第8回さらば青春の光

7月12日(土)


高橋・サファイア・ライト・里見はガラスの午前四時に朝帰り。自室のベッドに倒れ込み「うー寝るぞー」と息巻く。


弟のアクアマリンはPSPでゲームをしながら、サファイアの部屋に入ってくる。


「何よあんた、ノックくらいしなさいよ!」


「姉ちゃんも不良だなー午前四時に朝帰りですか?親父にチクろうかな?」


「言えば?」サファイアはベッドでセクシーポーズを取る。


「姉ちゃんその恰好、16歳の少年の目には毒だよ……まあ男と遊んでるんだな……よくやるよな、まったく」


アクアマリンはぶつぶつ言いながら、学習机の椅子に座る。


「何だかんだ言ってもあんたも女の子しか頭にないんでしょ」


アクアマリンは頭を掻きながら、「みんながみんな姉ちゃんと同じじゃないよ……」


サファイアは顔色を変えて「何よ、その言い草、まるで私だけがサカリ犬みたいじゃない」


「この時間に帰ってきて言い訳はきかないよ」


「悔しかったら彼女の一人でも作りなさいよ」


「間に合ってます」アクアマリンはPSPからベートーヴェンの運命を流し「ちゃんちゃん!」含み笑いをしながら退室する。


「何よ、あいつ生意気なガキめ!あーあ寝るのめんどくさい。起きてよーかなー」




堂面菊四郎はこの日を心待ちにしていた。やっと加奈ちゃんとデートできる。


それにしても天国口高校からまだ連絡が来ない。もうすぐ夏休みだし、2学期が来てしまう。


昼飯をフレンチレストラン”ラルク・アン・シエル”で12時に予約した。


今11時半BOOK OFFでCDでも物色してよう。どうもBOOK OFFの棚は280円と500円の狭間で揺れるんだな。


「菊ちゃん、まだ引っ越しのバイトしてるの?」


加奈ちゃんはチキンソテーを切りながら微笑む。


「うん、まだ高校から連絡が無くてね」


「ふぅ~ん、早く菊ちゃんと結婚したいなあ」


「そうだよね、でもここのランチ旨いでしょ?」


「うん、最高!」


加奈ちゃんはとても水商売してるように見えない。女子大生でも通る。それだけ純朴なルックスをしてる。


菊四郎は彼女の美人美人してない可愛い顔が好きだった。




本城ベータは一年間働きまくって、3年くらい食える金が出来た。しかし崖っぷち36歳。我ながら自堕落な生活してると思う。


昨日もブルーレイ映画「英国王のスピーチ」と「さよなら渓谷」をHMVで購入した。まだ観てないが、永遠とリピートで”少女時代”のライブブルーレイを流してる。これに飽きると(飽きないが)YESの9012ライブDVDを流す。


さて今日も定番の大戸屋のランチだ。CDとブルーレイだけじゃ能がないので、積読してた小説太宰治の「もの思う葦」を読み始める。


大戸屋は人間観察も面白い様々な家族の取り合わせだったりカップル、女の子一人男の子三人の学生や、昼間からビールを飲んでる自営業っぽいおじさん。自分は他人にどう映ってるのか?自分を客観視するのは疲れるからやめてる。


情けない男だなあ……つくづくそう思う。”世界はあなたの出方次第”俺に何が出来るのやら?


大戸屋でエスプレッソ頼んで、「もの思う葦」も8割くらい読み終わる。時計を見ると夕方5時。我道に連絡取ってみようかな?




その頃我道幸代は伊藤シャドウとビッグカメラに来ていた。電子書籍KINDLEを見に来た。一番高い型は売り切れ状態だった。


我道のスマホが鳴る。表示を見て「ああ」と一言漏らして電話に出る。


「センセから電話とは珍しいわね」


ベータは「去年のお返しをしようと思ってね。今どこにいる?お茶でもしないか?」


「ごめんセンセ今彼氏と一緒」


「そうか、わかった。また電話する」


シャドウは「センセって誰だ?」


我道は「昔の恩師よ……」


シャドウは「恩師ねえ……それより俺はいつからお前の彼氏になったんだ?」


「ふふふ……相変わらず可愛いねシャドウ先生は……」


我道が髪をかき上げると通りかかった男達4人くらいが振り返る。


シャドウは誇らしい気分になる。まあね。


2014(H26)12/21(日)・2019(R1)11/11(月)

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