第11話
昨日のことは夢だと思ったのに、目がさめるとピンクの部屋が目に飛び込んだ。あの後僕はどうやって帰ったのかは覚えていない。ショックのあまり記憶が抜け落ちたようだ。それにしても、この体はなんだ。上の部分が膨らんでいる。僕は今、鮎川雛の体になっている。僕は、そう思っただけで吐き気に襲われ、朝食すら食べられなかった。しかもこの体、結構デカイ。もし僕が女性恐怖症でなければ確実に触っていただろうな豊満なボディ。クローゼットを開けると、目に飛び込んでくる胸元が開いた服。僕は、出来るだけ普通の服を選び着ようとする。だが、服を脱ぎ着するだけで胸が当たってしまう。最悪だ。僕は、ため息をついた。
それにしても、この入れ替わった状態はいつまで続くのだろう。さすがに女性恐怖症の僕はつらい。どうしても女性と関わらないといけない。あと、鮎川さんは、僕の体をどう思っているのだろう。きっと僕と同じ元に戻りたいと思っているはずだ。それに、誰かにバレないかが心配だ。特に鮎川さんの親やご兄弟さん、あと僕の叔父さん。
「おい、雛。男が来てるぞ」
鮎川さんのお兄さんだろうか。部屋越しに声が聞こえる。僕は、誰が来たかすぐ気づき、扉を開ける。
「雛?お前、今日はやけに布地が多いな。本当に雛か。それとも頭でも打ったのか?」
お兄さんは僕を見て首をかしげた。いったい鮎川さんはいつもどんな服を着ているのか不思議に思う。僕は、そんなのに構っていられず、玄関へ向かった。
「おはよう。朝からごめん。気になることがあって」
鮎川さんは僕の真似をしているのだろうか。男っぽい口調になっている。僕は、自分の家でもないのに僕の体の鮎川さんを引っ張り部屋に連れ込んだ。
「最上くんって、女性恐怖症だったんだね」
鮎川さんは、部屋に入ってすぐ口に出した。その目には、涙が溜まっている。
「ごめんね。そんなことも知らないで。今つらいよね。早く元に戻さないと」
鮎川さんは泣いていた。僕は、自分の背中をさするのは少しおかしいと思ったが、背中をさすっていた。
僕は、鮎川さんが泣き止んで思った。元の体に戻るまで女性恐怖症を克服しようと。僕は、この体で明日学校に行こうと決めていた。
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