第9話 大聖剣
幾つもの地方での魔物の討伐を終え、城のある聖都市に戻ってくると、国王より渡したいものがあるとのことなので再び謁見することになった。
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「今日は何があるんだ?」
「国王様がここ最近の勇者様の活躍の話をお聞きになり、大変喜んでいらっしゃっています。そして更なる活躍を願い大聖剣を授ける運びとなりました」
「大聖剣? なんだそれは? 俺が持っている聖剣と何が違うんだ?」
「勇者様がお持ちになられている聖剣はあくまでも初期装備でして、神の加護は僅かながらに掛かっていますが剣としての質がいかんせん低いのです。それに引き換え大聖剣とはこの世界でも有数の鍛冶師が作り上げだ剣に、我々神官の祈りによる加護では無く神によって真の加護を与えられた逸品でございます」
ということは何か、あの神の野郎がくれた剣はオモチャみたいな代物で加護も適当にしか掛けていなかったってことか?
まったくふざけてやがる。
まぁ、そんな剣でも活躍出来ている俺ってやっぱり天才だな!
「というよりなんでそんな剣があるなら最初から俺に託さないんだ? 俺は勇者なんだから、一番持つに相応しいに決まってるだろ?」
「それは間違いございません。ですが大聖剣が見つかったのはつい最近なのでございます。およそ100年前に勇者ユウキが魔王と相討ちになって以降、行方が分からなくなっていたのです」
「まぁそれなら仕方がないのか……まっ、いいかはやくその大聖剣を貰いに行こうぜ」
ということでさっそく王の間に移動した。
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「勇者よ! 各地での戦果は見事であったぞ! お主はまごうこと無き勇者である!」
「ああ俺は勇者だからな当然だ!」
「そんなソナタに今日は授けたい物がある」
国王がそう言うとユウトの目の前に大聖剣が運ばれてきた。
「これが大聖剣か!」
「そうだ。ワシの命で聖騎士団に探させておったのだが、ようやく見つけることが出来たのじゃ。この魔王をも打ち砕く大聖剣を持ってお主には更なる活躍を期待するぞ」
「当たり前だ! 俺に出来ないことは何もない!」
大聖剣を貰ったら国王には用がないので謁見はこれで終了した。
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王の間から出て、神官に尋ねる
「なんだこの沸き上がってくるような力は……これが大聖剣の力なのか?」
「左様でございましょう。私のような小者が触ってもそのような違いは分からないのですが勇者様のであらせられますユウト様だからでありましょう」
「はっ! そうか! 気に入ったぜ!」
神官と話をしていると一緒に謁見していた仲間のアヴラムに話しかけられる。
「ユウト、その大聖剣を少し触らせて貰えないか?」
「駄目だ! この大聖剣は俺のモノだからな! もう誰にも渡さない! というか渡したくもない!」
「少しも駄目なのか?」
「嫌だと言ってるだろ! それとも何か? お前もこの大聖剣が欲しいのか?」
「それは……まぁ。伝説の勇者であるユウキが使っていた剣だから興味はあるよ」
「だが断る! これは俺のだ! 絶対に渡さん!」
「分かった、分かったよ。そんなに怒鳴るなって。ちょっと興味本意で言ってみただけだから」
何だろう、大聖剣を手にしてから心が妙に落ち着かない。
それでも何でも出来そうで気分は悪くない。
まぁいいか、この大聖剣で俺は魔王を倒せば良いだけだ。
まったく全員、ユウキ、ユウキうるせえんだよ!
魔王を倒したと言っても相討ちだろ?
そんな中途半端な野郎をいつまでも崇めてるんじゃねぇよ。
目の前に最強の勇者がいるんだから俺を崇めろってんだ!
まっ大聖剣を手に入れたし、これから俺の伝説が始まるってな!
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