第13話

僕は、登校中鮎川さんを見つけた。別に鮎川さんを探したわけではなかったが、何となく見つけてしまった。でも、おはようとか話す気には慣れず、何事もなかったかのように校舎へ向かった。


やはり、今日も何人かなの女子に囲まれた。しかし、その目は、なにかをからかうようなそんな目をしている。

「おはよう、雛。昨日さ、見ちゃったんだけど、えーとあの席の子とつきあっているの?」

その女子は、鮎川さん(本当の僕の席)を指差す。どうやら、覚えられてないらしい。僕は、慌てて首を振る。

「その慌てよう怪しい。抜け駆けずるい。私も彼氏欲しい」

その女子は、一人で騒いでいる。

「あの子、うちの友達に聞いたんだけど、女恐怖症らしいよ。中学校のとき、女嫌いの隼人と呼ばれていたらしい」

ある女子は、そんな僕の過去を話した。周りの反応は、軽蔑するようなそんな表情をしている。僕は、非常にこの場所が苦しくなった。


「雛、今日、撮影じゃないのか」

家に帰ると鮎川さんのお兄さんが、勝手に部屋のドアを開けてきた。

僕は、部屋のカレンダーを見る。そこには、今日の日付になにもかかれていない。ほかの日には、撮影などの用事がかかれているのに。

「撮影なくなったの」

慣れない高い声に苦戦しながらも伝えた。

「そうか、ところでお前、前と比べて声が低くなった気がするけど変声期か?でも、雛は……」

僕は、それにふと気がついた。お兄さんはもしかしたら僕たちが入れ替わっていることを知っているかもしれないと。


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