ゲーム中間報告 p・w・カンパニー本社にて
「不明な点はもうわかった。わかってることから報告しなさい」
「ゆうじょうくんはかっこいーとおもいまーす。それにかしこいしチャーミングでセクシーで面白くって人気者でー……嫌だなぁ、そんな怖い顔しないでよ」
「道化が、何故貴様がここにいる」
「いやぁ、一応俺の仕事終わったし、その報告にね」
「だったら報告しろ。これは、貴様がやったのか?」
「それは命令? お願い? 命令だったら嘘ついちゃうかも」
「道化!」
「ごめんごめん、からかっただけだよ。だからほんと、おっかない顔しないで、せっかくかわいーのに台無しだよ?」
「いいから答えろ! 貴様はどこまで私の邪魔をする気だ?」
「どこまでって、うーん、正直に言っちゃうと、俺が手を出したのは最初だけなんだよねぇ」
「つまり、貴様は事前の情報漏洩および敵対する第三勢力をかの地に呼び入れたこと、認めるのだな?」
「まぁね。今更だし、認めるよ」
「今のは、明白なカンパニーへの背任行為だとわかっての発言か?」
「そっちは否定しまーす。俺は、このゲームが盛り上がるようにNPCを召喚しただけだーす」
「詭弁だな」
「本当だよ。だいたいさ、例え今回のゲームが失敗して、あのサイボーグ雑魚キャラが全滅したところで、社長の座は揺るがないでしょ?」
「あんなになってもそう言い張るつもりか? あの、名実ともに異界と化したあの埋立地を見てもか?」
「0エリアを中心に、すっぽり覆ったオーロラ色のバリア、出入りは物理的に不可能、内外との通信も不通で様子はわからない。辛うじてサイボーグのワープ機能は生きているけど、それでもエネルギーの一方通行でしかない。だっけ?」
「完全な隔離状態。このような現象はカンパニーのデータバンクにも存在しない」
「だったらなおさら俺じゃないでしょ? 俺がカンパニーの知らないことを知ってるわけないでしょ?」
「あの悪夢の生き残りがそれを言うのか?」
「買いかぶりすぎだって。まぁーでも、予測はつくけどね」
「さっさと答えろ」
「お願いしますは?」
バン! バン! バン! バン! バン! バン!
「……っと! 危っぶないな。それ実弾でしょ?」
「それを喰らって無傷のくせに、何を言う」
「いやいや、これでもノーコストじゃないんだっだから撃たないで、そんな目で見ないで、怖いから、教えるから」
「早く言え!」
「わかったってば。まず『トラック進化論』は、流石に知ってるよね?」
「……緊急時におけるリミッターの解除、アドレナリンの過剰分泌による火事場のクソ力と呼ばれる現象の魔力バージョン、だったと記憶している。回避反応からの異世界転移、あるいは転生を引き起こすというやつだろ。魔法系統のチートが証拠だったか」
「いわゆる『灯が灯る』って現象だね」
「それが何だ? まさかあれはその転移だと言うのか?」
「正確にはその失敗だよ。それもかなりの回数、失敗してる」
「ちゃんと説明しろ」
「これは予想だけど、あそこで行われた、俺たちがやった虐殺の犠牲者から、かなりの数の転生者、転移者が現れたと思われる。だけどあそこには発電所がある」
「パラダイスエンジン」
「ご名答。厳密にはその中のスネアーだけど、それが出ていくはずの被害者たちを引き寄せている。何度も、何人もね」
「その結果があのオーロラだと?」
「あくまで仮説だけどね。でも転生者は原則、今いる世界よりもより良い世界に行きたがる。だけどそれができないから無理をしてーって考えれば自然じゃない?」
「はっ! まるでオカルトだな」
「何をいまさら。それにそう考えた方が、外界との隔離っていう現実逃避、わかりやすいじゃない?」
「なら中はなんだ? 異世界か?」
「さぁそこまでは。中はカオスかもしれないしヘブンかもしれない。ひょっとしたら現実が乖離してそれぞれがIFの世界を過ごしてるのかもしれない。こうなってるとは気づいてないのかもしれない。わんねぇよ」
「……なら、どうすればいい? どうすれば解決できる?」
「んーー、無限コンボはキーカード一枚破壊すればいい。今回確定でわかってるのはスネアーだけ。それを壊せれば、あるいは、ね」
「つまりは、中次第ということか」
「まぁ、ね」
「…………何を座ってる?」
「いーじゃんいーじゃん答えたんだし、いさせてよ。静かにしてるからさぁ」
「……内部への通信は続けろ。外部への警戒も怠るな。この現象、一歩間違えればこの世界だけでは済まないぞ!」
「……さぁて、カードは手札から離れた。敗北条件ばかりで希望は見えず、そんな闇を照らすは誰だ? まだまだゲームは続く。お楽しみは、これからだ、ってね」
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