第7回世界の終わりに近い男

7月10日(木)


本城ベータは2013年の秋から2014年の夏にかけて、インターネットで請負の仕事をしていて、2つ掛け持ちでやっていたため、食事以外は外にも出ず、ろくに炊事や掃除をしていなかった。


さすがに荒れ放題の部屋に限界を感じて、仕事も一段落してきたので、片付ける事にする。


しかし片付け始めると、どこまでが終わりなのか?と言うほどの荒れ様。


こういう時岸森明日菜がいてくれれば、少しは和むのになあ……気付けば夕方の5時になってる。朝からパン1枚しか食ってない。こりゃやばい。


駅前の日高屋でニラレバ炒め定食を食べる。


そういや映画なんて全然観なくなったなあと思い、帰りにレンタル屋に寄る。結局「ジャンゴ 繋がれざる者」と「永遠の0」借りる。


BOOK OFFも寄って、「モーツァルトのピアノ協奏曲22番・23番」とパールジャムの一番新しいアルバム「LIGHTNING BOLT」の2枚のCDを買う。


お金には余裕があるので、ブルーレイの「スターウォーズ・コンプリート・サーガ」9枚組も買おうかと迷うが、いつでも買えると思いやめる。


帰宅したのは夜7時半。早いうちにグランジ・ロック・パールジャムをある程度ボリューム上げて聴きたい。


コンビニで買った缶チューハイを飲んで、ポテトチップスを摘まみながら「LIGHTNING BOLT」を聴く。全12曲でトータル47分。いい意味でも悪い意味でも想定内の出来。10枚目のアルバムともなると落ち着いてくるか。


モーツァルトのピアノ協奏曲は凄い。ピアノも指揮もダニエル・バレンボイムで、とにかく22番の第2楽章が好きなので、なかなか見つからなかったので、感動ひとしお。


まだ夜10時だってのに眠くなってきた。「ジャンゴ」を観始めたらベータは初めの10分で寝始める。


世界はこんな平凡な男に何をさせようというのか?



駅のはずれの焼き鳥屋で天国口高校の柔道部顧問生田直樹と伊藤シャドウは飲んでいた。


もちろんシャドウが生田に無理に誘われて、なかなか帰してくれない状況だ。


「あの生田先生、自分そろそろ行きますんで・・・」


「何を言ってるんですか、まだ11時宵の月です。もっと飲みましょう」


生田は絡み酒というわけではないが、今の学校教育がどーのこーのとグチばかりである。


この人も孤独なんだなあとシャドウは思った。その時2人が座ってるカウンターの後ろから「影道?」と呼び声が聞こえて、振り向くと大学同期の関根桜子だった。


シャドウは”しめた”と思い、桜子にウインクで合図し、「生田先生、実は彼女と用事がありまして」


生田は桜子を見て「随分上品そうなお嬢さんだね?」と言う


「そうゆうことなんで……」シャドウは桜子の肩に手を置いてその場を立ち去る。地獄に仏だ」


「あの人置いて行っていいの?」桜子は心配そうな顔をしてる。


「大丈夫、大丈夫」振り返ると生田は一人でポツネンと飲んでる。


関根桜子は目がパッチリした和風美人である。


シャドウは今気付いたんだが、知り合いの若い女の子は全員美人だ。天国口高校にしてもそうだし、女難の相なのか?寅さんみたいだな。


関根桜子とは喫茶店で談笑してから夜中12時頃別れる。今日は疲れた。シャワー浴びて寝よう。



7月11日(金)


慶事と初音はリクエストBOXをひっくり返してる。


「だんご3兄弟、小松未歩の「alive」、ユーミンの「卒業写真」、Kinki Kidsの「愛されるより、愛したい」J-POPが多いな。」と慶事。


「こっちは洋楽ばかりだぞ、ザ・フーの「SUMMERTIME BLUES」、サヴェージ・ガーデンの「I WANT YOU」、デズ・リーの「KISSING YOU」、「Calling You」を手嶌葵バージョンで聴きたいと書いてある」と初音。


「そういや今日の午後3年だけ抜き打ちテストだろ。国、英、数と3教科。成績には影響しないとはいえ上位50番まで発表されるから、大きいよな。去年我道が国語だけ98点で英語と数学は満点のダントツ1位。あいつは手を抜かんな。まあ本気出さない奴が多いから、信憑性ないけどな。」


「そういう紀之は何位だったっけ?」


「圏外だよ。君也は31位だっけ?」


「まあ真面目にやったらベストテンに入れたかもしれん。秀才連中がごっそり下位にいるからな」


「栄華武蔵、相変わらず女生徒と密会しとる。バレたらクビだぞ。その点伊藤シャドウはボロが出んなあ。あれだけ女生徒に囲まれてるってことは、どっかで密会とかありそうだがな。あいつ女に関しては手慣れてるな。栄華は欲のままと言う感じだが、シャドウはクリーンなイメージが定着してる。俺らパパラッチだな」慶事はBALANCE POWERをかじる。


「女王様我道との微妙な関係はどうなのかね?」と初音。


「まあね、さすがのシャドウでも我道は他の奴とは同じというわけにはいかんだろう、強敵だぞ」


「北島の奴またサボりやがった!野上と栄華の密会写真見せて苛めてやろう」初音はザ・フーから曲を流し始めた。



天国口高校総代、我道幸代は教室で漢字の書き取り300問に挑戦していた。


「幸代答え合わせした?」と浦兼が聞く。


我道は「フー」と息をついて赤ペンを置く。


「凄い!300問全問正解、幸代だったら全国模試でも1位になれるね」


我道は浦兼に微笑んでから、窓に向かって遠い目をする


2014(H26)12/20(土)・2019(R1)11/11(月)

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