第12話
僕は、学校に行くとやはりクラスの女子に囲まれた。鮎川さんは、読モで人気者だから女子に囲まれることはわかっていたが、それは、僕の想像を越える人数であった。五、六人ではなくクラス三分の二はいる。僕は、少し深呼吸をした。
「雛おはよう」
「雛っち、おっはー」
鮎川さんは人気なだけあって慣れならしい呼び方で呼ばれているらしい。
「おはよう、みんな」
僕は、鮎川さんに似せて高い声を出す。周りの女子は、鮎川さんの中身がクラスで地味な男子だということに気づいていない。僕は、少しの安心感を覚えた。
放課後、僕は、鮎川さんに呼ばれた。その話を聞き、クラスの男子に睨まれていた気がする。僕は、なんのためらいもなく鮎川さんのそばにいった。
「どう、やっぱりつらい?」
鮎川さんの第一声がそれで目を丸くした。鮎川さんなら、女子ばっかりでビックリしたでしょ
と言いそうなのに。
「最上くん、すぐに戻りたいよね。あのとき私がこけたから。ごめんね。私、どうやったらもとに戻れるか考えてみるから」
鮎川さんは、そう言って帰ろうとする。
「待って」
僕は、勇気を出して声を出してみた。しかし、まだ声が震えている。
「大丈夫だから。鮎川さんのせいではないよ」
僕は、震える手を片方の手で落ち着かせた。
「でも……」
鮎川さんは、まだ罰が悪そうにしていたが、
僕は、鮎川さんにかける言葉が出てこなかった。
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