147話

 グレイの顔から血の気が引く。そしてこれから起こるだろう怒濤の展開に怯えと不安、そして後悔を予感した。

 無理はない。『絶対に説明しなくてはならないこの悲惨かつ酷な現状をどうやって話すか』など、まさに今怪我をしている今のグレイにはできるか分からないから。

 それだけでない。2回の爆発や広がり続けている炎の柱の原因、それから怪我人の容態と襲撃者の―――裏切り者の詳細を話さなければならないのだから。


 例の襲撃者スティーブも話さなければならないだろう。彼はというと・・・今もなおその場所で起き上がったり身動ぎなどをする様子はない。少しも、一つも。

 怪我が思った以上に酷い状態で身体が限界を越えてすでにもう事切れてしまっている―――のかもしれない。超至近距離から受けた爆発だ、ある程度の妨害は予想したかもしれないが、まさか誰かに身体で阻まれるとは思いもしなかったのだろう。

 どちらにせよそちらの対応もここに来るメンバーと共に、またはこちらで指示を出してやらなければならない。動けないにせよ死んでいるにせよ、状態の観察をするのは確定事項なのだから。


 部屋のなかは変わらず炎が渦をぐるぐると巻いて火種を散らばせている。殆どの瓦礫や塵が高温で燃えて炭になった。それでも炎は絶えず燃え続け、部屋の中を燻らせている。




 とにもかくにもこの炎をどうにかしなければならないが、しかし。

 どうやって近づけばいいというのだろう。今も炎は狂ったように燃えているし、その炎に近づくだけで火傷しそうなくらい熱く感じるというのに。

 それに炎は少女を守るため円状に燃える範囲を広げている。そのおかげでどこにも通れる隙間はなさそうなのだ。


 ―――いっそ捨て身の覚悟でこの炎に飛び込んでみようか。

 傷は増えるだろうが、そこに問題はない。それこそこのまま少女を放って置く方が問題になる。部屋の中を全て、黒くなるまで燃やし尽くすわけにはいかないのだから。

 多少なりともすでに遅い部分はあるだろうが、そんなものはあとで修理・補修すればいいだけのことだ。逆に少女をそのままにするほうが取り返しのつかないことになる。


 さて、どうしたものか。痛む身体を、歯を食いしばってどうにか耐えながら必死に考え続けていく。

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