120話
職員が持ってきたお昼の食事は、出汁のきいたスープに少し固めのコームパンがヒタヒタに染み込んだパン粥だった。
〝起きたばかりだから胃に優しいものを〟という細やかな配慮がしっかりとここでなされている。出汁のスープも薄い色をしているので、きっと優しい味なのだろうか。
隣には絞りたての果物ジュースが一つ。蜂蜜のような濃い黄色からして果物のアプラムを使っているようだ。
現れた職員は昼食を近くのテーブルに置くと、
「熱いので気を付けてくださいね」
と一言注意したあとに部屋を出ていった。
〝ありがとう〟と感謝をいなくなった職員にのべたあと、身体を起こしたレイラはゆっくりと食べ始めた。
* * * * *
その後また部屋に現れたドミニクから
曰く、グレイとスカイの活躍により兵士たちの身柄は拘束・詰め所にて尋問したこと。
曰く、やはり彼らはグラスウォールの特殊部隊で大罪人―――レイラを捕らえにきたこと。
曰く、また別の特殊部隊が動き始めていること。
曰く、レイラを捕まえるまで―――グラスウォールは追い続けること。
まとめると四つの話をドミニクは話した。
聞き終えたレイラはしばらくの間無言だったが、
「……ありがとうございます、教えていただいて」
と微笑んで感謝を延べた。
ドミニクがまた部屋を出ていくと、レイラは布団からゆっくりと這い出た。そして近くの椅子に座ってギュッと身体を抱き締め、
「…………怖い、な」
不安な心情を吐き出した。
どうしようもないのだ。あの事故から数週間たち、それなりに傷も癒えた頃だったというのに―――また事件に巻き込まれたのだから。
しかも『大罪人』と呼ばれ、レイラが知らないことでここまで執拗に追われているのだ。疑問もそうだが、不安が付きまとうのも当然だといえよう。
起きたスカイが身体をレイラにスリスリと擦り付ける。さっきの言葉が聞こえていたのだろう、安心させるかのように側にいてくれようとしていた。
そんな彼女にレイラは嬉しくなって、頭をスリスリと撫でた。
(………ディック)
―――今はいない、幼馴染みに思いを馳せながら。
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