22話 娘さんをください!
俺のユイの両親への挨拶は、予想外にスムーズに進んでいた。
「ユイがあんたにぞっこんなのはよく知っていたからね。性別まで変えるほど入れ込むとは思わなかったよ。」
「お宅の息子さんを本当にすみません……。」
「いいのさ。それに、今は娘だよ。」
「そうですね。あらためて、娘さんをください!幸せにします!」
「うん。正直私達としては世界違いの結婚で本当に幸せになれるか疑問視はしてるんだけど、本人が望んでるんだから仕方ないね。許可するよ。その代わり、本当に幸せにしてくれよ!?」
「はい!」
「ただ、一つだけ君に話しておかなきゃいけないことがある。」
「こちらの国、日本の法律では、NPC、つまりそちらの人々と結婚することが出来ない。つまり、こちらの世界ではユイは未婚という扱いになる。それは受け入れてもらわなきゃいけないんだ。」
「分かりました。仕方ないですね。いつか日本国にも認めてもらいたいですが。」
ここでユイが口を出してきた。
「将来的に日本のVR界の権威になって、法律改正の圧力をかけて絶対認めさせてやるんだから!やっぱり私の旦那さんはマルスしかありえないもの!」
「それは、相当大変だぞ、由衣。だが、父さんも一応応援しといてやるよ。」
「ありがとう!」
ところ変わって、我が家。
ユイが我が家に挨拶に来た。
「つまり、ユイさんはうちに毎日朝と夜、出来る限り通ってくるということね。」
「うん。本当はずっとこっちにいたいんだけど、私は向こうの世界に身体の本体があるから、向こうの世界で生きていけるだけのお金を稼いだりとか、やらなきゃいけないことがあって。それに、こっちの世界に何十時間もずっと居続けると身体を壊しちゃうんだよね……。」
「まぁ、ユイにはユイの生活があるってことだ。それでも俺はユイと結婚したいと思ってる。」
「そっか……。色々大変なんだね……。」
すると、おかんから爆弾発言が飛び出した。
「でもそれだと、子供の面倒を見れないんじゃないかしら?」
あ。そうだよ。まさか俺が騎士団の仕事を辞めて子供の面倒を見る訳に行かないし。少なくとも赤ちゃんの間はユイにつきっきりで面倒見てもらう必要がどうしても出てくる……。
「そ、それって、私とマルスの子供の事……?」
「もちろん。跡取り、期待してるからね。」
ユイの顔色がどんどん悪くなっていく。やっぱり子供の面倒を見る時間が取れないことはユイも気づいてなかったのか……。
しかし、ユイの心配は、それ以前の所だった。
「多分、私たちプレイヤー、子供、産めない……。」
え?
「プレイヤーの身体って、妊娠や出産が出来るようには出来ていないの……。多分……。」
しばらく流れる沈黙。
「そ、それじゃ跡取りはどうするのよ!」
「えっと、運営……神様にお願いして特別に妊娠できるようにしてもらう……とか?」
「神様にお願いとかそんな恐れ多い手段取れるわけないじゃない……。ああ、跡取りは望めないのね……。」
「そっか……。マルスにユイ以外の相手を選べと言っても納得しないだろうからな……。」
「もちろん。」
そりゃそうだ。ここまでしてくれたユイを今更捨てられないし、何より愛おしくてしょうがない。ちなみに俺の国は今は原則一夫一妻制だ。まぁ昔みたいに一夫多妻が認められていても、ユイの国が一夫一妻制な以上、側室を取るのは不義理すぎる。
でも、正直、我が子が欲しいかと言われれば、欲しい。まぁ、ユイと我が子どちらを取るかと言われたら迷わずユイなんだが。
「ごめんね……。マルス……。」
「謝ることはない、ユイ。何が何でも俺はユイと結婚するからな。安心してくれ。」
「うん……。」
結局この日は、養子を取ることを検討しよう、ということになって解散した。
「お兄ちゃん。」
「マリー、どうした?」
「お母さんは跡取りに結構こだわってるけど、私は最悪、跡取り居なくてもいいよ。養子取ったところで、育てるのもユイさん大変なんでしょ?」
「ああ……。そうだな……。でも……。」
「確かに、跡取りがいないのは外聞が悪いかもしれないよ。でも、来訪者が奥さんって言う時点で、外聞とか全部放り投げるくらいの異常事態だから。」
「異常事態ってなぁ……。」
「お兄ちゃんとしてはユイさんと結婚するのは決定事項なんでしょ?だったらもう開き直っちゃいなよ。いざとなったら家族やこの街よりユイさんを取ってもいいんだからね。」
「ありがとう。でも、俺はこの街も愛してる。この街で、ユイとともに生きていたんだ。」
「そっか。まぁ、私もできることは協力するから。」
「ありがとな。マリー。」
「お兄ちゃんの顔色を見ていれば、お兄ちゃんにとってユイさんが本当に大切なのはわかるから。ユイさんが来てからお兄ちゃん、明るくなったよ。」
「そう?前が暗かった?」
「暗いとは言わないけど、全部しょい込んでる感じで。ユイさんが来てからの方が、幸せなんだなって感じる。」
「ふふ、分かってくれるか、マリー。それだけでも嬉しいよ、ありがとうな。」
「さっきからありがとう言い過ぎ!ありがとう禁止!」
「なんだそれは!ははは!」
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