第3話蛍

学校から歩いて三十分の自殺スポットの森に彼女を迎えに行く。

少し歩いたとこに彼女は上を向いて鼻歌を歌っていた。

その姿を後ろから見ていたら彼女がこちらに気づいたのか恥ずかしそうにこっちを向いて顔を隠して笑っていた。

「こんばんは」

「いたんなら教えてくれてもいいじゃん」

彼女は、口を膨らませて文句を言っている。

「君の後ろ姿に見惚れてたんだよ」

「そうでしょ。私きれいだから普通は君みたいな暗くて虫オタクでうじうじしてる奴となんか話もしたくないんだよ。でもねぇー仕方なく話してあげてるんだから感謝してよね」

「はいはい分かってますよ。病気だからしょうがないですよね」

すると彼女は、僕をじっと見てから「ちゃんと学校いったんだ。えらいえらい」と笑いながら落ちてる枝で僕をつんつん突いてくる。

その枝を奪って空に投げる。枝が落ち葉や地面に落ちて彼女の方にバウンドする。

「僕はその枝みたいに自分では動けないからいろんな物の力でしか動くことが出来ない。だからえらくはないよ。おじいちゃんに行けって言われたから行って声をかけられたら適当に話をしてこっちからはいかない。だから僕は何もしてないんだよだから僕には君しかないんだよ」

「何が?」

そう聞かれて少し恥ずかしくて下を向いてしまう。

「生きる意味。生きてていいと思える理由が君しかないんだよ。」

「私にも、何もないよ。私の周りにいる人全員不幸にする害虫だから」

そういった彼女の顔は、悲しそうに笑っていた

「そんなことないよ。僕が君に最初に会ったとき思ったんだ。きれいだってこの人は世界に必要だってその人の命を助けることが出来るなら僕は世界にとって必要なんじゃないかってそう思ったら何故か生きていくのが学校に行くのが楽になったんだ。だから君は僕にとっての唯一だ」

下を見きながら喋ってたからふと彼女を見て驚いた。彼女は泣いていた。

何で泣いていたのか聞いても答えてくれなかった。でも彼女は少し照れながら笑って「ありがと」と僕に向かって言ってくれた。

それから少し泣きながら座ってた彼女が立ち上がって「よし。落ち着いたそれじゃしよっか」と言って僕の目の前に座った。

「ああ。そうだね」といって僕は彼女の後ろから抱きつく。それから少しの間抱きついてると彼女が「おけ。もう大丈夫だと思う」と言って僕から少し離れる。

「ありがとね」

「大丈夫にしても本当にすごい病気だよね。フィクションみたい」

「だよね。人から生気をもらわないと生きていけないなんて本の中だよね。世界でもまだ見つかってない病気らしいよ」

「世界で見つかってない病気なんてすごいね。しかも渡し方も相手があげる意識があって体に直に触んないといけないんなんて」

「本当にありがとね。こんなとこに毎日来させちゃって」

「うん。平気僕やりたいことないから」

「お礼にいいもの見してあげるよ」

「何?」

「上見てみな」

言われた通り上を見て僕は圧巻した。

そこには、海に宝石をぶちまけたみたいな夜空が広がっていた。

それから二人でどれぐらい無言で星を見ていたらろう。いつの間にか雨が降っていて急いで立ち上がる。

「私そろそろ帰るね」

「分かった」

そう言って道に出た後に彼女が「私こっちだから。ばいばい」と手を振ってくる。その手を振り返して彼女とは逆の方に歩き出す。

帰っていく彼女を背に感じながらふと思った。何で彼女は、僕が虫オタクだと知っていたんだろう......

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命の輝きは、雨の日に 新人侍 @mitugiyuuga

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