140話
言葉の意味がどうにもわからずこてんと首を傾げる少女。
来ると思っていた反撃がないのを最後に男への興味がなくなったのか、手のなかにある刃でまた遊び始めた。クルリクルリと外の光できらめきながらそれは上へと舞い上がり、それから吸い込まれるようにして下へと落ちていく。
収まるべきところに収まるかのように。
その一方、近くで男の言葉を聞いていたグレイはさっと瞬時に顔を青くさせていて。
"まずい"、と言わんばかりに警報が何度も頭に
―――優先すべきことはなにか? どうすれば被害は最小限に抑えられる?
―――考えろ、己の知識を総動員させて考えなければこのままでは・・・っ。
「客人よ聞こえるかにゃ!? こいつはここをこの場のわたしたち諸とも証拠隠滅するつもりでいるのにゃっ!!」
切羽詰まってグレイは叫んだ。少女の方に向かって大声で、己は怪我をしているドミニクの盾として上に覆い被さりながら。
そのあとで懐から投げるための飛び道具を取り出すと、振り向いて男の位置を確かめる。標準を合わせなければ当たる物も当たらないし、飛び道具も数は少ない。できれば1〜2発でことを収めたかった。
チャンスは一瞬の僅か。だが、何度もそんなものがある訳ではないとわかっていた。
故に、そのチャンスを見つけるためにも根気よく粘らなければ。
遊びに夢中になっていた少女は聞こえてくる声に煩わしさを感じてようやく手を止めて視線を向けた。
すると目に入って来たのはドミニクに覆いかぶさっているグレイと―――
「塵と化してもろとも消えるがいい………っ!!」
そう言って男が何かを投げようとする姿で。
・・・まさに一瞬の出来事だった。
男が持っているものが少女にはわかったのか、瞬時に身体を低くさせて同時に一気に相手の目の前に急接近。そして男が驚き固まったその一瞬の間に持っている手首を掴みぐるりと後ろ手に回して捻りあげる。
それから持っていた刃を男の反対の手に勢いとともに深く突き刺し、床にしっかりと縫い付けた。さらに少女は後ろ手に回した手をさらに上へと捻り上げていき、それから反対側の肩の関節部分に向かって踵落としをお見舞いさせた。
―――バキッ、ゴキッ。
骨の折れる音がした。
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