野球部の4番堂見健太郎が3位にランクインして、口には出さないが、影で自分を笑ってるのは確かだ。


恋人の麗羅雪子は中学から一緒の腐れ縁で、今迄は他の女に手を出しても何も干渉してこなかったが、2年A組の神々谷詩織の件では口酸っぱく言ってくる。


いい加減別れて神々谷に乗り換えようかとも思い始めていた。しかしまだ麗羅には未練はある。5年続いてるのだ。当然と言えば当然だ。


昨日からメールしてるが、返事がない。向こうから別れるを切り出すかもしれん。それでもいい。受験勉強そっちのけで女のことを優先してるから、今を大事にしたい。俺もチャラ男だなあとつくづく思う中島であった。




高橋・サファイア・ライト・里見は梶五十歩のストーカーぶりにうんざりしていた。


学校だけじゃなく家にも何度も張り付いてくる。弟のアクアマリンは警察に通報すべきじゃないの?と言うが、いちいち梶ごときで警察に頼ることもなかろう。徹底的に無視しようと決める。


今日は学校の補習はない。栄華武蔵は今日もクラブへ誘うようなメールを送ってくる。


あの不良先生は多分自分だけを誘ってるわけじゃない事もサファイアは知っていた。まあタダ酒飲める利点があるだけ。何を考えてるか皆目見当がつかない謎の男だ。


まあいい、いつでも切りたい時に切ればいい。それより3年B組の初音君也が自分に気があると誰かから漏れ聞いた。まったく気付かなかったが、梶よりはまだまともそうだよなあ。




一方初音君也は今宝田舞音のことで頭が一杯だった。あれから何度か夜の道を一緒に歩いたり、何度か接吻も交わす。


栄華武蔵のことはとても聞けなかった。昨日の晩にラブホテルで一夜を共にする。


もう宝田舞音の虜になってるも同然。サファイアの美貌が少しちらついたが、舞音一色だ。


大学受験が迫ってるのにこんなことじゃナアナアになってしまう。舞音はたまに初音の胸で泣くことがあったが、理由は聞けなかった。


まだ慶事には何も言ってない。最近忙しそうだなと言われるだけ、まったく気付いてない。


舞音はまだ高2だ。何かと忍ぶ恋になってしまうが、仕方あるまい。こないだまで妹のように思っていたが、男と女とはこんなものか?初音は複雑な心境だった。




こちらも忍ぶ恋のわりにオープンな我道と伊藤シャドウだが、今日は立川中央図書館で勉強していた。


大学受験のセンター試験の問題を解いていたが、我道は9割7分正解していた。この子に受験勉強は必要ないわけだ。伊藤シャドウは今夜家で冷やし中華でも作ってくれとリクエストした。


「何か冷やし中華作るくらいならバーミヤンへ行ってお酒も飲もうよ」


「まあ、それでもいい」


この2人くらい開けっぴろげだとろくなことにならないわけで、のちにトラブルになるが、今のこの2人には何を言っても無駄。若さゆえ~である。




本城ベータは引き籠りの生活を脱却したいのだが、またインターネットで仕事を始めてしまったので、その問題を放置していた。ベータのマンションの外で何台かの車の止まる音がする。


窓から覗くと、黒いバンが3台止まっていて、サングラスに黒いスーツのエージェントスミスみたいな男が、2,3人出てくる。後から天国口高校の制服を着た高3くらいの生徒が黒い男達に何か指示を出してる


怪しい光景だな。ベータはまた仕事に戻る。




3年A組学級委員さすらいの一人相撲男北島守は今更ながらにトレーニングジムに通い始めた。


野上薫子が振り向いてくれるよう運動音痴を解消したいのだ。慣れないトレーニングマシンはかなりしんどい。


大学の推薦入学が決まりそうなので、こういう時間が作れる。野上がどの大学へ行くのか?北島は野上が進学を諦めて就職することをこの時は知らない。


2015(H27)5/4(月)・2019(R1)11/12(火)

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