159話
―――そのあとのことを簡単にだが説明するとしよう。
まず最初にほとんどの冒険者たちが四人のもとに集まった。怪我人の治癒魔法による治療と、ドミニクの安否を確認するためである。
だが・・・倒れているのがドミニク本人ですでに命を落とし旅立ったのだと分かると。
最初にずっと側にいたグレイが泣いた。ドミニクの手を両手で握りしめ、それを額に当てて静かに泣いた。
その次に肩で支えられたエレミアが、崩れ落ちるように泣いた。ぽろぽろと雫をたくさん落として両手で顔を覆って泣いた。
その二人につられるように泣き声は少しずつ広がっていった。
お互いに抱き合って泣く者がいた。
ギュッと手を握りしめ、涙を我慢する者もいた。
泣き顔を見られたくなくて俯く者がいた。
唇を噛んで泣く者もいた。
彼ら彼女らのその姿は百人百様で。それでも思いは一つだった。
全員がドミニクの旅立ちを祈り、全員が別れを悲しんだ。
ただ、それからの行動は凄まじかった。
手始めに部屋のなかの瓦礫の山を運びやすくするため、壁に大きな穴を作った。
それから力自慢のメンバーたちが一つずつ―――大きな残骸は二人で持ち上げながら―――外へと運んでいった。どうするのかというと、これらは全て燃料として調理場の竈の火を起こすのに使ったり町の人々に格安で分けたりするらしい。つまりは再利用して使っていくのだそうだ。
ドミニクの遺体の近くで倒れていた金色の髪の少女―――レイラはというと。
すでに
それと平行してなぜこのようなことが起きたのかの調査も行われた。証拠となるものをくまなく探しだし、見つかれば確認・観察のち気づいたことを箇条書きに細かく記録していく。
この調査にはエレミアもグレイも協力した。
この部屋で何があったのか。
あの炎はなんだったのか。
そして誰がドミニクを殺したか。それらを全て、細かく丁寧に記録係に説明した。
しかしその調査は突然難航することとなる。というのも―――読者は覚えているだろうか、『左奥になにか塊のような物がある』と言ったことを。
見つけた冒険者が確認し、不審に思って観察・調べた結果わかったのは―――
その塊には
* * *
こうしてランデル傭兵組織支部・『流星の守り人』にて起こった凄惨な事件は終わった。
この事件において死亡者は1名・重症者は2名・軽傷者は1名―――行方不明者は2名出たと記録に残っている。
日差しの強い、6の月の末のことだった。
【第一部 了】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます