第2話水黽

「え~と、このクラスの担任になった竹原だ」

僕は、学校に来ている。

あの日に彼女と会ってから自分の中にあった何かが崩れていった。

その何かが何だったのか自分でもよくわからない。

だけどそのおかげですこし生きるのが楽になった。しかしこの学校に来るとは思ってなかったな。

「なあなあ、お前黒瀬だよな」

めちゃめちゃな笑顔で話しかけてくる。

「俺だよ俺、藤堂、藤堂渡っても覚えてないか」

「ごめん、思い出せない」

「小学校のときに同じクラスだったろ」

あ~少し思い出した。クラスで一番うるさかったやつだ

「よく、僕なんかのこと覚えてるね」

正直な感想だった。何であんな陽キャが俺みたいな陰キャの事よく覚えていたな。

「ほら、先生に一番気に入れられていたやつじゃん。印象強いよ」

「そっか」

「そっかってなんだよ冷てぇーなぁー」

「ごめん」

キンーコンーーカンーーコンーー

「よっしゃ、一緒に帰ろうぜ」

君も、青春してみなよ

ふと彼女の言葉を思い出した

「いいよ」

「おーーーーい、佐藤帰ろうぜ」

さすがリア充、女子を簡単に誘ってるよ

佐藤と呼ばれてた女子が目を?にして歩いてくる。

「誰この人?てか目死んでないちゃんと生きてる?」

初対面でいきなりひどいなー

「それな!」

「生きてるから、それより早く帰らないといけないから先帰るよ」

彼女との約束がそろそろだったからそろそろ学校を出ないと遅れてしまう。

「ちょい待ちっと行こうぜ、ほら佐藤も早く」

「私に拒否権はないんだね。わかったちょっと待って」

いや帰えんのいつの間に一緒に帰えることが決定したの、俺先帰るって言ったよね。俺は一人が好きなんだけどねえ聞いてる?

なんて言ってもしょうがないから一緒に帰ることにした。

三人で学校を出て歩いていると藤堂が頭に手を当てて考えるポーズをしながら

池を指して「お前虫とか詳しかったよな。あそこにいる水黽って何で水の上で歩けるのかな?」

「水黽はとても軽くて体内から足の裏の毛に油を出して水をはじくから水面に立ってられるんだよ」

僕が、言い終わると藤堂は笑って「変わんねえな、お前は」などと言ってきたから「いや、変わったよ」と強く言い返してしまった。

「いや変わってねえよ」といきなり真面目な顔で言ってきたから固まってしまった。

すると、佐藤が空気を読まず明るい声できいてくる。

「何、あんた達昔から仲良かったの?」

僕が、桜の木の下で佐藤に答えようとしたときに頭に少女の声が響く。

「君は、虫が好きなんだね。虫の話をしている時は絶対笑顔だもん」

その言葉が、頭でリピートして離れない。

僕が、喋らないのを不審に思ったのか藤堂が僕の顔を覗いてくる。

それで、我に返る。そして佐藤に向かって答える。

「いや、小学校が同じだけ」

それを聞いた藤堂がさっきの事がなかったのように僕にお菓子を買ってくれなかった子供みたいな声で言ってくる。

「それはねえだろ、小学校の時いっぱい遊んだじゃんか」

藤堂の言ってる意味が分からず放心してると佐藤が意外そうな目でこっちを見てくるから首を横に振る。

「いや,俺遊んでたやつなんて高橋ぐらいだもん」

そしたら、藤堂が忘れてたみたいな声出して言う

「俺、親が再婚して苗字変わったんだよ。藤堂は新しい父親の苗字」

「は、お前高橋ってこと?」

「そうだよ」

僕は、頭がパンクしてしまい頭をこする

「え、ってことはって私とも同じ?」

「うん」

今度は、佐藤がこっちに目線で自己紹介を求めてきた。

「黒瀬大樹ってことぐらいしか紹介することがない」

「え?黒瀬ってあの黒瀬?」

「うん」

すると、佐藤がクスクス笑い出した。それにつられて藤堂もくすくす笑い出した。

「黒瀬ってあの先生といつも喋ってた少し気味が悪いあの黒瀬だよね」

「そうそう」

「俺、こっちだから」

バックを掛け直してして約束の所に行くために背を向けると「じゃあな」と後ろから声がしていた気がしたが後ろを向くことは出来なかった。




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