11話 俺はマルス。NPC。初めてのガチャを引きます。
ユイちゃんが、なにやら空中を突くような形で手を動かし始めた。すると、目の前に、突然抽選箱のようなものが現れた。
「うおっ...。これは何だ...?」
「これはね、ガチャっていうの。ここの穴にこの『ガチャチケット』を入れると、中からアイテムが出てくるの。」
「は、はぁ...。アイテム?」
「まあ見てて。リズさん、手本を見せてあげて。」
「了解です。」
すると、リズさんは、その箱に『ガチャチケット』とかいう紙を投入し、レバーを引いた。すると、中から上等そうな槍が出てきた。
「どれどれ...。蜻蛉切、レア度SSR、種別槍かぁ。数値見てもすごい強いけど、槍使いは知り合いにいないですね。オークションに出そうかな。」
「何もないところから武器が現れた...。すごい...。」
「でしょう。これがプレイヤーの特権、『ガチャ』の力なんだよね...。」
「ユイちゃん?なんでそこで暗くなるの?」
「いやー、なんかプレイヤーだけガチャという存在でズルをしているような気がして...。」
「ユイちゃん、気にしなくていいよ。来訪者と俺たちは違うものだ。その『ガチャ』が来訪者ならではの力ならば、それは来訪者の実力のうちだよ。」
「そっか。ありがと。マルス。でもね、確かマルス誕生日近いよね?本命のプレゼントは別に用意してあるけど、プレゼント第1弾として、このガチャチケットをプレゼントします!マルス、引いてみて!」
「えっ、引く?」
俺は、ユイちゃんからその特別な紙を受け取る。
「この箱にこの紙を入れて、レバーを引くの。」
「分かった。えっと、こうかな?」
「うん!」
すると、箱が消滅し、中から光り輝く一振りの剣が現れた。
「えーと、童子切安綱、レア度SSR、種別剣...。立て続けにSSRだよ!すごいよマルス!」
「えっ...。」
「っていうかこれ今回のガチャ当たり枠の一つでしたよね?」
「当たり枠?」
「うん、特に評価が高い剣ってことだよ。えーと、サイトを見てみると...、本当だ。ゲームセブンの評価10点じゃん。」
「んーと、よく分からないけど、この剣がすごいのはなんとなく分かる...。ちょっと俺の身の丈にあってないかもしれない...。」
「いや、マルスは実力あるんだから、その剣に見合ってるって。それに、マルスが引き当てたんだから、運も実力のうちだよ。」
「運?」
「そう、運。ガチャはどんなものが出てくるかは運次第なんだよね。微妙な武器が出てくるかもしれなかった訳だし。くじみたいなものだよ。」
「くじかぁ。子供の頃町で掃除当番を決めるくじとかは良く当たってたけどなぁ...。」
「ありゃあ...。でも、今回は運がいい方向に働いたよ!良かった良かった!そうだ、今度装備一式いいの揃えに行こうよ。プレイヤーでいい防具職人知ってるから。」
「お、おう。なんか目まぐるしい展開に驚いてるんだけど、ありがとう...。いやー、これは他の騎士団員も羨ましがるだろうなぁ。」
その時、雌討伐が終わったケイタ君達が戻ってきた。手には雌ウィップの遺体と、なにやら赤い球を持っている。
「あのさ、湯源球っていう割とレア度が高い秘宝系アイテムが出たんだけど、使う人いる?環境系みたいなんだけど、使い道がよく分からなくて。」
「湯源球?湯源球か!それは、温泉を沸かすことができる秘宝だよ!これがあれば倒壊した公衆浴場が復旧できる!町の復興予算からお金は出すからぜひ買い取らせてくれないか?これで町のみんなが久しぶりに風呂に入れるんだ!」
「お、おう。一応ラストアタックとったのは愛奈だけど、それでいい?」
「うーん、多分プレイヤーが持っていても使い道ないですし、それは寄付するですのー。復興に役立てるですのー!」
「本当か?恩に着る!」
その後、帰った俺たちは倒壊した公衆浴場の修繕に取り掛かっていた。流れでユイちゃんたちにも手伝わせちゃったけど、ごめん!
他にも、町のみんなで手伝ってもらって、公衆浴場は無事再建され、温泉が湧き始めた。公衆浴場の番頭は言う。
「いやー、みんなお疲れ様!ありがとうね!折角だから、一番風呂みんなで入っていかないか?」
「お、いいっすねぇ!みんなで入りましょう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます