第24回キスの手前

ベータはバー”リデル”の前で腕を組んでいた。


我道と鉢合わせはやだしなあ。


やっぱ帰ろう。ベータは家路へ向かう。



7月29日月曜日


ベータは引き籠り生活を続けていた。つーかレンタルビデオ屋とスーパーと家の魔の三角地帯を行ったり来たりしていた。ちょっと運動不足だよなと思い、昼から散歩ついでに天国口高校の側まで行く。


なんか怒鳴り声が聞こえる。


聞き覚えのある声……生田先生だ、例の体罰教師。


校庭に男子生徒4人を四つん這いにして尻に竹刀を叩きつけてる。


うわー!今時あんな体罰すんのか?大丈夫なんだろうか?


4人の生徒は立ち去っていく、泣いてる奴もいる。


「生田先生、また学校追い出されますよ」


「いいんです、自分は間違った事はしてない」


生田先生は竹刀で何度も素振りをして


「おっしゃ、今日もがんばるでー!」


元気な人だ。


職員室には誰もいない。


自分の席に着こうと思ったら視線を感じる。


後ろを向くと案の定、岸森がエンジェルスマイルを満開にしてる。


「ヤッホー先生、何してんの?」


「何してるって、お前こそ何してるんだ?」


「あたし?暇してる」


「結構な御身分ですな」


岸森は近づいてきて、何するかと思ったら俺の膝に座ってきた。


「どうした」


岸森は俺の背中に手を回し顎を肩に乗せる。


「こうしたかったの……」


「そうか」まあ悪い気はせん、いい匂いするし。


「先生、キスしていい?」


「冗談だろ」


「本当にしちゃったりして」


岸森の唇と俺の唇の間はわずか2センチ。


岸森の表情が変わる。


「そういやさ、お前の上半身撮らしてくれる?待ち受け画面にしたいから」


「ほんとー!いいよ、いいよ」


岸森は俺の膝からピョンと飛んでポーズを取る。


「おいおい、そんなセクシーポーズ取らんでいいぞ」


3パターンくらい撮って、岸森はキャッキャと喜んでる。


「先生、いつかキスしようね?」


「わかった、わかったお前がもっと大人になったらな」


「えー、あたし充分大人だよ」


よくゆーよ。


「とりあえず暇なら勉強しろ」


「はーい、じゃーねセンセ」


岸森は天使の笑顔で立ち去っていく。


しかし暑いのは我慢できるけど汗が噴き出してくるのがうっとうしい。


2013(H25)9/21(土)・2018年(H30)5/5(土)

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