繰り返す悲劇―――後―――

109話



 数時間前、とある場所にて。





 分厚いカーテンで閉めきられ、暗闇に包まれたとある部屋に一つの小さな明かりがついた。照らしているのは蝋燭のゆらゆらと揺らめく灯りではなく、煌々と明るい―――でもとても小さな魔力光マジックライト


 その光で明るいのは真下にある小さな机とその周りのみ。

 この部屋のすみにまではさすがにその光も届くことはない。また、明かりをつけた本人の顔まではわからないように細かく調節もされているようだ。・・・顔の上半分まですっぽりとフードを被っているからわからない、というのも理由の一つといえるだろう。


 閉まっているカーテンの隙間からは少し、外の淡い光が漏れ出ている。その光は魔力光よりは薄いものの、どこか不思議で見惚れてしまうほど幻想的なものとなっていて。

 きっと、外ではキラキラと月が輝いているに違いないと思わせるほどだった。






 さて。

 魔力光をつけたフードを被るその人物は、右へ左へと視線を向けてこの部屋に誰もいないのを確認した。ついでにカーテンが開けられていないかの確認も同時進行で行う。

 それが終わればゴソゴソとマントのなかから小さな石のようなものを取り出し、机の上に音をたてることなく置いた。

 魔力光の当たる場所に出てきたそれは魔力マナを通すとされる水晶などではなく、それとはまた別の宝石の一種のようで。

 フードの人物がそれに手をおけば、流れる魔力マナに反応したのか薄く小さくはあるが鈍い光を放ち始めた。

 その光は少しの間一度二度と点滅を繰り返したのち、小さな光柱となって部屋の天井へと延びていく。






 その瞬間。―――


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザ、ザザ・・・・・・・・・・・ザザ、ザザザザ・・・・・・・ザザザザ・・・・・・・・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・・・・・・・・・・・・


 と、何かの音と音が反響を起こすような、もしくは何かが床を這いずるような耳障りな音が部屋のなか全体に響き渡った。


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