158話
一つ二つと落ちてきた雫は、二倍三倍十倍と少しずつその数を増やしていき―――やがて量は多くも音の静かな雨となった。
不思議な霧雨だった。それは濃い
その霧雨を見た者は次々に目を閉じて祈りを捧げた。安らぐような穏やかなもの、あるいは恐ろしいほど神々しいものを直感的に感じ取ったからである。
しばらくの間その雨は部屋の中だけを深く見えないように覆って降っていた。
だが。
小一時間くらいだったろうか、見えなかったものが不透明なヴェールによる幕引きのように一枚ずつ晴れていった。霧雨が止んで中の様子が見えはじめたのだ。
居合わせた者たちが静かに待っているなか、朧気だったものが輪郭を取り始めていった。順に入り口に近いものや場所から、それらはどんどんと現れたのである。
最も被害の多かった木でできた家具は、手で触れればすぐに形を壊すほどバキバキにひび割れていたり柱の部分が折れていたりと散々な状態で。もはや修復に出したとしても新品にすることを言われるほどのものとなっていた。しかし不思議なことに、さきほどの火事の跡は一つもない。これも霧雨の
ガラスの扉だったものや置物は割れて破片になっていたり、至るところにピシピシと細かなヒビが入っている。窓のほうは、全て粉々か大きな欠片になって外に落ちていったので全壊である。
また、布製のクッションやカーテンはズタズタに破れ、なかの羽が飛び出して空中を舞っているのが見られた。
さらに床や壁はというと、なにかの書類だったチリヂリの紙切れにホコリにガラスの大小さまざまな破片にたくさんの穴ぼこに・・・と、目も当てられないほど大変なことになっている。
これは掃除が大変そうだ。
そして。
もはや瓦礫や残骸とかした向こうに三人・・・いや、四人の姿はあった。うち二人はそれぞれ別のところで床に倒れ、一人は座り込み、もう一人は錫杖を杖がわりにして身体を支えている。
左奥の方に"なにか塊のようなもの"があった。
だがそれを気にする者たちはいない。先にしなければ―――優先しなければならないことがあると、全員がすでにわかっているから。
だから。
「「「「「
大声とともに、雪崩のように部屋のなかへと入っていったのだった。
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