131話

「「っ!?」」

 先程以上に驚愕の表情を浮かべるグレイとマントの男。


 その間にも青いほむらはゆらゆらと揺らめきながらその場所で燃え上がっていており。同時にこれでもかと広がっていた熱い熱の絨毯が、急に勢いを削がれたかのように引き始めた。風が逆向きに吹くかのように、室内の温度が下がって反対に少し冷えるほどだ。

 熱が収まれば今度はビリビリとなんともいえない圧迫感が部屋を覆っていく。呼吸するのさえ苦しくなりそうな―――しかし誰一人として動くことが許されない、そんな圧がこの場に突如として現れ、どんとそこに置かれた。

 音として空間に響くはずのないそれは聞こえないだろうグレイやマントの男にはしっかりと聞こえていて。ピシッとガラスにヒビが入る音がしたように思えた。



 ―――否、それだけではない。

 ビリビリと震動が身体を何度も何度もチクチクと小さい針で指すように刺激してくるのだ。

 圧で動けない二人にとって、それはちょっとした拷問のようだった。侵入者の男の方はともかく猫系獣人のグレイにとっては動けないこの状況は不快でしかない。おかげでイライラすることこの上なかった。それでも動いて事態が良くない方向になるよりかはと、静かにことの成り行きを見守り始めたのである。






 燃え上がるその炎は変わらずそこに鎮座している。パチパチと音をたてて火の粉が舞い、今にも部屋の壊れた残骸に飛び火しそうだ。


 しかし火事までにならないのはグレイが予想する特別な『火』だからなのか。でもなぜこのタイミングに現れたのか。

 また仮に考えが合っていたとしても、あのような蒼い炎があるという話は聞いたことがない。しかし火花が散って物に引火し、部屋が燃えるといった様子もないし。倒れているドミニクにも火の粉が移るようなことは、今のところなさそうである。

 では一体どうしてなのか。その答えが出る前に―――





 青い炎のなかでようやく動きがあった。

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